「ゼリルよう、もう最高だぜい!」ゼドは触角をフル回転させている。「この痛み、病み付きになっちまったよ」
ここはゼドのベッドルームだ。
デルデの店を出た所でぶつかってきた、骨のようなガリガリな女ゼリルの髑髏まがいの頭を自分の左の肩口に乗せ、肩口と腕に伝わる痛みに恍惚の表情を浮かべるゼドだった。
「そうなのですか。ありがとうございます」ゼリルは掠れた声で答える。いつも丁寧な口調なのもゼドの好みだった。「では、わたしの肋骨の浮き出た脇腹で、あなたのお顔を撫でて差し上げましょうか?」
「嬉しい事を言ってくれるじゃねぇかよう、ゼリルよう!」
ゼドが大の字になる。ゼリルは起き上がり、脇腹をゼドの顔に当てると、早くもゼドの触覚が回り始め、その動きを見ながらゼリルはからだを前後に動かした。
が、元々体力が無いので、すぐに息が上がり「ふうふう、はあはあ」と苦しそうな息遣いになりながらも、ゼリルは動きを止めなかった。
顔全体を走る激痛とゼリルの息遣いとで、ゼドの触覚は千切れんばかりに回り続ける。
「良かったぜ…… 本当にオレの理想の骨っぷりだ」行為を終え、胸の上で息も絶え絶えな様子のゼリルの、ぼさぼさの黒髪を優しく撫でながらゼドは言った。「ゼリルのような最高な女には、最高の物をプレゼントしなくちゃあ、オレの心が許さねぇよ」
「そんな、わたし如きに勿体無いです……」ゼリルはゼドの胸から顔を上げ、落ち窪んだ黒い瞳で見つめる。「こんなわたしにここまでして下さっただけで、十分に幸せです」
「でもよう、それじゃあオレの気が済まないんだよう。だからよう、何かプレゼントさせてくれよう」
「……分かりました」ゼリルはゼドの子供っぽい必死さに微笑を浮かべた。「何でも宜しいのですか?」
「ああ、言ってくれ!」
「我儘を申し上げても宜しいのですか?」
「気にしないで、何でも言ってくれ!」
「では……」ゼリルはゼドの胸に顔を伏せ、全身に力を込めてゼドのからだにしがみつく。「あなたが盗ったと言う、メルーバ教団の女神像が欲しいのです……」
「なんだって?」ゼドの触覚が止まる。「その話、どこから聞いたんだ?」
「お怒りにならないで下さい!」ゼリルはしがみつく力を増した。「無理なら結構です! わたしの如き女が、地位も財力も有るあなたに好意を持たれ、増長してしまいました! お許しください!」
「おいおい、ゼリルよう。そんなにビクつくんじゃないぜ」ゼリルから与えられる程良い痛みに、ゼドの触覚が回り始めた。口調も優しいものになる。「ちょっと驚いただけだよ…… でも、そんな事どこから聞いたんだ?」
「……伯母の知り合いからです。色々と情報を持っていらっしゃる方で……」
「まあ良いや。それ以上は詮索しねぇよ。オレは寛大なんだ。それにな、何でもプレゼントするって、このゼド様が約束したんだ。守らせて貰うぜ」
「ありがとうございます……」ゼリルは顔を上げた。瞳に大粒の涙を湛えている。「ゼド様、あなたは本当に優しいお方です」
「おいおい、照れちまうじゃねぇか」ゼドは言い、にやりと笑う。「でもな、その像をすぐに渡してやれないんだ。別の隠し場所にあるんでな」
「すぐに欲しいなどとは申しません」ゼリルも安心したように笑顔になる。「では一週間後に、わたしのお伝えする場所へ、一人で持って来て頂けませんか?」
「まあ、一週間も有れば、用意するにはお釣りが来るけど、渡す場所はここじゃ駄目か?」
「いつもお邪魔してばかりですから、偶にはわたしがお持て成し致したくて…… それに、雰囲気を変えてみるのも宜しいかと思って」
「良いぜ、良いぜ。全部任せるぜ。……それで、ゼリルよう。今度はオレの頭の先から足の先まで、ごろごろと転がってくれないか?」
ゼリルは笑顔で頷き、骨を軋ませ身を起こす。
つづく
