STAP細胞の論文騒動は,だいぶ昔の常温超伝導が発見されたとの報道で(メディアが)大騒ぎになり,でも結局追試で再現できずに,いつの間にかしぼんでしまったという話を思い出させる。
STAP細胞が確認された(発見された)という論文の提出は,一般社会でも大騒ぎになるとはわからなかったとしても,少なくとも斯界で大騒ぎになることは,その分野の研究者であれば,十分に承知していたはずである。それを承知で,研究者生命をかけていんちき論文を出すはずがない。それにもかかわらず,いんちきかどうかは別として,不備のある論文が提出されたという点が今回の騒動で一番わからない点である。
無断引用や使い回しは,研究者がやってはいけないことであることぐらい,博士論文を提出する研究者であれば,十分に承知しているはずである。
新しい発見や,考え方は,先人の業績の上に積み上げられる。したがって,どんな論文も過去を見ない(引用しない)論文はない。その意味で,引用は論文では(研究論文でなくとも)日常茶飯事である。ただし,自分のものか他人のものかは明確にしなければならず,かつ他人のものを使う場合相当の敬意を払う必要がある。こんなことは研究者としては常識である。
以上のような認識の下でそれでも不備のある論文が出てきたとするのであれば,それは,論文を発表する人たちに対して,外部から何らかの圧力のようなものがあったとしか思えない。
若いこと,女性であること,一種特殊でああると思われている研究者が,ムーミンに囲まれて,白い割烹着を着て仕事をしているということで,一般メディアに取り上げられ,それゆえ,論文が不備であると判明した後,彼女一人だけが悪者として取り上げられている。本当は取り上げられなければならない人はほかにもたくさんいるはずなのに。