岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド
とりあえず過去執筆した作品、未完成も含めてここへ残しておく

4(真・進化するストーカー女編)

2019年08月01日 16時51分00秒 | 鬼畜道 各章&進化するストーカー女

 

 

3(真・進化するストーカー女編) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

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 一週間が経った。俺の携帯電話は電源を切ったままだ。
 裕美から連絡があったかどうかさえ分からない。
 毎日のように夜になると歌舞伎町へ向かい、ゲーム屋『ワールド』で仕事をする日々。ポッカリと心に空洞ができ、そこへ冷たい風がビュービュー吹きつけてくるような感じだった。
 考えても何も分からないから、いつからか考える事すらやめた。腹が減れば飯を食べ、眠くなると横になる。小説をたくさん買い込んで読もうと思ったが、こんな時文字は駄目だ。読み出そうとしても、内容がまるで頭に入っていかない。常に頭の片隅に裕美の存在があった。
 やるせなさだけが募り、俺の心は氷の牢屋の中に深く閉ざされる。
 仕事が終わると近くのゲーム屋へ拠り、財布の中にある金をすべて使い果たすまで遊ぶ。一回チェンジのみのポーカーをひたすら意味もなくプレイする。役がそろえばダブルアップを押し、ビックかスモールを叩くシンプルなゲーム。何でこんなものに人は熱くなるのだろう。
 ボーっと画面を眺めながら金だけが目減りしていく。不意に目の前に女性の手が見えた。
「やっほー」
 横を見ると、たまにうちの店『ワールド』へ客で来る風俗嬢のむつきが立っていた。
「おう、むつき」
「どうしたの、心ここにあらずって感じでさ」
 むっちりとした体型のむつきの肉体。大きな胸に自然と目が行く。
「別に…。ただ暇だからゲームをしているだけだ」

「じゃあさ、ご飯行こうよ」
「そんな気分じゃねえ」
「じゃあさ、喫茶店に行こうよ」
「行かない。飲み物ならここでタダで頼めるだろうがよ」
「そうじゃなくってさー…、もう……」
「ゲームの邪魔をするな」
「もう『ワールド』なんか行かないからね」
「来なくて結構だ。うちの店はおまえが来なくても、充分やっていける」
「可愛くないなあ」
「ああ、一度もそんな事言われた事なんてないね」
「こんな若い女が誘ってんのにさー」
 ゆっくりむつきの体を足元から見る。こういう肉厚の女はセックスの時抱き心地がいい。客に手を出す事は今までなかった。私情が入ると、俺が仕事をやりづらくなるからだ。でも、こいつを抱けば、少しはこのやるせなさは消えるだろう。
「分かったよ。あとクレジットが千五百だから、終わるまでちょっと待ってろ。好きなものご馳走してやるよ」
「やったぁ~」
 大袈裟に両腕を上げ、バンザイをするむつき。大きな胸が動きに沿って揺れる。そんなに俺といたいなら、思い切り喘ぎ声を出させてやるよ……。

 一番街通りにある『浪漫亭』で遅めのランチを取る。むつきは何が嬉しいのか妙にニコニコしながらテーブルを上を手で叩いていた。
「少しは落ち着けよ」
「やだよー。だってさ、神威さんとやっと食事に来れたしね」
「大袈裟な」
「全然大袈裟じゃないよ。何で私があの店にいたと思う?」
「知らねえよ」
「いつも神威さんって冷たくするから、だから『ワールド』にあまり行かなくなったの」
「勝手にすればいい」
「こんなさ、二十歳になったばかりのピチピチの若い女が言い寄ってんのにさ」
「確かにピチピチだけが取り柄だな、おまえは」
「ふん、私の裸なんて見た事ないくせにさ」
「見たいって言えば、見せてくれるのか?」
「バーカ」
 まだこいつはガキ過ぎる。今日のところは食事だけって感じにしておこう。
 むつきは他愛のない会話を一方的にしてくるが、自分の仕事の事だけは言わなかった。何の為に風俗で働き、何故金をそんなに稼ごうとするのか。気になったが放っておく。別に俺は、こいつの彼氏でも何でもない。『ワールド』のただの客に過ぎないのだ。
「ねえ、神威さんの携帯番号教えてよ」
「構わないよ」
「嘘つかれると嫌だから、一回鳴らすよん」
「ああ」
 そういえば俺の携帯電話は電源を落としたままだったっけ。
「あーっ、繋がらなーい。神威さん、私に嘘教えたんでしょ?」
「ちょっと待て、今電源をつけるから」
「じゃもう一回行くよ」
「ああ」
 コール音が鳴り、知らない番号が画面に表示される。これがむつきの番号。俺はアドレス帳へ登録した。
 俺はパスタ。食べ盛りのむつきはグラタンとハンバーグのセットを二品頼んでいた。目の前の料理をがむしゃらに口へ入れるむつき。何でこんな元気な子が風俗嬢なんてやってんだろうな……。
 呆れたように食べっぷりを眺めていると、むつきは俺の目を「エヘヘ」と笑う。笑顔が本当に似合う女だ。いつだって明るい。
『浪漫亭』を出ると、むつきは「ゲームセンターへ行きたい」と駄々をこねた。今日の夜も仕事だ。そろそろ俺は帰って寝たかった。
「悪いけど、もう帰るよ、俺は」
「えー、じゃあさ、プリクラだけでも一緒に撮ろうよ、ね?」
「何でだよ?」
「だってさ、今日初めて一緒に食事したんだよ?」
「だから何だ?」
「うふ、記念日」
「何の記念日だか……」
「さあ、レッツゴー!」
 むつきは俺の右腕にしがみつき、仕方なくゲームセンターへ向かった。

 ビニールのカーテンを威勢よく開き、むつきは俺の手を引っ張る。目の前にはプリントクラブという名の機械があり、暗い画面に俺たちの顔が映っている。
「うへへ、美白効果のやつにしよっかなー」
「何でもいいから早く決めろ」
「じゃあ、美白にしよっと」
 画面が明るくなり、むつきは機械についているボタンを色々押している。
「俺はどうすんだ?」
「まず私の肩に腕を回して」
「こうか?」
「そうそう」
 画面に映るむつきの顔が満面な笑みに変わる。彼女のいい匂いが自然と鼻に入ってきた。結構俺の好きな女の匂いだ……。
「あれ、神威さん、私の胸を上から覗こうとしてる~」
「してねえっ!」
「じゃあ、何で私のほうを見ていたの?」
 意地悪そうにむつきは笑った。
「案外いい匂いがするんだなあって思っただけだ」
「ほんと? 嬉しい。じゃあさ、もっと嗅いでいいよん」
 むつきはそう言いながら体を押し付けてくる。大きな胸が俺の体に当たる。弾力があり張りのあるでかいおっぱい。こいつ、冗談で言っているのか?
「じゃあ、お言葉に甘えようかな……」
 目と目が合う。それまで笑顔だったむつきの表情が、真面目な顔に変わる。
 いいのか? 客に手など出して……。
 意思とは逆に徐々に縮まる距離。あと数センチでむつきの唇に触れる。ゆっくりまぶたを閉じる彼女。いつも元気いっぱいなむつきでなく、そこには一人の覚悟を持った女がいた。このまま流れてしまったほうが楽になれる。
 柔らかい唇の感触。まだソフトなキス。肩に回していた腕に自然と力が入る。
 左手が震えながらむつきの胸に近づく。あの大きな胸をこの手で揉みしだいてみたい。
 ちょっとした葛藤があった。ここで手を出して、あとで面倒にならないだろうか?
 馬鹿な、俺はこいつに今、キスをしているんだぞ? 早く胸をつかめ。本能の赴くまま、行動すれば寂しくなんかなくなる……。
 左手がむつきの胸に触れる。柔らかく張りのある大きなおっぱい。その瞬間、手首をつかまれた。
「神威さん…、本気にしていいんだよね?」
「……」
 手を出すならこの場だけで済まない。そう彼女は言っているのだ。胸に入れていた携帯電話が震える。また友香か文江からだろう。
「神威さん……」
「ちょっとごめん、電話だ」
 慌てて俺はむつきから離れる。
「誰から?」
「おまえには関係ない」
「何でよ? 馬鹿っ!」
 涙目になったむつきは、そのまま外へ向かって飛び出していった。
 また俺は一人の女を傷つけたのか……。
 後姿を目で追うだけで、また俺は何もしなかった。

