岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド

自身の頭で考えず、何となく流れに沿って楽な方を選択すると、地獄を見ます

07 鬼畜道(始めの一歩編)

2023年03月01日 13時30分57秒 | 鬼畜道 各章&進化するストーカー女

 誰かから連絡がなければ、部屋に籠もり執筆作業。そんな日々を過ごしながらいると、三村が突然家を辞め、俺に継げと言い出す。そんな騒動に巻き込まれ、日々悩み、真剣に考えるようになった。

 二千十年一月二十六日。原稿用紙で二千百七十八枚。

 また一人、男性従業員を家では雇ったようだ。

 一月二十七日。原稿用紙で二千三百八十二枚。

 駐車場で三村を見掛けたおばさんのユーちゃんは、「何だか車のトランクに商品券だとか金目のものばかり必死に詰め込んでいたよ」と呆れながら言っていた。

 一月二十八日。原稿用紙で二千五百四十五枚……。

 この日、伊橋さんが言った口約通り、あれだけ家の中をメチャクチャにした物の怪は、家から去った……。

 あれ以来、俺に継げという話はない。親父も新しい従業員が二名入ったから、これでもう問題ないぐらいに思っているのだろう。

 まあ俺は、どちらにせよしばらく様子見だ。自分から動くとロクな目に遭わない。

 今は作品を執筆しているのが本当に楽しい。乗りに乗っているとは、こういう事を言うのだろうな。

 自分の生きた軌跡をふと残したくなり、『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』をこうして書き綴っている。賞へ応募するとか、誰かに読ませるとかでなく、自分自身の為だけに書く。