ここはゼドのベッドルームだ。
デルデの店を出た所でぶつかってきた、骨のようなガリガリな女ゼリルの髑髏まがいの頭を自分の左の肩口に乗せ、肩口と腕に伝わる痛みに恍惚の表情を浮かべるゼドだった。
「そうなのですか。ありがとうございます」ゼリルは掠れた声で答える。いつも丁寧な口調なのもゼドの好みだった。「では、わたしの肋骨の浮き出た脇腹で、あなたのお顔を撫でて差し上げましょうか?」
「嬉しい事を言ってくれるじゃねぇかよう、ゼリルよう!」
ゼドが大の字になる。ゼリルは起き上がり、脇腹をゼドの顔に当てると、早くもゼドの触覚が回り始め、その動きを見ながらゼリルはからだを前後に動かした。
が、元々体力が無いので、すぐに息が上がり「ふうふう、はあはあ」と苦しそうな息遣いになりながらも、ゼリルは動きを止めなかった。
顔全体を走る激痛とゼリルの息遣いとで、ゼドの触覚は千切れんばかりに回り続ける。
「良かったぜ…… 本当にオレの理想の骨っぷりだ」行為を終え、胸の上で息も絶え絶えな様子のゼリルの、ぼさぼさの黒髪を優しく撫でながらゼドは言った。「ゼリルのような最高な女には、最高の物をプレゼントしなくちゃあ、オレの心が許さねぇよ」
「そんな、わたし如きに勿体無いです……」ゼリルはゼドの胸から顔を上げ、落ち窪んだ黒い瞳で見つめる。「こんなわたしにここまでして下さっただけで、十分に幸せです」
「でもよう、それじゃあオレの気が済まないんだよう。だからよう、何かプレゼントさせてくれよう」
「……分かりました」ゼリルはゼドの子供っぽい必死さに微笑を浮かべた。「何でも宜しいのですか?」
「ああ、言ってくれ!」
「我儘を申し上げても宜しいのですか?」
「気にしないで、何でも言ってくれ!」
「では……」ゼリルはゼドの胸に顔を伏せ、全身に力を込めてゼドのからだにしがみつく。「あなたが盗ったと言う、メルーバ教団の女神像が欲しいのです……」
「なんだって?」ゼドの触覚が止まる。「その話、どこから聞いたんだ?」
「お怒りにならないで下さい!」ゼリルはしがみつく力を増した。「無理なら結構です! わたしの如き女が、地位も財力も有るあなたに好意を持たれ、増長してしまいました! お許しください!」
「おいおい、ゼリルよう。そんなにビクつくんじゃないぜ」ゼリルから与えられる程良い痛みに、ゼドの触覚が回り始めた。口調も優しいものになる。「ちょっと驚いただけだよ…… でも、そんな事どこから聞いたんだ?」
「……伯母の知り合いからです。色々と情報を持っていらっしゃる方で……」
「まあ良いや。それ以上は詮索しねぇよ。オレは寛大なんだ。それにな、何でもプレゼントするって、このゼド様が約束したんだ。守らせて貰うぜ」
「ありがとうございます……」ゼリルは顔を上げた。瞳に大粒の涙を湛えている。「ゼド様、あなたは本当に優しいお方です」
「おいおい、照れちまうじゃねぇか」ゼドは言い、にやりと笑う。「でもな、その像をすぐに渡してやれないんだ。別の隠し場所にあるんでな」
「すぐに欲しいなどとは申しません」ゼリルも安心したように笑顔になる。「では一週間後に、わたしのお伝えする場所へ、一人で持って来て頂けませんか?」
「まあ、一週間も有れば、用意するにはお釣りが来るけど、渡す場所はここじゃ駄目か?」
「いつもお邪魔してばかりですから、偶にはわたしがお持て成し致したくて…… それに、雰囲気を変えてみるのも宜しいかと思って」
「良いぜ、良いぜ。全部任せるぜ。……それで、ゼリルよう。今度はオレの頭の先から足の先まで、ごろごろと転がってくれないか?」
ゼリルは笑顔で頷き、骨を軋ませ身を起こす。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます