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コーイチ物語 2 「秘密の消しゴム」 43

2008年12月07日 | コーイチ物語 2(全161話完結)
「逸子ちゃん、ここだったのね!」滑川は息を弾ませて逸子に言うと、コーイチの方に顔を向けた。「まあ、コーちゃんもいっしょだったのね。・・・もう、いつでもどこでも二人一緒なんだから、妬けちゃうわ!」
「・・・それより、どうしてここへ? 取材ですか?」
 コーイチは『いつでもどこでも二人一緒』と言った滑川の言葉に反応し、オレンジ色のオーラを揺れ上がらせている洋子を気にしながら言った。・・・これじゃ、救世主にはならないかな。
「そうじゃないんだけど・・・ 逸子ちゃんいる所ナメちゃん有りって事かしらねぇ」滑川はぐいっとコーイチに顔を寄せるとサングラスを外し、睫毛の長いつぶらな瞳でウィンクして見せた。「・・・本当、いつ見てもわたし好みねぇ、コーちゃんは!」
「は、はあ、それは・・・ どうも・・・」
 引きつった笑顔でコーイチは答えた。・・・やっぱり、こわいなぁ。背筋に冷たいものを走らせるコーイチだった。
「さ、逸子ちゃん、会場内を案内してちょう・・・だい・・・」
 滑川は言葉を切った。洋子に気付いて、じっと洋子を見つめている。
「あらあ、これはこれは・・・」
 滑川は言いながら洋子に近付いて行く。目の前に立つと、その巨体を屈めて洋子の顔をのぞき込む。洋子のオーラはすうっと引っ込み、気味悪そうに顔を引きつらせて後退った。滑川はそれに合わせるように前進する。とうとう洋子は壁を背にして立ち尽くしてしまった。困り果てた洋子は、半べそをかきながらコーイチの方を見た。
「滑川さん、芳川さんが困っていますよ」コーイチは声をかけた。「芳川さんは、こう言う事に慣れていないんです・・・」
 コーイチの背後で何かがぼうっと燃え上がる音がした。コーイチはイヤな予感を覚えつつ、ゆっくりと振り返った。逸子の全身から赤いオーラが、まさに燃え上がる炎のように揺らめき、立ち昇っていた。コーイチは炎を避けるように思わず顔の前に手をかざす。
「コーイチさん・・・」低い声で逸子が言い、こわい顔でにらみつける。「あのぽっと出での娘をどうしてかばうの・・・」
「い、いや、そんなつもりはないよ・・・ ただ、きれいなかわいい娘に迫って行くいつもの滑川さんの職業病に芳川さんが慣れていないって言っただけ・・・。うわあっ!」 
 逸子のオーラがさらに燃え上がり、瞳全体も金色に輝き出し、レーザービームのように鋭い光線をコーイチに発していた。その気迫に押されコーイチは、腰が抜けたようにその場に座り込んでしまった。
「・・・きれいぃ? ・・・かわいいぃ?」逸子の鋭い金色の光線は滑川を刺した。「ナメちゃん!」
 殺気を含んだ逸子の声に驚いて、職業病を引っ込めた滑川は振り返った。
「行くわよ! 会場内を案内してほしいんでしょ!」
 逸子はくるりと向きを変えると、一歩一歩、床を踏み抜きそうな勢いで歩き出した。滑川はあわてて逸子の後を追う。座り込んだコーイチの横を通る時にしゃがみ込んだ。
「なんだか分からないけど、コーちゃん、逸子ちゃんを怒らせちゃったわね。でも、大丈夫、わたしに任せて。何たって、逸子ちゃんはコーちゃんの所が大好きなんだから。少しお相手してあげたら、すぐに機嫌が直るわよ」
 ・・・怒らせた原因は滑川さんなんだけどなぁ。滑川はコーイチへウィンクして見せた。そして立ち上がると「待ってえ~ぇ、逸子ちゃ~ん!」と叫びながら内股で駆け出した。
「あらあら、逸子ちゃん、怒っていたわねぇ。滑川さんでも納まらないかもよぉ」清水が楽しそうに言った。「これは破局の危機ね。もうこうなったら、芳川さんと仲良くしたらどうかしら?」
「清水さん・・・」
 コーイチは困ったような顔で立ち上がった。
「大丈夫よ。芳川さんは見所があるわ。いずれはわたしの後継者よ。うふふふふ・・・」
「好き勝手な事を言わないで下さいよぉ・・・」
 コーイチが文句を言うと、エレベーターのベルが鳴った。
 扉が開いた。
 降りて来たのは、ギターケースを背負った長身の男だった。コーイチの友人の名護瀬富也だ。滑川と同じくきょろきょろし、コーイチたちの姿を見つけると、猛然と走り寄って来た。

       つづく

いつも熱い拍手、感謝しておりまするぅ

(来年の公演は二、三月! チケット取れるといいですね! 取れたら教えて下さいね! 出演者も発表になりましたね!)



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