 そんな作品が一つぐらいあったって別にいいだろう。これだけ書いているのに、まだ内容は、歌舞伎町時代である。一度簡単に自分の過去を振り返ろう。

 家の目の前にあった映画館と坂井との出会い。

 虐待された力なき幼少時代。

 ピアノの先生の優しさ。

 家を出て行ったお袋。

 遊び呆ける親父。

 仕向けられた三村との出会い。

 福山先生との出会い。

 惨めで暗かった中学時代。

 先輩最上さんとの出会い。

 喧嘩に明け暮れた高校時代。

 亀田先生との出会い。

 瑞穂との出会い。

 家に怒鳴り込んできた三人の人妻。

 先輩長谷部さんとの出会い。

 友人ゴッホとの腐れ縁。

 お袋と長年のけじめ。

 社会人初の自衛隊のえげつない生活と、香織との出会い。

 車の教習所合宿の気ままな生活。

 原一探偵事務所の激動の日々。

 広告代理行で数々の思い出。

 美千代との出会い。

 横浜八景島シーパラダイスでの一人暮らし。

 大和プロレスへの挑戦。

 先輩月吉との出会い。

 整体の先生との出会い。

 自衛隊同期、二宮との再会とボクシング。

 チョモランマ大場社長、ヘラクレス大地さん、伊達さんとの出会い。

 居場所を探したホテル時代。

 野中さんとの出会い。

 二人の女子高生との出会い。

 未来、美加との出会い。

 彷徨い辿り着いた新宿歌舞伎町時代。

 最上さんの結婚。

 裏稼業、鳴戸にやらされた死闘とヤクザのスカウト。

 新しいゲーム屋時代。

 外国人ビルマとの出会い。

 誉志子との出会い。

 声優、郁子との出会い。

 乱れた女生活と洋子との出会い。

 チョモランマ大場社長の死亡。

 外国人エリカとの出会い。

 ヘラクレス大地さんの死亡。

 三村、看護婦騒動。

 総合格闘技での現役復帰。

 野中さんの死亡。

 レズ女とのひと騒動。

 出会い系火の国ストーカー女事件。

 ミサトとの出会いと別れ。

『ワールド』吉田との確執と店の崩壊。

 人間を飼う男、北方との対立。

 長谷部さんの『とよき』立ち上げ。

 秋奈との出会い。

 捧げるべくして描いた絵。

 ピアノを捧げたかった発表会。

 地元ストーカー女騒動。

 やるせなさと彼女へ捧げる想いで書いた小説。

 運命が分かれた百合子の誕生日。

 歌舞伎町浄化作戦での逮捕。

 風俗業で坂本と因縁の仕事。

 西武新宿線でのトラブル。

 我が子をおろした地獄の日。

 はなっから穴の開いていた沈没船。

 家の目の前の映画館の閉館。

 最後の裏稼業、長谷村との秋葉原。

 自身に写った心霊写真から、群馬の先生との出会い。

 インターネット『新宿の部屋』開始。

 自殺未遂錯乱女とストーカー女の脅威。

 美鈴、めぐみとの浮気。

 愚直な編集会社時代。

 ヤクザより性質の悪いSFCG。

 ピアノの先生との二十数年ぶりの再会。

 家のトラブル、初めて知った親父と三村の入籍。

 四千万円と支店土地登記問題。

 地元川越にて『神威整体』の開業。

 ミサトの紹介でミクシィ開始。

 百合子との様々な確執と別れ。

 龍也の結婚。

 みゆきとの出会い。

 患者に手を出す乱れた日々。

 飯田との再会。

 秋奈と感動の再会。

 神威流三点療法と祝詞。

 整体を潰さない為、潰さない為システム管理の副業へ。

 処女作『新宿クレッシェンド』の受賞。

 様々な患者を口説く乱れた性生活。

 数々の裏切り行為による『神威整体』倒産。

 半ばヤケクソで総合格闘技へ七年半ぶりの復帰。

 再度火の国ストーカー女上陸騒動。

 長谷部さん『とよき』の立ち退き。

 出版社との確執。

 人間不信と『パンドラの箱』。

 牧師妻、葵との不倫。

 自殺未遂含んだ三角関係の相談。

 大日本印刷時代。

 プライドを捨てる努力。

 携帯電話会社ドソアでの苦情処理。

 坂井の死亡と約束。

 龍彦のできちゃった結婚と店の準備。

 失業保険生活。

 家業継承問題。

 詩織との出会い。

「ふう……」

 これまでの人生をざっとまとめると、こんな感じか。こう見ると、ずいぶん色々な出来事を飛ばして執筆しているな。とりあえず勢いに任せ、ただ書いてきたけど、これでいいのかな? 自分で分かっていれば、あとで手直しなどいくらでもできる。

 どんどん書いて、早く今の自分の時代まで作品を追いつかせたい。

 目がチカチカしてきた。まだ大丈夫…、まだ書き続ける事ができるはず……。

 指先と目に全神経を集中させ、頭の中で過去の映像を映させる。今の俺にスランプなどない。これだけ経験をしてきて、それを人に話すように文字を書いていけばいいだけなのだ。ネタにはまず困らない。

 ノンフィクションを書くという事が、こうまで楽で楽しい作業だとは夢にも思わなかった。

 物語を捻る必要性もない。

 構成など、事実をありのまま書くだけなのだから、プロットなど考える必要もない。

 俺の書く作品を読んで分からない人間、何も感じない人間は、本当に平和ボケして、何も考えずにただ生きてきたのだろう。

 いや、もうそういった周りの評価すら気にする必要もないんじゃないか? だってこれは俺自身が望んでやりたい事なのだから……。

 一語一句、あえて声に出しながらキーボードを打つ。こうする事で誤字脱字を少しはなくす事もできるだろうし、文章のおかしな部分にも気がつく。

『新宿クレッシェンド』で賞を獲った時は、酷い言われようだったものだ。初めて書いた作品だし、文字を人差し指で一つ一つ探しながら書いていた時代なのに、「作文と変わらない」という感想があったなどと、あの出版社サイマリンガルは会社のホームページにワザと書いていた。当時は苛立ちを感じ、激しく怒った。それなら何故、俺の作品などをグランプリに選んだのだ? けなすぐらいなら、賞なんて与えなければいいものを。素直にそう思ったからだ。

 サイマリンガルは本当に不思議な会社だ。大々的に宣伝を打ち、授賞者には賞金五十万円と出版と謳いながら、これといった宣伝もせず、俺が客寄せパンダとして注目された総合格闘技の試合を無視するのだから。本を世へ出すのに、どれだけの費用が掛かるか分からないが、あの会社は一体何をしたかったのだろう? 二年経って印税の事すら触れてこない現実。当然払うつもりはないはずだ。世間から「あの会社って馬鹿? 頭悪いね」と言われるような行動をするのか、今でも不思議に思う。

 まああの一件で、俺は地獄を見て、苦渋を舐め、作家としての自信すら失い掛ける。だけど、こうして小説を諦めずまた書くようになった。そのおかげでサイマリンガルがどれだけ酷かったのか詳細を文字にする事ができる。考え方一つで、すべてが俺の作品のネタになってしまう。そう思うと、執筆しながら笑っている自分がいた。

