突然、二階の扉が開き、ゼドが出て来た。
「おい、ゼリルよう、まだなのかよう!」触角を振り回しながらゼドは言い、廊下の手摺りを掴んで身を乗り出す。「なんだ、おめぇらはよう!」
泣き崩れている女とマッチョな女を見て、赤いバスローブのゼドが呆然としている。
二階のもう一つの扉が開いて、マグが空のグラスを持って、白いバスローブで出て来た。
「メイム、オレはやっぱりゼドゼドじゃねぇと酔えねぇぜ……」マグも階下の二人を見て驚いた。「てめぇら何者だあ!」
その声にゼドが横を向く。
「マグじゃないかよう!」
マグは驚いたままの顔を横に向ける。
「てめぇは、ゼド……」
……しまった! 二人とも、防音室だから音は聞こえないはずと油断したわ。扉の鍵を外から掛けられるように直しておくべきだったわね。ジェシルは舌打ちをした。
「えええい、うるさいわねぇ!」ジェシルは、二階の廊下に立っているマグとゼドに向かって怒鳴った。「わたしは宇宙パトロール捜査官のジェシル・アンよ! ここはね、わたしの家なのよ! メルーバの女神像盗難の容疑が、あんた達とこの女に掛かってたわけ。そこで、メイムとゼリルとベアトレイトスで色仕掛けをして、本物を取り戻す作戦を立てたのさ。犯人はこの女、アルミーシュだったわ。だから、あんた達はもう用済みよ。さあ、帰ってよ!」
マグとゼドの昇った階段は、二階の廊下で繋がっていて、どちらからでも昇り降り出来た。右の階段から昇ったマグは、二階の一番右側の部屋に入り、左の階段から昇ったゼドは、一番左側の部屋へ入っていたのだ。それぞれの部屋の間には、更に三つの部屋がある。
吹き抜けになっている玄関ホールには、泣き止まないアルミーシュの嗚咽が、うわんうわんと響いている。
「うるせぇぞ、女!」マグがアルミーシュを怒鳴りつける。その声もうわんうわんと響いている。「おい、マッチョ女(と言って、ジェシルを指差す)、メイムはどうしたんだ? メイムを出せ!」
「メイムなんてのはどうでも良いからよう!」ゼドも大声で言う。これもうわんうわんと響く。「あの骨っぷりの良い、ゼリルを呼んでくれよう!」
「分かってるの?」ジェシルも叫ぶ。うわんうわんとなる。「わたしは宇宙パトロール捜査官なのよ!」
「そんなもの、どうってこたぁねえ!」マグが大声で言う。「さっさとメイムを出せよ!」
「ゼリルを出してくれよう!」ゼドも叫ぶ。「そうすりゃ、大人しく帰るからよう!」
「そうだぜ! 大人しく連れて帰ってやるぜ!」
「ああっ、もう、助平親父共が!」ジェシルは喚く二階の二人を怒鳴りつける。「メイムもゼリルも、わたしなのよ!」
吐き捨てるように言うと、ジェシルのからだの輪郭が崩れながら膨れ始め、下着もそれにつれて大きく伸び、顔が弛み始め、不機嫌な表情を作って行く。
「メイム!」マグが叫ぶ。手摺りを握る手に力が入る。「メイム!」
「違うわ。わたしはジェシル・アンよ」ジェシルは態とかわいい明るい声を強調する。続けた声はマグの知るメイムの声で言う。「分かっただろ? あんたのメイムなんか、元々居ないんだよ!」
言い終わると、ジェシルのからだはどんどんと縮まり萎んで行き、下着も合わせて縮まる。
「ゼリルじゃないかよう!」ゼドが叫ぶ。「おい、ここへ来てくれよう!」
「分かんない人ねぇ」ジェシルは地声で言う。そして、声をゼドの知る掠れたゼリルの声にする。「お分かりでしょうか、ゼド様。ゼリルと言う女は、この宇宙を捜し回っても居ないのです。当然、メイムもベアトレイトスも居ないのです」
ジェシルは元のジェシルの姿に戻った。腰まである黒髪を軽く揺すった。
「よ~く分かったでしょ? そう簡単に理想のお相手なんか見つかるわけないじゃないのよ!」ジェシルは言うと、玄関ホール横の、普段使っている部屋を指差した。「これからパトロール本部に連絡を入れるから、あんた達は、さっさと帰った方が身の為よ。んじゃ、さよなら、バイバイ」
ジェシルは二階の二人に手を振り、泣き崩れている教主の腕を取って立ち上がらせた。掛けてやったフリソデが床に落ち、全裸のままで部屋へと連れて行かれた。部屋の扉が音を立てて閉じられた。
マグとゼドは、がっくりと床に膝を付いた。
つづく