 一回り近く年が離れている女を悪戯に泣かせ、また傷つけた。
 一体、俺の存在価値って何なのだろう? 幼い頃、たくさんの女と遊ぶ親父を軽蔑した。俺も親父と大差ない。やはり血は争えないのか……。
 好きなように女を抱こうとして、何故こうやって苦しむのだろう。素直に本能に、欲望に従って行動しているだけだ。
 本当はちゃんとした彼女がいて、ほのぼのとした日々を遅れればそれでいい。ちゃんとした彼女? 今までちゃんとした彼女なんていたのか?
 北海道の香織はスナックの女。抱いたけど、一緒に過ごしたのは一晩だけ。あれを付き合ったなんて言えるのか?
 高校時代の同級生、永田瑞穂はあれ以来音沙汰がない。キス一つしていないプラトニックな関係。馬鹿馬鹿しい。彼女でも何でもないだろうが。
 広告代理業で知り合い、二十歳の誕生日抱いた河合。あの子はまともだったかもしれない。ヤキモチ焼きだったけど。
 それから俺は大和プロレスを目指し、女というものに縁がなくなった。
 左肘を壊し、プロレス界を追放され、居場所探しで働くようになったホテル。そこで知り合った同僚の北野さん。思えばあの子だったら、幸せな毎日を送っていられたのかもしれない。俺は彼女より、総合格闘技の復帰を選んだから消えていった。
 その前に抱いたスナックの女、未来。
 もういい……。
 そんな事を思い出して何になる? すべて俺を通り過ぎ、今ではまるで違う人生を歩んでいる女たちなんて。
 歌舞伎町に来て、たくさんの女と知り合い、たくさんの女を抱いた。でも、すべてそれはまともな関係ではない。風俗やキャバクラ、挙句の果てには出会い系サイト。
 ただ抱きたいだけなら、ソープランドに行けばいい。それなのにいまいち好きになれず、行かない俺。セックスというものが前提なら、何故ソープで済ませない?
 心の奥底で、こんなに薄汚れているくせに、愛情を求めているからだ。贅沢なのだ。俺が求めるものすべてが。
 いつだって俺は優柔不断なのだ。たくさんの女とセックスもしたいけど、愛もほしい。本当に馬鹿だ。そんな都合いい事なんてある訳がない。いつもそう思っていても、俺は金を払い、新たな女を求めている。
 どうすれば心の空洞が埋まる?
 目を閉じる。風俗嬢の裕美の顔しか思い浮かばない。あれからまったく連絡のない彼女。いや、俺が携帯電話の電源を落としている事が多いから、繋がらなかっただけかもしれない。裕美にメールアドレスは教えていなかった。
 携帯電話を見る。メールが三十五件。すべて出会い系サイトで知り合った友香と文江からだった。本当にしつこい奴らだ。だけど俺が彼女らをこうさせた……。
 美人な友香。写真を見た限りではあるが。彼女は性格に難があり過ぎる。仕事中に電話を二十回もしてくるような女だ。それを注意しても理解してくれない。
 文江。顔も分からない得体の知れない女。分かっているのは電話番号とメールアドレスと住所だけ。
 二人に共通点があるとすれば、同じ出会い系サイトへ登録。そして九州に住んでいるという点ぐらいだろう。
 最近の女関係はこの二人の女から始まり、風俗嬢の裕美、そしてむつき。
 シンプルに考えよう。裕美との件がハッキリしていないから、こんな考えるのだ。だったら行けばいい。裕美の働く『モーニング抜きっ子』へ。
 今日はこのまま歌舞伎町へ泊まり、そのまま夜になったら『ワールド』へ出勤すればいい。それなら充分に睡眠時間も取れるだろう。

 最近ロクな展開じゃないから慎重に行動しないといけない。ファッションヘルス『モーニング抜きっ子』の前まで来るが、俺はさりげなく通行人のふりをして辺りを見回す。先ほど走り去っていったむつきが、まだこの辺にいてもおかしくないからだ。
 一つずつ片付けていけばいい。今は裕美。彼女しか頭の中にないのだ。
 軽く深呼吸をして店へ入る。あいつ、俺の顔見たら、どんな風に思うのだろう? 迷うな。迷わず行けばいい。
「いらっしゃいませ。当店のご利用は初めてですか?」
 前回とは違い、ひ弱そうな細い体のメガネを掛けた店員が出てくる。
「モモって出勤している?」
「はい、ご出勤されてます。モモさんご指名でよろしいですか?」
「頼む」
「実はですね、お客さま…。モモさん只今ご指名が入っておりまして、待ち時間があと一時間と三十分ほどお待ちするようなのですが、それでもよろしいでしょうか?」
 ハンマーで頭を殴られたような感じがした。非常な現実を思い知らされる。今、裕美は別の男といやらしい行為をしている最中なのだ……。
 それでも俺はあいつの顔が見たい。何故あの日帰ってしまったのか、それを聞いておきたい。じゃないと何も前に進まないのだ。
「あ、あのー、お客さま…。他の子でしたら、すぐにご案内できますが」
「い、いえ…、モモ指名でお願いします」
「はい、かしこまりました。お時間のほうは何分になさいますか?」
「とりあえず五十分で」
 僕は財布から一万円札を二枚取り出し、店員に手渡す。
 待合室にあるソファーに腰掛けた状態で、裕美、いや源氏名モモの写真をしばらく見つめた。
 写真の中のモモは、こちらを向いて嬉しそうな笑顔をしている。
 果たして俺の行動は、これで本当にいいのか?
 このような形で再会するのは本位ではない。でもこれからあと一時間半で、あの裕美に逢える。そう思うと胸が高鳴った。
「はい、お客さま、お釣りになります。では少々お待ちになって下さい」
 待合室の本棚に置いてある週刊誌を適当に手に取り、パラパラ読み出す。裕美の事で頭がいっぱいで、ただ本をペラペラめくるという作業をしているだけだった。本をめくり終わっても、週刊誌の内容に何が書いてあったかすら全然覚えてない。
 今頃あいつは、他の客の一物をくわえている。
「お金が必要なの……」
 裕美は確かにあの時そう言った。とても寂しそうな表情で……。
 俺以外の男の挿入だって、金次第で許しているかもしれない。
 想像すると気が狂いそうになってしまう。
 何か別の事を考えよう……。

