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大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ  拾六

2008年12月21日 | オチラ 対 モヘラ(全27話完結)
「マナ」の普及が全世界に広がり、雑菌が減って行った。
 かつてオチラの出現により、やむなく不衛生な生活を強いられ、あまつさえそれに馴染んでいた人類は、この環境の変化を心から喜んだ。不衛生が元で起こった様々な伝染病は「マナ」によって終息を迎えようとしていた。
 開発途上国は「マナ」の普及を強く望んでいた。そして、施設の設営も進んだ。
 しかし、特に劣悪な環境と評されたルンガラ民主人民共和国と言う新興のアフリカ小国では、WHOを中心として進められた「マナ」製造の施設が破壊される事件が連続した。この裏には、途上国の上層部と世界的な製薬会社との癒着があった。
 この事実を見かねたルンガラ民主人民共和国の政府高官ンカウァィク氏は、インターネットを通じ、この事を世界に暴露した。
 翌日からンカウァィク氏は行方不明となり、ルンガラ民主人民共和国は全ての国との外交を遮断した。元々軍事国家だったため、国連軍も迂闊な事は出来なかった。報復として最新鋭の核弾頭付きの高速大陸横断ミサイルを無差別に撃ち込む意思を見せているからだ。
 せっかく人類が足並みをそろえ、復興に立ち上がろうとしていただけに、世界に暗雲が立ち込めた。結託していた製薬会社は、世界中から不買運動、資金の引き上げなどを受け、倒産した。だが、ルンガラ民主人民共和国は武装を強化し、対決姿勢を強めて行った。さらに、元首マクンバークティニィ大将軍は自暴自棄となり、突然核弾頭ミサイルを発射するかもしれないとの憶測も流れていた。
 そんなある日、モヘラが動いた。金属的な声を響かせながら一声啼くと、薄黄色の羽根を羽ばたかせ、ロンドンから飛び立った。
 一路アフリカ大陸へと進んだ。どこへ進むのか。それは誰もが気づいていた。
 モヘラはルンガラ民主人民共和国上空に差し掛かると、軍事施設、主要都市、森林などに鱗粉を撒き散らしながら飛び回った。豪雪のような勢いで降り注ぐ鱗粉は風に舞い、それらを覆いつくさんばかりだった。
「モヘラの怒り」――世界の人々の目にはそう映った。 
 何よりも恐れたのはルンガラ民主人民共和国の軍将校や高官たちだった。「モヘラの怒り」は迷信深い彼等を動揺させた。さらに、元々このような籠城戦に勝機などある訳がなく、国が無くなる様な事態にでもなれば、彼等の前途には逮捕拘束処刑しかなかった。
 そこで彼らは元首マクンバークティニィ大将軍を拘留し、自分達の命と身分の保証を条件に国境警備の任に当たっている国連軍の一小隊へ引き渡した。
 これで戦いは終わった。モヘラが飛来してからまさにあっと言う間の出来事だった。
 モヘラはそれが分かったのだろうか、静かに、鱗粉にまみれた大地に降りて行った。


次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ 拾七」を待て。



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