「おい、ゼリルよう、まだなのかよう!」触角を振り回しながらゼドは言い、廊下の手摺りを掴んで身を乗り出す。「なんだ、おめぇらはよう!」
泣き崩れている女とマッチョな女を見て、赤いバスローブのゼドが呆然としている。
二階のもう一つの扉が開いて、マグが空のグラスを持って、白いバスローブで出て来た。
「メイム、オレはやっぱりゼドゼドじゃねぇと酔えねぇぜ……」マグも階下の二人を見て驚いた。「てめぇら何者だあ!」
その声にゼドが横を向く。
「マグじゃないかよう!」
マグは驚いたままの顔を横に向ける。
「てめぇは、ゼド……」
……しまった! 二人とも、防音室だから音は聞こえないはずと油断したわ。扉の鍵を外から掛けられるように直しておくべきだったわね。ジェシルは舌打ちをした。
「えええい、うるさいわねぇ!」ジェシルは、二階の廊下に立っているマグとゼドに向かって怒鳴った。「わたしは宇宙パトロール捜査官のジェシル・アンよ! ここはね、わたしの家なのよ! メルーバの女神像盗難の容疑が、あんた達とこの女に掛かってたわけ。そこで、メイムとゼリルとベアトレイトスで色仕掛けをして、本物を取り戻す作戦を立てたのさ。犯人はこの女、アルミーシュだったわ。だから、あんた達はもう用済みよ。さあ、帰ってよ!」
マグとゼドの昇った階段は、二階の廊下で繋がっていて、どちらからでも昇り降り出来た。右の階段から昇ったマグは、二階の一番右側の部屋に入り、左の階段から昇ったゼドは、一番左側の部屋へ入っていたのだ。それぞれの部屋の間には、更に三つの部屋がある。
吹き抜けになっている玄関ホールには、泣き止まないアルミーシュの嗚咽が、うわんうわんと響いている。
「うるせぇぞ、女!」マグがアルミーシュを怒鳴りつける。その声もうわんうわんと響いている。「おい、マッチョ女(と言って、ジェシルを指差す)、メイムはどうしたんだ? メイムを出せ!」
「メイムなんてのはどうでも良いからよう!」ゼドも大声で言う。これもうわんうわんと響く。「あの骨っぷりの良い、ゼリルを呼んでくれよう!」
「分かってるの?」ジェシルも叫ぶ。うわんうわんとなる。「わたしは宇宙パトロール捜査官なのよ!」
「そんなもの、どうってこたぁねえ!」マグが大声で言う。「さっさとメイムを出せよ!」
「ゼリルを出してくれよう!」ゼドも叫ぶ。「そうすりゃ、大人しく帰るからよう!」
「そうだぜ! 大人しく連れて帰ってやるぜ!」
「ああっ、もう、助平親父共が!」ジェシルは喚く二階の二人を怒鳴りつける。「メイムもゼリルも、わたしなのよ!」
吐き捨てるように言うと、ジェシルのからだの輪郭が崩れながら膨れ始め、下着もそれにつれて大きく伸び、顔が弛み始め、不機嫌な表情を作って行く。
「メイム!」マグが叫ぶ。手摺りを握る手に力が入る。「メイム!」
「違うわ。わたしはジェシル・アンよ」ジェシルは態とかわいい明るい声を強調する。続けた声はマグの知るメイムの声で言う。「分かっただろ? あんたのメイムなんか、元々居ないんだよ!」
言い終わると、ジェシルのからだはどんどんと縮まり萎んで行き、下着も合わせて縮まる。
「ゼリルじゃないかよう!」ゼドが叫ぶ。「おい、ここへ来てくれよう!」
「分かんない人ねぇ」ジェシルは地声で言う。そして、声をゼドの知る掠れたゼリルの声にする。「お分かりでしょうか、ゼド様。ゼリルと言う女は、この宇宙を捜し回っても居ないのです。当然、メイムもベアトレイトスも居ないのです」
ジェシルは元のジェシルの姿に戻った。腰まである黒髪を軽く揺すった。
「よ~く分かったでしょ? そう簡単に理想のお相手なんか見つかるわけないじゃないのよ!」ジェシルは言うと、玄関ホール横の、普段使っている部屋を指差した。「これからパトロール本部に連絡を入れるから、あんた達は、さっさと帰った方が身の為よ。んじゃ、さよなら、バイバイ」
ジェシルは二階の二人に手を振り、泣き崩れている教主の腕を取って立ち上がらせた。掛けてやったフリソデが床に落ち、全裸のままで部屋へと連れて行かれた。部屋の扉が音を立てて閉じられた。
マグとゼドは、がっくりと床に膝を付いた。
つづく
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