 一時間半という拷問のような待ち時間。時計を見ると、まだ十分しか経っていない。あと一時間二十分……。
 雑誌を再び手に取る。まだ今週のヤンジャン見てなかったよな。
 駄目だ……。
 漫画を見ているのに、まるで内容が頭に入っていかない。台詞を読もうとすると、すぐ裕美の事でいっぱいになる。こんな時、小説や漫画は役に立たない。
 一度外へ出るか。飯でも食って、時間を潰そう。
 蚊とんぼのようなメガネ店員に「ちょっと外出てくるわ」と告げると、俺は『モーニング抜きっ子』をあとにした。
 目的もなく歌舞伎町をブラブラと歩く。もしここでむつきとバッタリ出くわしたら、俺はどうするのだろう? こんなところ歩いている訳ねえだろ。目に涙を溜めたむつきを顔を思い出す。あいつには笑顔が似合う。泣いた顔は似合わない。
 あと一時間ちょいで裕美に逢える。しかし逢って何を俺はしたいのだ?
 顔も知らぬ男にいいように体を弄ばれる裕美。あの敏感な肉体は次第に股を開き……。
 やめろ。馬鹿な想像は。どうかしているぞ、最近。
 飯でも食おう。食っていれば余計な事など考えずに済む。
 コマ劇場の中にある食店街の『フライキッチン 峰』に入る。ここはいつも俺が『ワールド』の従業員たちを仕事が終わればよく連れてくる場所だ。
 中には頑固一徹なおばあさんがいて、いつだってデーンと構えている。「私の事をこの街で知らない人はいないよ」と何の根拠もない事を平気で話すおばあさんには不思議と愛着が持てた。ご飯がなくなるとニュッと手を伸ばし、漫画に出てくる大盛りのようにご飯をこれでもかと盛りだす。客が「そんなに食えないよ」と言ったところで、「若いんだから食べなさい」と自分の理を押し通す。俺は新しく従業員が入ると必ず『フライキッチン 峰』に連れて行き、この洗礼を浴びせた。
「あれ、久しぶりだね」
 腰に両手を置いて銅像のようにそびえ立つおばあさんの姿が見える。
「この間来たばかりじゃないですか」
「そうかい。お兄さん、毎度」
「お世話さまです」
「今日は一人なのかい?」
「ええ、たまには一人ぐらいのほうが気楽です」
「お兄さんは、いつも大勢連れてきてくれるからねえ」
「ははは、だってここ、本当に安いし、うまいし、良心的だし」
「そうかいそうかい」
「それにおばあさんもいますからねえ」
「やだよ、この子は。こんな年寄り口説いちゃって」
「べ、別に口説いていませんよ。メンチカツとクリームコロッケの盛り合わせ。あとハンバーグを単品で下さいよ」
「あいよ! メンコロ一丁! あとハンバーグ単品」
 奥にいる厨房の料理人に声を掛ける。
「どうだい、店の調子は?」
「ボチボチですね。この街がある限り、ずっとそんな感じなんでしょうね」
「私はね、ずっとコマ劇場ができた時からいるんだ。その時この店も同時に始まった。だからね、みんな私の事は知っている」
 おばあさんの武勇伝が始まった。俺は笑顔で聞く体勢に入る。
「おばあさんは有名人ですからね」
「おう、本当に私はそうだよ。ここを出たビルのオーナーいるだろ?」
「ええ」
 どのビルを指しているのか分からないし、歌舞伎町でビルを持つオーナーの知り合いなど俺にはいない。でも話の腰を折るのが嫌だったので、適当に相槌を打っておく。
「その人だって街を歩く人だって、みんな私を知ってんだ」
「すごいですね~」
「そんな事あるもんかい。あ、お兄さん、アイスコーヒーサービスしてやるよ。飲んでいきな」
「すみません。気を使っていただいて」
「何を水臭い事言ってんだい。若いんだから遠慮なんてせず、いっぱい食べていっぱい飲めばいい。ほら、早くアイスコーヒー飲みな」
「ありがとうございます」
 俺はこうしてしばらく、『フライキッチン 峰』のおばあさんの相手をしながら時間を潰した。

