磯田典子の日記 （聖ジョルジュアンナ高等学園 １年Ｊ組 岡園恵一郎 番外編）

○月×日

　馬鹿よ！　ケーイチローって、真正の馬鹿だわ！

　うちの学校で、あんな凄い高校受けて受かるなんて、一人か二人よ。

　そこを受験するんだって……

　わたしは、現実を見ろって言ったし、身の程知らずの大馬鹿野郎とも言った。

　でもさ、バカケーイチローのヤツ、
「僕は何を言われても受験校を変えないよ」
　だってさ！

　馬鹿よ！　大馬鹿よ！

　どうして、黒田先生も、ケーイチローのおじさんもおばさんも説得しないの？

　あのかたくなさには何か秘密でもあるのかしら？　だとしても、これからの一生に関わる事なのよ！


　本当は、一緒の高校を受けて、一緒に通いたかったのにさ……




○月×日

　ケーイチローが受験に失敗した！

　どうすんのよ！　

　一応、「まさか……」なんて言ったけどさ、絶対落ちるのは分かっていたわよ！


　馬鹿よ！　誰がどう見たって受かりっこないってのは、ケーイチロー自身が一番分かっていたじゃない！


　どうすんのよう！　マグロ漁船に乗るつもりなの！　ケーイチローは小さい時から船酔いが激しいじゃない！　


　無理よ！　無理無理無理無理無理！


　もう！　涙が止まらないじゃない！


　
　一緒の高校通おうと思ってたのに！



　バカケーイチロー！！！！




○月×日

　驚いた……

　ケーイチローが『聖ジョルジュアンナ高等学園』に入学だって……
　しかも、特待生だなんて……

　ついこの間、受験に失敗して落ち込んでいたくせに……　

　話を聞いたら「看板叩いて特待生」だったんだってさ……

　何それって感じよね……


　でも、良かった……

　散々泣いて心配したけど、ほっとしたわ……


　一緒の高校には通えないけど、同じ高校生だもん……


　でもさ、上流の人たちと付き合うなんて、ケーイチローに出来るのかしら……


　あ～あ、また別の心配の種が出来ちゃったわ……


Ｐ.Ｓ.
　
　ケーイチローのヤツ、わたしをケーイチローのおばさん以上に母親っぽいなんて言ったわ。
　だから、ケーイチローの母親なんか絶対にイヤって言い返してやった。
　生意気にケーイチローのヤツ「僕だって、典子の子供はイヤだ」って言ってたわ。
　ほんと、ケーイチローのくせに生意気よ！


　でもさ……


　「奥さんなら、どう」


　って聞いたのは、本心なんだけどなぁ……
　

　キャッ！！！