お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

ブラック・ジョーク『名医ハリー・6』

2008年10月27日 | 名医ハリー(ショートショート)
26
 手術室に幾つもの最新鋭の機器が運び込まれていた。
「すごいですね、ハリー先生」看護師は感心したように言い、機器の周囲を見回した。「ですが、どこにも取扱説明書がありませんが・・・」
「使い方なんて良いんだよ」ハリーは機器の一つをぽんと叩いた。「これらは手術が失敗した時の言い訳さ。『これだけの装置を駆使したんですが』ってね」


27
「今日の手術は何人の予定かな?」
 ハリーは看護師に聞いた。看護師は予定表を見ながら数え始めた。
「ハリー先生、ちょうど五人です」
「そうか・・・」ハリーは暗い顔で答えた。「今日は二人か・・・」
 五人に二人――ハリーの手術失敗の確率だった。


28
「ハリー先生! 是非、娘を助けてください!」
「分かりました。では大至急、娘さんの担当を僕以外に替えてもらいましょう」


29
 病室で、ハリーの手術を受けた患者に、別の患者が言った。
「ハリー先生は、患者の体内によく忘れ物をするんだ」
「まさかぁ!」
「実際、オレは、おなかにハリー先生の腕時計が残されていたんだ」
「本当かい?」
「ハリー先生が、ひょっこりここに来て、腕をぶらぶらさせて『誰か僕の腕時計知らないかい?』って言い出したのが始まりさ。その後が大騒ぎでね。死ぬかと思ったよ・・・」
 そこへハリーが、片足跳びをしながらやって来て、靴下の足をぶらぶらさせながら言った。
「誰か僕の靴を知らないかい?」


30
 ハリーはどんな手術にでも、怖気づく事なく立ち向かう。
 ハリーは困難な手術であればあるほど、その闘志を燃え立たせる。
 
 ただ、腕が伴なわないだけだ。



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