 裕美に逢えるまであと十五分。そろそろいい頃合いだな。俺はおばあさんの話を遮り、会計をお願いする。
「おいおい、お兄さん。もう帰っちゃうのかい? 話はこれから面白くなるんだよ? あの時はねえ~、私がそこの通路で暴れる客に言ってやったんだ。『ここから出ていきな、このすっとこどっこい』って塩をぶつけながらね」
「すごいですね~」
「ところがさ~、その客は根性悪だったんだい。こんなひ弱なおばあさんを睨みつけてだよ? どんどん近づいて来るわけさ」
「あ、あの…、おばあさん。申し訳ないんだけど、俺これから大事な用事あるんですよ」
「何だい。早く言いなよ。話の続きは今度してあげるから、早く行っといで」
「すみません。ご馳走さまでした。相変わらずうまかったっす」
「まだおいで」
 俺はコマ劇場の中にある『フライキッチン 峰』を出た。背後からおばあさんの鋭い視線を感じる。きっとあの勢いでもっと話していたかったんだろうな……。
 まあしょうがない。俺にはこれから裕美と逢い、あの時のけじめをつけなきゃいけないんだから。
 コマ劇場内の入口には寿司屋がある。あいつ、腹減っているかもしれないしな。俺は特上寿司一人前をおみやげで握ってもらった。
 待ち時間五分前に『モーニング抜きっ子』へ到着する。
 待機室へ行くと、タバコに火をつけてボーっとテレビを眺めた。
 もうじき裕美に逢えるのか……。
 心臓の音が大きくなっているのが自分でも分かる。
 横に座る四十代後半のオヤジは、口を半開きにしたまま左手小指でハナクソをほじっていた。こんな奴のチンチンをくわえなきゃいけない商売なんて、本当に大変だよな。
 斜め向かいに座る二十歳半ばの男は緊張をしているのか、あちこちキョロキョロ見て落ち着きがない。股間を見るとテントを張っていた。こういう奴がシャワーを浴びているだけで、我慢できずに出してしまうんだろうな。
「どうしたの、そのお寿司?」
 隣の中年オヤジが声を掛けてくる。きっと退屈だったのだろう。
「いや、さっき食事したばかりなんで」
「ひょっとして店の子にプレゼントするつもり?」
 からかうように笑うオヤジ。
「何だっていいじゃないですか」
「食べ物ぐらいじゃ風俗嬢は釣られないよ?」
 何をこの馬鹿、勝ち誇っているんだ? だんだんイライラしてきたぞ。
「あのですね…。俺もあなたも金を払っているから、ここにいる訳なんですね? でも別に俺はあなたにお金を出してもらった訳でもないし、知り合いでも何でもない」
「く、口の利き方を知らん奴だな。これだから最近の若いもんは……」
「おい、できれば怒りたくねえんだよ? せっかく猛獣が静かに大人しくしてんだ。檻の中へ悪戯に手をつっ込むと、噛み千切られちまうぞ?」
「す、すみません……」
 そんなにすぐ謝るぐらいなら、はなっから調子なんてこかなきゃいいもんを。
 斜め向かいの若い兄ちゃんは、俺と一瞬だけ目が合うと、すぐに視線を逸らしていた。
 俺は風俗独特のこんな雰囲気がとても嫌いだった。

