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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第二章 骸骨標本の怪 13

2021年12月03日 | 霊感少女 さとみ 2 第二章 骸骨標本の怪
 さとみは着替えるとリビングに降りてきた。両親はソファに並んで座ってゲームをしていた。
「……どうしたの、さとみ?」母親がさとみの格好を見て驚く。「もう寝るんじゃなかったの?」
「それじゃまるで、お出かけじゃないか」父親も驚く。「しかも…… 無二屋のポコちゃんじゃないかあ!」
 父親は言うと笑い出した。
「お父さん! それを言っちゃダメですよ! ……でも、本当、ポコちゃんだわあ!」
 母親も抑え切れずに笑い出した。
「何よう! 二人して! この前とは違う格好じゃないのよう!」
 さとみはぷっと頬を膨らませる。普通のジーンズにピンク色のTシャツだ。前回、散々笑われたので、さとみなりに違う格好をしてみたのだ。イチゴのアップリケを縫いつけたポシェットを肩からたすき掛けしている。
「……いや、なんて言うか、存在そのものが、ポコちゃんだよなあ」
 父親の笑いが止まらない。母親は笑い過ぎて言葉が出ないようだったので、大きくうなずいて、父親の同意を示す。
「もうっ! 知らない!」
 さとみはそのまま玄関へと向かう。
「ねえ、さとみ、どこへ行くの?」まだ笑いが治まらない母親がさとみを追って玄関まで来た。「無二屋のお店の前にでも立つのかしら?」
「そんなわけないじゃない!」さとみは口を尖らせる。「百合恵さんと出掛けるのよ! そろそろ迎えに来てくれるわ」
「あら、そうなんだ」母親はふと真顔になる。「……と言う事は、明日は学校はお休みね」
「ほう、百合恵さんとお出掛けか」父親もやって来た。「じゃあ、今夜は百合恵さんの所に泊まっておいで。学校は、母さんが言った様に休んじまえば良いさ」
「どうして、学校を休ませたがるのよう!」
 さとみが文句を言うと、玄関チャイムが鳴った。母親がカメラ付きインターホンに出る。
「あらあら、百合恵さん! ……ええ、さとみはすぐに出ますわ。ご迷惑でしょうけど、よろしくお願いいたしますね。さとみったら、今日もポコちゃんで…… ほほほほほ」
「もう! やめてよう!」さとみは言うとスニーカーを履く。そして、両親に振り返る。「行ってきます」
「はいはい」父親は手を振る。「百合恵さんに迷惑をかけるなよ」
「お父さん、じゃあ、ゲームの続き」
「おう、そうだったね。良い所だったな。もう少しでラスボスだ」
 二人はリビングへ戻って行った。さとみはぶんむくれながら玄関ドアを開けた。
 今日の百合恵は青いドレス姿った。化粧もしっかりとしている。百合恵はさとみを見るとくすりと笑う。
「お母様の言う通り、ポコちゃんね。可愛いわぁ」」
「もうっ! 百合恵さん、ふざけないでください!」さとみはぷっと頬を膨らませる。「そんな呑気な事を言っていられないようなんですよ!」
「ええ、そのようね……」百合恵は真顔になる。「豆蔵から聞いて、慌ててお店から来たのよ。さあ、行きましょう」
 少し行くと、百合恵の車があった。車の横にアイが立っていた。さとみを見ると、頭を下げた。白いTシャツに黒のミニスカートと黒のブーツと言う姿だ。元が読者モデルだからスタイルはとても良い。
「……アイ……」さとみは驚く。「どうして、あなたが?」
「ふふふ……」百合恵が笑う。「アイちゃん、わたしのお店のお手伝いをしてくれていたのよ。と言っても、厨房のお手伝い」
「ええっ! 百合恵さんのお店って、お酒を飲む所じゃないんですかあ?」
「わたし、何軒かお店を持っていてね、その一つにレストランがあるの。そこのお手伝い」
「……ああ、良かった。わたし、百合恵さんみたいなドレスを着てお店に居るのかと思っちゃいました」
「それは、高校を卒業してからね」
「……そうなんですか……」
 アイがすっとさとみの前に来た。
「姐さん…… じゃなかった、会長! 百合恵姐さんから聞きました。これから大変な事があるそうですね。是非、加勢させてください!」アイは言うと、改めてさとみに頭を下げた。頭を上げると、アイは残忍そうな笑みを浮かべていた。「……で、相手は何処のヤツらなんですか? 相手の規模によっちゃあ、増援を呼びかけますけど?」
「いや、大丈夫よ……」
 さとみは引きつった笑みを浮かべる。……百合恵さん、アイにどんな話をしたのかしら? さとみは怪訝な顔を百合恵に向ける。百合恵は優しく微笑んでいるだけだ。
「さあ、二人とも車に乗ってちょうだい」
 百合恵は言う。アイは後部席に乗り込んだ。スポーツタイプの車なのでお飾り程度の後部席は狭い。さとみが換わろうと言ったが「会長に迷惑はかけられません」と言って譲らない。さとみは諦めて百合恵の隣に座る。
「豆蔵は先に学校へ向かったわ」
 百合恵は言うとアクセルを吹かした。


つづく


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