お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

名台詞で行こう

2021年06月11日 | Weblog
 一度は使ってみたいセリフってのがある。オレも男だ。彼女を決め台詞でめろめろにしてやりたいって思うのさ。
 そんな時、懐かしの名画「カサブランカ」を観た。
 これだ! ハンフリー・ボガートが彼女に言う台詞。

「君の瞳に乾杯!」

 最高の台詞だ。オレは鏡に向かって顔を作りながらこの台詞を練習した。
 左45度に顔を向けて、彼女の眼を見つめながら、ボギー並みの渋い声でそっと呟くようにささやく。我ながら惚れ惚れする出来だ。

 ところがだ、英語で言った方がカッコイイだろうと思い、調べたのがいけなかった。

“Here's looking at you, kid!”

 直訳すると「子猫ちゃん、君を見つめていることに乾杯!」になるらしい。少なくともオレが口にすると下心満載な感じがする台詞になっちまう気がする。知らなければよかった、ああ、「後悔役に立たず」とは言ったものだ……


 そこで、別の台詞を探した。最近彼女との仲が思わしくない。なので、綺麗に別れることの出来る台詞を探した。
 ビビアン・リー主演の名画「風と共に去りぬ」の最後の台詞に、ぐっと来た。

“After all, tomorrow is another day.”

 直訳は「結局、明日は別の日なのだから」だ。今日と言う日を乗り越えて、新たに進もうって気分になる。オレにも彼女にも良い感じの台詞だ。

 ところがだ、過去の邦訳で「明日は明日の風が吹く」って言うのがあって、結構流行ったらしいのだ。何だか投げやりでどうでも良いって感じのする台詞になってしまう。知らなければよかった。


 そこで、さらに別の台詞を探した。彼女とは顔を合わせればケンカをするような末期状態になってしまった。彼女はかなりオレに怨みを募らせているようだ。命の危険を感じる時もある。何か言ってやりたい。
 そんな時に観たのが「ダーティハリー 4」だった。
 主役のクリント・イーストウッド演じるキャラハン刑事が、人質を取った犯人に、マグナム44の銃口を向けて言う台詞だ。これしかないと確信した。

“Go ahead, make my day.”

 直訳は「やってみろよ。面白いことになるぜ」ってなるらしい。彼女が何かしてきそうになったら使える台詞だ。ハリーみたいにクールに凄む練習もした。

 ところがだ、こんな冗談を目にした。

“Go a bed, make my baby.”(ベッドに行こう、オレの赤ちゃんを作ろう)

 ダメだ、笑いが止まらない。もうクールに凄むことはできない。


 別の台詞を探していると、すでに彼女はオレの許を去り、新たな彼氏と仲良く笑顔を浮かべながら腕を組んで歩いているのを見かけた。不意に後悔の思いが湧き上がった。だが、オレはそれを打ち消したかった。
 その時、オレの脳裏にあの日本語の名台詞が浮かび、思わず握りしめた右拳を高々と突き上げた。

「わが生涯に一片の悔いなし!!」


(蛇足の作者註:最後の台詞は皆様ご存じ「北斗の拳」のラオウ最期の台詞です)

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