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盗まれた女神像 ⑫

2019年07月10日 | 盗まれた女神像(全22話完結)
「おお、ベアトレイトス…… 貴女は最高です……」アルミーシュは四つん這いになり、その滑らかな白い背中を震わせる。「私は貴女の前では素の女で居られます……」
 ここはアルミーシュのベッドルームだ。
 ヤリラ教本殿に付属する大礼拝堂での礼拝を終えた後に、ヤリラ教に回心したいと申し出た逞しい女兵士ベアトレイトスを私邸に招じ入れてから、幾度目の逢瀬になるだろうと、女教主アルミーシュは思っていた。
 ベアトレイトスが来る夜は、ベッドは整えられたままで乱れは無い。何故なら、ベッドを使う事が無いからだ。
 アルミーシュ教主は、ヤリラ教の教えである質素を実践している敷物の無い硬く冷たい床に、ベアトレイトスが持って来た尻が丸出しになる下着のみを穿かされて座らされている。そして、ベアトレイトスの命じる儘の姿態を作る。
 ベアトレイトスはアルミーシュの椅子に腰掛け、恥辱に震えながらも法悦の表情を浮かべる女教主を眺めている。
「貴様に誘われて、この部屋に来た、あの最初の夜から、貴様の性癖は見通していた」ベアトレイトスは、こちらに向けられているアルミーシュの柔らかそうな尻を見ながら言う。「わたしの懺悔も碌に聞かず、拷問の話ばかりを聞きたがり、聞きながら恍惚とした面になりやがった。こいつ、責められたがっている、ってな!」
「いやっ! 言わないで!」アルミーシュは四つん這いのままで顔だけ振り返らせる。整った美しい顔が恥辱で歪む。「お願い、それ以上、私を辱めないで下さい……」
「貴様! 誰がこっちを向けと言った!」ベアトレイトスは怒鳴ると立ち上がった。迷彩柄のズボンと編上げの軍靴、赤いタンクトップと言う、出会った時のままの姿だ。腰に下げていたアクライ牛の皮を鞣して作った鞭を手に取る。「言い付けを守れぬなら、仕置きするしかあるまい」
「おお、おお…… ベアトレイトス……」アルミーシュは慌てて顔を正面に向け直し、全身を震わせる。その震えは、恐怖からのものでは無かった。「説教壇からは、教えに従順に従うようにと話していなるのに、私は貴女の言葉に従う事も出来ません。こんな情無い私を、どうか罰して下さい! お仕置きして下さい!」
「そうかい!」
 ベアトレイトスは言い終わると、細く赤い紐の様な下着で分けられた、白いアルミーシュの尻を鞭で打った。アクライ牛の皮の鞭は、打たれても痕は残らないが、痛みは通常の鞭の倍はある。
「おお、おお! ああ、あああっ……」鞭打つ音に負けぬ、咆哮の様な喜悦の悲鳴を、女教主は上げ続ける。「もっと、もっとぉ! お仕置きを、お仕置きをぉぉぉ!」
「貴様! わたしに指図するのかぁ!」
 ベアトレイトスの鞭打つ速度が増し、尻ばかりが背中にも鞭が走る。四つん這いを支えていたアルミーシュの腕が力尽きて肘が曲がり、硬い床に頬を付けた。汗に塗れた薄紫色の前髪が額に張り付いている。乱れた息遣いが続く。

 つづく
 


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