 非常に時間が経つのが遅く感じる。こんなに遅く感じたのは、今までで初めてかもしれない。
 何冊の週刊誌や雑誌を手に取っただろう。それだけ俺が何も内容など見ず、パラパラめくっていただけか。
 そろそろ呼ばれる時間が来る。
 もうじき裕美に会える……。
 俺がいきなり客としてこの店に来たら、彼女はどんな顔をするのだろうか? 反応を考えると正直怖かった。
 このまま会えずにまた悩む。その状態で仕事をし、毎日を意味もなく過ごしていくのは嫌だった。ここまで来たんだ。もう腹をくくるしかない。
「お客さま、大変お待たせ致しました。ご案内いたします」
 ひ弱そうな細い体のメガネを掛けた店員が呼んでいる。俺は立ち上がり、店員のあとをついていく。膝がガクガク小刻みに震えていた。何を俺は震えているんだ?
 待合室から出て少し歩くと、通路に下品な白いカーテンがひかれている。店員がカーテンに手を掛けた。
「はい、お待たせしました、モモさんでーす」
 声と同時に店員はカーテンをひく。
「……!」
 俺の目の前に一人の女が立っている。
 目の前で現れたモモという源氏名の女。間違いなく由美がそこにいる。
 動揺を抑えるのにひと苦労だ。
 裕美の顔をジッと見る。
 やっと逢えた……。
「りゅ、龍一……。ど、どうしてここに……」
「……」
 何か言おうとしても、何も頭の中に言葉が浮かばない。裕美の顔だけをジッと見ていた。
 横で店員が、不思議そうな顔をしている。
「何かありましたか、モモさん?」
「ううん、何でもない。知り合いだったので、ちょこっとビックリしただけ」
 彼女もいきなり俺の出現に、動揺しているようだった。
「とりあえず部屋に行こう……」
 お互い無言で暗く細い通路を進み、九番と書いてある部屋に入る。
 裕美はベッドに腰掛け、俺を見つめた。
 俺はどうしていいか分からずに、その場で固まっていた。
 突然、俺の携帯電話が鳴り出す。
 バネ仕掛けのように体を動かし、携帯電話を手にとる。着信は友香からだった。でも今はそれどこじゃない、バイブに切り替え、そのまま携帯を放っておく。
「出ないでいいの? あんたの携帯ってほんとよく鳴るわね?」
「ああ……」
 何というバツの悪さだろうか。俺はしばらく携帯電話を握ったまま、その場に立ち尽くしていた。
「そんなとこ立ってないで、座りなさいよ」
「あ、ああ」
 彼女に言われるまま、ベッドに腰を下ろす。
「あれから一度もあなたから連絡はなかったわ」
「そうだな」
「まあ私もしなかったけどさ」
「……」
「何をしにここへ来たの?」
「……」
 何て答えたらいいか分からなかった。黙っておみやげの寿司を渡す。
「何よ、これ。どういうつもり?」
 もっと喜んでくれるかと思った分、ショックだった。
「お腹が減っているかなと思って」
「私がケチだから食事もしていないと思ったの?」
「そんな風には思うはずないだろ」
「じゃあ何よ、私を笑いに来たの? 風俗嬢だからってどうせ小馬鹿にしてるんでしょ? 何とか言いなさいよ」
「馬鹿になんかしていない」
「じゃあ、何しに来たのよ?」
 裕美が俺を睨んでいる。
 その視線に耐え切れず、下をうつむいてしまう。
 不意に目頭が熱くなり、涙が溢れ出そうになる。裕美だけには泣き顔を見られたくなかった。
 ベッドに涙の滴が一滴落ちる。
 何の為の涙なのだろう?
 やっと会えたという嬉しさからなのか、会うなり罵声を浴びせられた悲しさからなのか。
 いや、違う……。
 裕美にとって、俺の存在などまったく必要とされていない事を感じたからだ。目の前の景色が、涙によって次第にぼやけていく。
「黙ってないで、何か話しなさいよ」
「あ、あ……」
「何よ、男でしょ? ハッキリと言いなさいよ」
「逢いたかったんだ!」
「……」
「き、君にずっと逢いたくて…、い、色々考えてて……」
 我ながら情けない台詞だ。話しだすと、涙が止まらなかった。
「た、たった…、い、一日だったかもしれないけど、俺には君が、い、今までで…、さ、最高の、お、女で…、ホ、ホテルで、裕美が出てった時に、ずっと悩んだけど、ど、どんな形でもいいから…、あ、逢いたくて、俺にはやっぱり君が…、だ、大好きで……」
 裕美が手で俺の口を塞ぐ。見ると下を向いていた。
「もういいよ…。うん、もう言わなくていい……」
 とても寂しそうな顔をしている。でも声は、とても優しい声だった。
「裕美……」
「本当に馬鹿で、お人好しで、話す時、どもっちゃって……」
 彼女の言葉が、ズバズバと心に突き刺さる。どうなってもよかった。
 涙も気付けば止まっている。本当の事だから、何も言い返せない。
 裕美が言っている言葉は、全部俺に当てはまっているのだから……。
 心がコマ切れに切り裂かれていく。
 こうなるように俺自身、心の奥底で望んでいたのかもしれない。
「本当あなたみたいなダサい奴と、最初に出会って恋に落ちてたら……。私の人生も……。わ、私の人生も、少しはマシになってかもしれないね……」
「えっ……」
