オーディオユニオンお茶の水店 での試聴会のご案内(詳細は → こちらから)をアップ済みですが、本日は当日のデモ内容についての解説をさせていただきます。
さて、前回のアップと重複しますが、現代のスピーカーのトレンドは、ワイドレンジ化で低音と高音ばかりを注視した音作りになっていて、中音がスカスカではないだろうか? という問題提起をしております。この事には、生楽器とホールの響きを直接聴く音楽形態から、PAスピーカーを通した音を聴く演奏形態に変化しているという時代背景も影響しているかもしれません。しかし生の声や楽器の音の醍醐味とは何かという原点に立ち返ってみる事は大切だと思います。
そして、ご紹介にあずかる 島津Model-1 の特長は、見た目のサイズからは想像できない立派な音が出る、というのが一般的な評価かも知れませんが、高剛性なDSS振動板の本当の特長は「マッシヴな中音」にあります。それから、単なる太く柔らかい音ではなく、従来の低能率スピーカーの常識を覆す、ハイスピードで瞬発力のある音質も特長です。即ち、島津Model-1 は「小さめのスペースと音量」を余儀なくされる多くの音楽愛好家に、最小限で最善の音楽環境を提供するものです。音量の制約はあっても、現代型ハイエンドスピーカーでは出せない高度な音楽表現力が特長です。
そこで今回は、中音域の表現力の大切さを体感していただくべく、生の声や楽器の響きの美味しい所を再認識していただけそうな音源を集めてみました。俗に言う「オーディオCD」とか「ハイレゾ音源」とは耳の付け所(?)がまったく異なります。以下に音源の紹介と聴きどころを解説させていただきます。
① イツァーク・パールマン プレイズ・フリッツ・クライスラー WPCS-13277/9 WARNER CLASSICS(写真↑↑)/ CD-1、トラック1、ウイーン奇想曲 作品2
パールマンのヴァイオリンとピアノ伴奏の実在感や楽器響板の厚みと力のある響きだけではなく、演奏の強弱や音の硬軟の表現力にご注目下さい。演奏表現の深みをお愉しみいただけると思います。
② デュオ・ディ・バッソ ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲ほか PCCL-00331 PONY CANYON(写真↑) / トラック1、プレイエル チェロとコントラバスのための主題と変奏
コントラバスの重低音に注目するのではなく、弦楽器の豊かな胴鳴りやチェロが謳う時の音の押し出し感をお愉しみください。低音の音程が明瞭で輪郭のしっかりした「低音感」である点も注目点です。①よりも空間が奥に拡大されている点にもお気付き下さい。
③ LUX Voces8 478-8053 DECCA(写真↑) / トラック1、UBI CARITAS(1999) OLA G JEILO
小さな教会堂での厚みのある混声合唱です。美しいコーラスのみならず、フォルテのハーモニーの混濁の無い押し出し感をお愉しみください。
④ GLORIA: The sacred music of John Rutter CSCD 515 Collegium RECORDS(写真↑) / トラック3、GLORIA Third movement
イギリスで人気の現代宗教曲の作曲家による自作自演盤です。大ホールでのケンブリッヂシンガーズの混声合唱とフィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブルによる終曲の強烈なフォルテが「グシャグシャのジャリジャリ(?)」にならずに、鮮烈で気持ちよく突き抜ける醍醐味をお愉しみください。
因みに、この様な危険な(音が混濁して歪む)音源は、デモでは絶対に使わない部類ですが、逆にその様な音源ほど音の醍醐味がある事になります。再生の容易な柔らかいヴォーカル曲も結構ですが、音の醍醐味も愉しめれば、音楽の愉しみもより広がるものと思います。