お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

カップルの会話 三題

2021年10月14日 | Weblog

  Ⅰ

「知ってるかい? 流れ星が消えるまでに、三回お願いごとを繰り返すと叶うって話」

「ええ、知っているわ」

「今夜はここで流星群が見られるから、お願いしまくりだね」

「そうね。楽しみだわ」

「……あっ、始まったみたいだよ」

「……ああっ! ダメだわ……」

「どうしたんだい?」

「どれにお願いすれば良いのか、決めているうちに流れて行っちゃうの……」

「そうなんだ……」

「それに降ってくる速度が速くって、三回のお願いなんて間に合わないわ……」

「そうなんだ……」

「どうしよう…… お願いが叶わないかも……」

「どんな願いなんだい? 教えてくれるかい?」

「あのね、わたしはあなたが好き。だから、あなたもわたしが好きになってくれるようにって……」

「ははは……」

「笑わないでよ!」

「ごめん、ごめん…… でも、それはどうかなぁ? 叶うかなぁ?」

「えっ! どう言う事…… ……叶わないって事なの? そんなぁ……」

「だってさ、もうこれ以上無いってくらい叶っているんだよ」

「まあ!」  


  Ⅱ

「ねえ、『招き猫の日』って知ってる?」

「知らないけど?」

「九月二十九日の事よ」

「どうしてだい?」

「招き猫って福を呼ぶって言うじゃない? だから、来る福っていうことで、来るに九を、福は二つに分けて、ふに二を、くに九を当てはめたのよ」

「な~んだ、ごろ合わせかよ。もっと深い由来があるのかと思ったよ」

「じゃあさ、『月見うどん』って知ってる?」

「オレの好きなヤツだ」

「そうじゃなくって、別の意味」

「どうせまた、ごろ合わせなんだろう?」

「聞きたい?」

「良いよ、聞かせてくれよ」

「月見ってね、『to 君』って言うの」

「何だ、今度は英語と日本語のごろ合わせかよ」

「で、うどんなんだけど、英語でなんて言うか知ってる?」

「え~と、ヌードルだったっけ?」

「そう、正解。なので、うどんはヌードル。つまり、『ヌードる』って言うことなのよ」

「それって、つまり……」

「そうよ、月見うどんって『to 君 ヌードる』、つまり、わたしはあなたに裸を見せてあげるってことよ」

「じゃあ、オレも月見うどんだ! ……でも月見うどんだけじゃ、済まないよ……」

「まぁ、うふふ……」


  Ⅲ

「どうだい?」

「素敵よ。どこから見ても吸血鬼だわ。わたしの知っているドラキュラ伯爵そのままだわ!」

「それは良かった」

「で、わたしは、どうかしら?」

「うん、君も古の魔女、マリ・ダスピルクエットと見紛うばかりだよ」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。かぼちゃのランタンは?」

「ジャック・オー・ランタンだね。小型のだけど二人分用意したよ。ぶら提げて歩こうかね。気分が出るだろうからさ」

「そうね。それは良いアイディアね」

「それとさ、最近手に入れた、腐った卵の臭いスプレーもあるんだ」

「えっ…… それはさすがにちょっと……」

「大丈夫、そんなに長くは持続しないから」

「……なら、良いわ」

「これで準備は万端だ。じゃあ、行こうか……」

「そうね…… 今は魔物だらけの世界になっちゃって、ちょっと外に出るだけで、これだけの事をしなくちゃならないのね……」

「まだおれたちは良い方だ。地下室に隠れていられるんだからね。大概は見つかって食われちまった」

「そうだけど……」

「まあ仕方ないさ。人類は魔物との戦いに敗れたんだから。人だって気づかれたらおしまいだからね……」

「毎日がハロウィンなんて最低ね……」

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