 裕美は上を向いたまま、俺に構わず話を続ける。
「私だって好きでこんなところで働いている訳じゃないの…。私は今、二十三歳…。十六歳の時に高校中退してさ…。中途半端だったんだ、私…。歳を誤魔化してキャバクラで働いてさ。でもね、お店ではずっとナンバーワンだったんだよ。みんな私の事可愛い、綺麗だって言ってくれて、欲しい物だってちょっと甘えれば、すぐ手に入った…。十七歳の時、男から見ても格好いいなって言われる奴と知り合って意気投合して同棲しだしてね。当然、親にも勘当されたわ…。でも私は構わず彼に夢中になって尽くして貢いだわ。馬鹿な女だって言われるかもしれないけど、それでも私は幸せだったし、満足だった。十八歳の時、その彼の子を妊娠して……。私ね…、こう見えても四歳の可愛い娘がいるんだ…。子供を生んだって、彼は籍を全然入れてくれなくて、してくれた事と言ったら結局、三千万の借金を私に押し付けて…、娘を残してさ…。気が付いたら私と娘の前から消えちゃった…。もう借金の追い込みが凄くて、私、娘にご飯も満足に食べさせてあげられなかったんだ。私は今まで、中途半端にチャランポランに生きてきちゃったから、女のクセに料理も、全然作れない…。三年前、実家に頼り、親に頭下げに行ったんだ。でも私って勘当されているでしょ?」
 裕美は淡々と自分の事を語り続けている。
「……」
「おまえみたいな奴に子育ては無理だ。娘だけは面倒見るって、取り上げられちゃって…。家から放り出されちゃった……。それから何回も連絡して、会うだけでもいいからってお願いしても、結局一度も会わせてもらえなかった…。そんな私は、風俗でお金を稼ぐしかなかった…。金、金って汚い女かもしれないけど…、それでも早く借金を返して、娘の顔だって見たかった。一日でも早くあの子と一緒に暮らしたいんだ…。電話してもすぐに切られてしまい、娘の声すら聞けないし…。最初は三千万だったけど凄い利息がついちゃって、なかなか借金も減らないし…。最初龍一の金の遣い方を見て、ズルいけどこの人がいれば、一気に借金返せるかなって思っちゃったんだ。私は娘に会いたい一心で、何て言われようとお金を稼ぐしかないの! 私は女だから、それを武器にするしかなかった…。やっぱり私は最低な女だけど、それでもお腹を痛めた子だから、せめて一緒にいたいんだ…。私、娘が一歳の時から顔すら見てないんだもん…。でも…、そのせいで龍一の事、ずいぶんと傷つけちゃったんだよね? ごめんなさい…。ほんとにごめんね…。いくら謝ったって駄目だよね……」
 裕美は話し終わっても、ずっと上を向いたままだった。頬を伝う涙がより一層彼女の美しさに華を添えている気がした。
 俺の目から大粒の涙が大粒のように流れ落ちる。何て声を掛けていいか、何も考えつかない。三千万円の金。今の俺にすぐ用意できるような金額ではない。
「……」
 いつだって俺は、格好悪いキャラクターだ。
「たくさん傷つけちゃってごめんなさい。私にできる…、龍一にしてあげられる事って言ったら、この体ぐらいしかない…。龍一の好きにしていいよ……」
 無意識に俺の右手が動く。
 パシンッ!
 生まれて初めて女の子を平手とはいえ、殴ってしまった。
「ゆ、ゆ……」
 声がうまく出ない。
 俺は自分の顔面めがけて思いっきりパンチで殴った。気が治まらずに二発、三発と思い切り殴った。痛みで気が遠くなりそうだった。鼻血が出てくるのが分かる……。
「叩いてしまい、ごめん…。う、生まれて初めて女の子を殴ってしまった。お、俺は……」
 もう一発自分の顔面にパンチを入れる。
「……」
 今だけは、どもりながら話をしたくなかった。鍛え上げた自分のパンチは痛かく重かった。でもこれでもう大丈夫だ。俺がいつもの俺でいられる。
 裕美は下を向き、肩を震わせていた。
 深呼吸をしようとしても、鼻血のせいでうまく呼吸ができない。俺は大きく口を開け、辺りの空気をゆっくり吸い込んだ。
「俺がおまえをそんな状態なのに抱きたいって思っていると、本当にそう思って言っているのか! 馬鹿にするな! 俺は君がそんな状態なのに、何にも言ってやる事すらできない情けない男だよ! でもね、裕美の悲しみをちょっとは理解しているつもりなんだ! お願いだから、自分をそんな粗末にしないでくれ。俺は、君が大好きなんだ。そんな君を見るのは絶対に嫌だ。笑顔のほうが絶対に似合う。借金、あとどれくらいか分からないけど、俺の貯金百七十万くらいあるから使いなよ。無駄遣いばかりしてきちゃったからさ。結構稼ぎはいいほうなんだけど、全然貯まっていないんだ。色々事情を聞いちゃって、こんな事言うのも変だけどさ。それでも俺は、君が好きだから…。できればずっと君と一緒にいたい…。それに力になりたいんだ!」
 自分のすべてを投げ出して話したのは、生まれて初めてかもしれない。
 気がつけば、裕美は俺をジッと見ていた。意思の強い目。でも、その目の中に天使のような優しい光が宿っている。
「あ、ありがとう…。すごく嬉しい…。ほんとに嬉しい……」
「大変かもしれないけどさ、俺と一緒に……」
