お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

コーイチ物語 「秘密のノート」 49

2022年09月04日 | コーイチ物語 1 6) 引き出しの美女  
 社長は「ではでは」と言いながらボースカウトの歌らしきものを口ずさんでビルから出て行った。
「さてと……」
 やっと咳き込みが止まった北口は、大きく伸びをした。
「僕は営業三課に戻るよ。課員をいつまでも放っておけないからね」
 林谷は北口に向かって拍手をした。
「さすが、北口課長は『課長の鑑』ですねぇ! ……じゃ、夜にお会いしましょう。そうだ、三課のみんなも都合が付いたら連れて来て下さいね!」
「分かった。多分大勢でお邪魔することになるだろうが、よろしく!」
「はいはい、どうぞどうぞ!」
 林谷はエレベータに乗り込む北口に手を振りながら言った。
 エレベーターのドアが閉まり、上へと上って行った。それを見ながら、西川が大きく伸びをした。
「さてと……」
 西川は林谷清水印旛沼そしてコーイチと順番に見回した。それから思い出したように岡島にも顔を向けた。
「と言う訳で、今日から営業四課は新体制となった。今まで同様にがんばろう!」
 岡島以外(岡島は吉田部長と共にさらに黄昏ていて、こちらには全く気が付いていないようだった)皆大きく頷いた。
「今まで以上に、ですよ!」
「邪魔者には呪いをかけてやりますわ。うふふふふ……」
「手品以上に身を入れて働きますか」
「ボクもがんばります!」
 それぞれが抱負を口にした。
「では、これから四課に戻って仕事を始めよう。今日は……」西川は腕組みをしながら考え込んだ。「部屋の模様替えと夜のパーティへ招待するお得意様への連絡をしよう。お得意様との関係をより強固にして行こう」
 わいわい言い合いながら営業四課の連中はエレベータへと向かって行った。
 静かになったロビーに吉田部長と岡島とがポツンと残された。
「あんたたち、いつまでここにいるの?」
 守衛が声をかけた。二人は力なくエレベーターへと向かった。

       つづく

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