「と言う事は・・・」コーイチは深刻は表情の洋子を見ながら言った。「鉛筆が、どこかへ行ってしまった、と・・・」
「はっきり言うと、盗まれたんです」洋子はきっぱりと言った。「当然、次は消しゴムが狙われます」
「盗まれたって、一体誰が? どうやって?」
「支社長のガブリエルさんが、持ち出して逃亡したんです。本当は両方を持ち出したんですが、あわてていたのか、消しゴムは落として行きました」
「どうして支社長なんて偉い人が・・・」
「事件を起こす前に、何度も同じ夢を見ていたと言っていました」
「どんな?」
「それが・・・」洋子はためらっていた。しかし、意を決したように続けた。「変な格好をした老人が消しゴムと鉛筆を持って来いと言い続けるんだそうです・・・」
「変な格好の老人・・・」コーイチの喉が鳴る。「それって、ピンク色の中世ヨーロッパの貴族風な服を着て、壁から自由に出入りできるおじいさんだったとか・・・」
「そこまでの事は聞いていませんが・・・」洋子も不安そうな顔になる。「そうかもしれません・・・」
コーイチは思わず周りを見回した。・・・何か、とんでもない事に巻き込まれてしまったんじゃないのだろうか? コーイチは溜め息をついた。
「そこで、残った消しゴムを守る必要が生まれました。支社は通常業務も行なっています。ですから、わたしが消しゴムを守る役目になったんです」
「どうして・・・」コーイチは言いかけて、納得した。「そうか、支社で一番強かったんだ・・・」
「そうなんです。『龍玉虎牙神王拳』は世界最強ですから」洋子はさらりと言う。「それに、支社の通常業務に支障が出る事も予想されるので、戻って来ました」
「でも、それだと、ここが危なくなるんじゃないかな?」
「そうかもしれませんが、これは社長のご指示なんです」
「ふ~ん・・・」コーイチはつぶやいた。「社長、面白がっているな」
「でも、いざとなったら闘わなければならないでしょうね・・・」
コーイチの脳裏に、桃色の超合金製のコンバットスーツにフルフェイスのヘルメットを装着した洋子が、招き猫のポーズのしている姿が浮かんでいた。・・・萌え~っ! コーイチは不謹慎ながら思ってしまった。
「・・・ところで、この消しゴムは、どんな力が秘められているんだい?」コーイチはケースを屋台のカウンターに浮いた。「さっき何とか言ってたようだけど」
「この消しゴムは・・・」洋子はあわててケースを自分の手の中に戻した。「人を別次元へ飛ばす力があるんです」
「そりゃあ・・・」コーイチは、まるでどこかの映画みたいと言いかけて口を閉じた。洋子にまたじろりとにらまれるのが怖かったからだ。「誰でも飛ばせちゃうって事かな?」
「そうは行かないんです」洋子は言った。・・・よかった、にらまれずに済んだぞ。コーイチはほっとした。「自分の名前を自分で書いた人だけなんです」
「そうなんだ。でも、そうでなければ、誰でも消し去る事ができるものね。それじゃ、あまり正義の品物とは呼べない・・・」
「・・・コーイチさん、また何か勘違いの発想をしていませんか?」
「え? いや、そんな事、あるわけ無いじゃないか・・・」
コーイチは引きつった笑顔を向けた。コーイチは脳裏に浮かんだ、ぴんと伸ばした右の人差し指と中指の間に挟んだ消しゴムを目に高さまで差し上げ、悪の組織の怪人に向かって「オマエなんか消し飛ばしてやる!」と見得を切っている正義の味方の姿を、あわてて消し飛ばした。
つづく
いつも熱い拍手、感謝しておりまするぅ
(つらいコンも終わりましたね。舞台無事に行くと良いですね)
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「はっきり言うと、盗まれたんです」洋子はきっぱりと言った。「当然、次は消しゴムが狙われます」
「盗まれたって、一体誰が? どうやって?」
「支社長のガブリエルさんが、持ち出して逃亡したんです。本当は両方を持ち出したんですが、あわてていたのか、消しゴムは落として行きました」
「どうして支社長なんて偉い人が・・・」
「事件を起こす前に、何度も同じ夢を見ていたと言っていました」
「どんな?」
「それが・・・」洋子はためらっていた。しかし、意を決したように続けた。「変な格好をした老人が消しゴムと鉛筆を持って来いと言い続けるんだそうです・・・」
「変な格好の老人・・・」コーイチの喉が鳴る。「それって、ピンク色の中世ヨーロッパの貴族風な服を着て、壁から自由に出入りできるおじいさんだったとか・・・」
「そこまでの事は聞いていませんが・・・」洋子も不安そうな顔になる。「そうかもしれません・・・」
コーイチは思わず周りを見回した。・・・何か、とんでもない事に巻き込まれてしまったんじゃないのだろうか? コーイチは溜め息をついた。
「そこで、残った消しゴムを守る必要が生まれました。支社は通常業務も行なっています。ですから、わたしが消しゴムを守る役目になったんです」
「どうして・・・」コーイチは言いかけて、納得した。「そうか、支社で一番強かったんだ・・・」
「そうなんです。『龍玉虎牙神王拳』は世界最強ですから」洋子はさらりと言う。「それに、支社の通常業務に支障が出る事も予想されるので、戻って来ました」
「でも、それだと、ここが危なくなるんじゃないかな?」
「そうかもしれませんが、これは社長のご指示なんです」
「ふ~ん・・・」コーイチはつぶやいた。「社長、面白がっているな」
「でも、いざとなったら闘わなければならないでしょうね・・・」
コーイチの脳裏に、桃色の超合金製のコンバットスーツにフルフェイスのヘルメットを装着した洋子が、招き猫のポーズのしている姿が浮かんでいた。・・・萌え~っ! コーイチは不謹慎ながら思ってしまった。
「・・・ところで、この消しゴムは、どんな力が秘められているんだい?」コーイチはケースを屋台のカウンターに浮いた。「さっき何とか言ってたようだけど」
「この消しゴムは・・・」洋子はあわててケースを自分の手の中に戻した。「人を別次元へ飛ばす力があるんです」
「そりゃあ・・・」コーイチは、まるでどこかの映画みたいと言いかけて口を閉じた。洋子にまたじろりとにらまれるのが怖かったからだ。「誰でも飛ばせちゃうって事かな?」
「そうは行かないんです」洋子は言った。・・・よかった、にらまれずに済んだぞ。コーイチはほっとした。「自分の名前を自分で書いた人だけなんです」
「そうなんだ。でも、そうでなければ、誰でも消し去る事ができるものね。それじゃ、あまり正義の品物とは呼べない・・・」
「・・・コーイチさん、また何か勘違いの発想をしていませんか?」
「え? いや、そんな事、あるわけ無いじゃないか・・・」
コーイチは引きつった笑顔を向けた。コーイチは脳裏に浮かんだ、ぴんと伸ばした右の人差し指と中指の間に挟んだ消しゴムを目に高さまで差し上げ、悪の組織の怪人に向かって「オマエなんか消し飛ばしてやる!」と見得を切っている正義の味方の姿を、あわてて消し飛ばした。
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