 話している最中に、裕美は俺の鼻血をぬぐってくれる。それから顔を近付け、優しくキスをしてくれた。
 全身が痺れるようなソフトなキスだった。
 しばらくその状態でいたが、やがて裕美から離れた。
 顔をゆっくりと見上げる。彼女の綺麗な顔に、俺の薄汚い鼻血がついていた。
「裕美、顔に俺の鼻血が……」
「ありがとう。元気出たよ」
 ニッコリと微笑んでいる裕美……。
 まるで天使が微笑んでいるように見える。
「裕美……」
「龍一の気持ち、本当に嬉しい。でもね…、私は甘えちゃいけないんだ……」
「俺がいいって言ってるんだから、気にするな」
 嘘偽りのない本心だった。
 自分が言った台詞で、これから大変な苦労が待ち受けているのも承知の上だ。でも裕美がそばにいてくれるなら、いつだって俺は、きっと頑張れる。
「私がね…、自分でしちゃった事なの。だからね、自分でケリをつけないといけないの。もうちょっと龍一には、早く出会いたかったな…。でもね…、娘の事が私には第一にどうしたって考えてしまうの。今は龍一もそう言ってくれるけど、そういうのって絶対に堪えられないものなの……」
「絶対に堪えてみせる!」
 裕美は優しく首を横に振る。目を閉じながら……。
「言ったでしょ? 私は娘の事を第一に考えるって…。本当にあなたは優しくて、暖かくて…、私を包み込んでくれた。龍一に会えて幸せって、今はハッキリ言えるよ。私なんかよりも…、もっと大事な、ううん…、もっと素敵な子がこれから絶対に現れるよ」
 納得できなかった。彼女の言っている意味が理解できない。
「俺は君が…、おまえがいいんだ」
「私はこんな女だけど、これでも母親なんだ…。最低の母親かもしれないけど、あの子の事しか考えられないの…。最初に風俗という職業に入った時は、お客さんのおチンチンをどうしても抵抗があって、口に入れられなくてね…。毎日毎日仕事終わってから泣いてたな…。でもね、あの子の事を考えると、母親だから強くならないとって思って…、お金の為に割り切って、その内この環境に慣れてきて…。ハッキリ言って、今の私なんて自分でも大嫌いだよ。でもあの子と出来る限り早く、私と一緒に暮らせるようにって思うと、何でも平気になるの。女は母親になると強くなるって言うでしょ? あれ、ほんとなんだよ」
 涙が止まらなかった。俺はベッドに突っ伏して思い切り泣いた。やるせない想い。自分がいくら望んでも駄目なものは駄目なのだ。それが分かったから泣いているのかもしれない。
 そんな俺の頭を裕美が優しく撫でてくれる。
 とても心地良かった……。
 自分が小さいの頃、よく母親にこうやって撫でられたっけ。ヒステリックに虐待もされた。だけど、もっと小さい頃は可愛がってもらった。よく覚えていないけど、幼い頃の俺の写真は、そんな風に写っていた。
 子供の頃に返ったような気がする。
「あなたは他人の事を思いやって涙を流せる人。優しくて、素晴らしい人なんだから…。これからだって、絶対に頑張っていけるよ…。私が保証する」
 泣きっ面のまま、顔をあげた。
 裕美は力こぶを作ってガッツポーズを取り、優しそうな笑顔で俺を見ている。自分とは居場所が違い過ぎるのを痛感した。
 もうちょっと、俺に力があったら……。
 自分に対して、とても悔しかった。
「ひ、一つ、聞きたい事があるんだ」
「なーに?」
「も、もしもだよ。裕美が子供産んでなかったら、母親じゃなかったら…。俺と、付き合ってくれたかい?」
 彼女は意地悪そうに笑うと、真剣に俺を見つめてくる。
「人生にね…。もしもは…、ないの……」
「そ、そんなのは分かってる。で、でも聞きたいんだ。俺が入り込む隙間がないのは分かった…。だ、だからその言葉を聞いて、こ、今後の生きる糧にしたい!」
「馬鹿っ…、私みたいな女にそんな事、言わせないで…。今の私には、龍一と出会えて良かったとしか…、言えないんだ…。ごめんね」
「じゅ、充分だよ。ありがとう。これ……」
 俺はモモと名前の入った名刺を裕美に手渡した。
 彼女と俺を繋いでいた一枚の名刺。
 もうこれで、彼女に会う事はないだろうと本能的に感じていた。
 自分自身にケジメをつけないと駄目なんだ。
 本当に大好きだった裕美と、終止符を打つ事になるなんて……。
 悲しみと清々しい気持ちが、頭の中でグチャグチャに入り混じる。
「ほ、ほんとに…、ありがと…う……」
 ヘルスのプレイ時間が来るまで、俺は『モーニングぬきっ子』の中にあるモモの部屋で、恥も外聞も捨て、思い切り泣いた……。

 

 

5(真・進化するストーカー女編) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

心の中を常に冷たい風が吹き付ける。目の前が真っ暗だった。どうやって歌舞伎町の街並みを歩き、電車に乗って自分の部屋まで帰ったのかすら覚えていない。両膝を抱えたまま...

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