お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ  七

2007年12月30日 | オチラ 対 モヘラ(全27話完結)
 繭玉の動きは日中も続くようになった。
 陽光に照らし出された繭玉の中が透けて見えた。中では巨大な芋虫のような生物が蠢いていた。
 いずれ繭玉は割れ、中の虫が出現する事は明白だった。
 国連は対策会議を開いた。
 繭玉が割れる前に攻撃する案は、例の糸状のものの抵抗が予想されるために迂闊に実行できなかった。
 ニューヨークごと焼き払うとの案も、生存者の是非が確認できないために行うことは出来なかった。また、糸状のものが消してしまうだろうと言う懸念もあった。
 これと言った打開策が見出せない中、日本から会議に出席した鈴木信三が大胆な意見を述べた。
 それは「繭玉から出現した時に攻撃をしてはどうか」と言うものだった。鈴木は繭玉から伸びる糸状のものは繭玉自体をを外敵から守るためのもので、繭玉が空になってしまえばその役を終えるのではないかと推測していた。
 根拠の薄い仮説なため危険な賭けだと反対意見も出たが、繭玉への攻撃がままならない現状では、この案に賭ける他無しとの意見が相次いだ。国連の対策会議は結審した。
 ついに人類は今後の命運を分ける大きな賭けに出る事となった。
 多国籍軍は繭玉がいつ割れても良いように迎撃体制を維持した。
 また、世界中の様々な分野の学者たちも動員され、繭玉の中の生物の生態及び弱点などの研究を始めた。
 繭玉の動きは激しさを増した。その振動によって、土台となっていた幾つかのビルディングが崩壊し、繭玉が大きく傾いた。軍に緊張が走った。
 傾いた拍子に繭玉に亀裂か入ったからだった。亀裂は徐々に広がりはじめ、一部が剥がれ落ちた。
 そこから緑色をしたものが見え、それが、呼吸をしているのか、ゆっくりと、しかし停まることなく伸縮を繰り返していた。

次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ 八」を待て。



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