
しまなみ海道近くの県道を走っています。
進行方向の左に,かなりの広さの待避所が有ります。
待避所に隣接する畑に長机があり,その上に赤いネット袋に入れたミカンが並んでいます。
元女子が,野良着姿で机の側に座っています。
“寄ってみるかな,ネーブルが欲しいと言ってたし”
「美味しいの有る?」
待避所に車を止め,元女子に声を掛けます。
『ここで売っとるのは,みなおいしいけぇ』
「もうみかんも終わりじゃろう,ネーブルはないん?」
『まだみかんは終わりじゃあないけど,ネーブルも有るよ,こうて(買って)くれる?』
買うとも言わないうちに,元女子はネーブルを赤いネット袋に詰め始めます。
“値段が分からないが,大した額でもなかろう”
折角だから,買って帰る事にしたんです。
『さっきの人も,ここのは美味いけぇいうて,こうてくれちゃったでぇ』
元気そうな元女子は,そう言いながらネット袋にネーブルをいっぱい詰めます。
赤い網袋はネーブルの色をよりおいしそうな色に見せています。
そして,それを秤に掛けます。
『こりゃ,おお過ぎたぁー・・・まぁ,ええわぁ』
「いくらなんです」
『500円じゃがぁ,こうた事ないん?』
「初めてなんじゃけど,安いなぁ」
『家で作っとるけえなぁ,おいしいし安いでぇ,ついでにミカンもこうてくれる?』
「・・・・」
『あわせて,1000円じゃが,医者へ行くよりゃあ,よっぽど安いでえー“
医者とミカンの関係は分かりませんが,答える間もなく,ミカンも添えて出されました。
「それじゃぁ,そうしょうかぁ」
ネーブルとミカンを1000円で買ったんです。
『ちょっと待って,待ってぇ』
車のドアを閉めようとした時に,元女子が声を掛けてきたんです。
『あんたぁーなぁ,気持ちようこうてくれちゃったけぇ,これをあげるけぇ』
元女子は,はっさく三個をおまけでくれたんです。
味見は,まだです。
まだですがこれだけの量が1000円で買えたんです。
売り手の元女子も喜んでくれたし,我が家の元女子も喜ぶだろうから・・・
やれこら やれこら