お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

ブラック・ジョーク『名医ハリー・42』

2009年11月03日 | 名医ハリー(ショートショート)
206
「ねえねえ、ハリー先生が秋空に物思う姿って、なんだか魅力的ね」
「そうかしら?」
「愁いに沈んだお顔で、何を思ってらっしゃるのかしら?」
「昨日の手術で無くなったメスが、どのお腹に入っているのか、思い出しているのよ」


207
「スミスさん、落ち葉を見ながら、深い溜め息をついてるの」
「自分を重ねているのよ」
「人生の儚さって感じかしら? 意外と詩人ね」
「赤い葉っぱが自分の血まみれの顔に似てると思ってるんじゃない?」


208
「ねえ、看護師のお姉さん、どうして木の葉って、赤くなるの? 秋だから?」
「大人になると、月に一度は赤くなるものなのよ、メイベルちゃん・・・」


209
「あなたって秋のような人ね」
「あら、それってどう言う意味よ?」
「夏のように若さも無く、冬のように枯れきってもいない、中途半端って事よ!」


210
「アリス先生、落ち葉をかき分けて、溜め息をついてらっしゃるけど・・・」
「探しものでもしてるんじゃないの?」
「夏に無くした思い出、とか?」
「昨日、ポケットから落とした、感染力の強い病原菌を入れたカプセルよ」





web拍手を送る



にほんブログ村 小説ブログへ





コメントを投稿