「ちはやふる2」10首「むらさめの」感想。友情からでも怨念からでも、結果の行動は同じ

◎「ちはやふる2」
　　第10首「むらさめの」

村雨（むらさめ）の
露もまだひぬ
真木（まき）の葉に
霧立ちのぼる
秋の夕暮
　（寂蓮法師。百人一首の87番目の歌）

〔意味〕
　村雨（にわか雨、通り雨）が慌しく通り過ぎて、露もまだ乾いていない真木（杉や槙などの木）の葉が秋の夕陽を受けて鮮やかであるけれど、霧が立ち上っていて、もの悲しさを感じさせる秋の夕暮れだなあ。


　通り雨でずぶ濡れの詩暢、といったところでしょう。それにしても、複数の天気予報をチェックして傘を持ち歩いていた駒野は用意周到すぎ。
　また、新が個人戦に出られるか決まらない状況、更に、まだ新に会えていない千早の気持ちが、秋の夕暮れの、少し寂しい気分でもあるのでしょう。


○　運営委員が、替え玉をした新が個人戦に出られるかを検討している最中に、数年ぶりに会った友達が新は悪くないと泣いて頼むのに対し、罰は受けなければならないと新が言うとか、友情と青春って感じ（友達が泣いて頼むと、ホホが緩んで失格にはしない方向になりかけた運営委員は甘いですが、このアニメらしい表現です。）
　学位時代の友達は利害関係のない付き合いですから、久しぶりに会っても直ぐに友達に戻れるというのもいいですね。

　一方、運営委員に頭を下げて、新が出られなければ自分も出ないと言う詩暢は、唯一負けたことがある新に今度こそは勝ちたいという怨念みたいなもので、青春とは程遠いですが（詩暢に、自分の目的のためなら何でもする一面（頭を下げること。）があることは、自分の一番の目的を理解していて、そのためには（つまらない）プライドに関係なく何でもorほとんどのことを犠牲に出来るということ。そこは、北央高校卒業の須藤先輩と同じで、一番の目的を果たすことが彼女らの一番のプライドということ。）。

　「あんたは私と、戦いたくないんか。」と詩暢に促されて、一緒に頭を下げる新は、罰を受けなければと言っていたついさっきまでとは大違い。替え玉で出た団体戦を経て、自分だけの かるた ではないこと（この場合は、新の かるた が詩暢のための かるた でもあったということ。）、自分だけのためではない かるた を楽しく感じたことを思い出していたのでしょう。


　この引っ張り具合からして、どうせ新は試合に出られるのだろうなと思いつつ、こんな茶番劇が嫌味にならないのは、シリアスとコメディの混ぜ具合の全体の雰囲気と、さらりと描かれているからなのでしょう。
　さらりと描かれているのに底が浅いという訳でもないのは、気持ちを表す台詞や、解説調の台詞や、間（ま）が的確なのかなあ。


○　瑞沢高校の今回の相手は、暗記に自信があるから、自陣のフダをランダムに配置し、かつ、こまめにフダ移動するチーム。

　多少はあり得るとしても、千早がその程度で混乱してペースを乱し過ぎたのは少し以外でしたが、そこは、若さゆえ、とでも理解するしかないのでしょう。

　なぜ変な人がいるチームばかりと対戦なのかと太一が思っていましたが、話として面白くするためでしょうけれど、かるた をする人、特に強い人は変わった人ばかりという話ばかりで、それで競技かるた界としていいのか？とは思います（未来の名人候補の新はかなりまともですが。）。
　話としては楽しめるので、いいのですけれど。


○　次の決勝トーナメントの試合、偵察から帰った駒野（机くん）を見て駒野抜きの同じメンバーでいいと言う西田（肉まんくん）。駒野がモチベーションを落としているように見えていましたが、西田はそれに気付いたのでしょう。

　駒野がモチベーションを落としているとしたら、筑波に実力で並ばれたか、抜かれたかも知れない、という駒野自身の現状認識が的確なだけに、また、かるた で結構自信を付けたものの、基本的に自己評価が低く、自分で自分を結構客観視できる知性がある駒野ですから、そこから直ぐに抜け出せるものでもありません。

　この辺は、次回に描かれるでしょうから、西田の真意はそのときに判明するでしょう。


○　しかし、対戦相手のうちの3人が高校生クイズ選手権優勝者で、クイズのために始めた かるた なのに本気になって、負けて悔し泣きをするくらいに かるた がしたいからしているようになるとか、これまでも かるた に負けて一層 かるた に熱くなる者ばかりなのは、相変わらず出来過ぎ。

　スポコンアニメだから、そこは仕方ないか。


○　さて、新（や詩暢）を意識すると千早の集中力が落ちるからとして新の話題を避ける太一ですが、新を意識し過ぎなのは太一の方なのですが。
　太一がそこに気付くとき、また一つ楽しめそうです。


【shin】