 あれから六年。自分でも把握できないほどの作品を書き続けてきた。だからこそ自分で文章表現がどんどんうまくなっていく事に気付く。

『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』……。

 今俺は、世紀の傑作を書いているって自負がある。

 人にこの台詞を言えば、小馬鹿にされる事ぐらい分かっている。でも構わない。自分で納得したものを書かないで、どう面白い作品が書けるというのだ? 昔、新日本プロレスの獣神サンダーライガーが「プロレスをしていて楽しいよ。じゃなきゃ、どうやって客を楽しませるんだ?」と言っていた台詞を思い出す。自分が書いていて楽しいからこそ、読者にだってその熱が伝わるはずなのだ。

 読み始めたら止まらない作品を。ずっとそれを念頭に入れ、小説を執筆してきた。

 今、ミクシィで知り合った詩織さんにだけ、作品を読ませている。この試みは実験だ。文学漬けで生きてきた彼女が読んで、どう思うか? いや、それよりも、どのような感想を言い、どんな行動をするのか? そこに興味があった。

 軽く伸びをして、ミクシィを立ち上げる。

 あ、早速詩織さんからメールが届いているぞ。

『二千十年二月一日。

 今、三百ページぐらいを読んだところです。

 本当、周りの方に可愛がってもらってきたから、人間不信とかにならなかったんですね。おじいちゃん、おばあちゃんの愛って、無償の愛に一番近いですよね。

 お母さんも、もしかしたら家で居場所がなくて、精神的に病んでいたのかもしれないですね。鬱病とか、育児ノイローゼ、パニック症候群…。そういう心の病だったのかもしれません。

 女の人って産後は、すごいホルモンバランス崩れて不安定になるらしいです。そこに旦那さんに対する不信とか、旦那さんの家族に対する不信が重なって、全部が自分の敵みたいに見えてしまったんじゃないでしょうか。

 子供を虐待するって、ある意味、自傷行為と一緒ですよね。それだからといって、虐待が許される訳ではないんですけど……。

 ところで、風神さんと雷神さんのお話がちょいちょい出てくるんですが、あれ、いらないんじゃ~? せっかくのリアルな世界観が作り物っぽくなって、興醒めしちゃいます。ないほうがきっといいですよ! 詩織』

「……」

 確かに冒頭にある風神と雷神の会話のシーンは、リアルな世界観で見ればいらないだろう。処女作『新宿クレッシェンド』を書く際、俺は歌舞伎町の物語を作ったが、一つだけリアルなものを入れた。それは俺の幼少期受けた母親からの虐待である。それを主人公赤崎隼人へプレゼントしたからこそ、リアリティが出たのだ。

 何故あの作品が賞を獲れたのか? どこが受けたのかは分からない。でも、歌舞伎町の話でなく、主人公の生い立ちに共感し、感動してくれたと言ってくれた読者は多い。

 二千六年になって初のホラー『ブランコで首を吊った男』を書き上げた俺は、すぐ次の作品へと取り掛かった。クレッシェンドの虐待をよりリアルなものに……。

 それが自伝の『昭和の僕と平成の俺』だった。これは俺の幼少期をテーマにした作品であり、小学三年生の終わりまでを書いてある。

 これを六日間で完成し、自分で印刷して一冊の本を作ってみた。それを近所のおばさんへ見せたところ、涙目になって「ごめん…、おばさん、龍ちゃんの小さい頃から知っているから、これは読めないわ……」と泣いてしまった。

 リアルな俺を昔から知る人間には、残酷で凄惨な作品にしか写らなかったのである。

 当時自分で過去を思い出しながら書き、気づけば泣いていた初の作品だった。

 現実味が欠けると分かっていながら何故、雷神と風神の会話を入れたのか? それには数年前に、話を遡らなければならない……。

 家の目の前にあった映画館。そこで働き、幼い頃の俺をたくさん可愛がってくれた坂井さん。もう数年前にその映画館は閉館し、隣の三井病院が建物ごと買い取ってしまった。映画協会から引退し、すっかり年を取った坂井さんと偶然道端で会った事がある。

「お久しぶりです、坂井さん」

「おお、龍ちゃんか~、大きくなったなあ」

 白髪頭になっていた坂井さんは、俺をつま先から頭までゆっくり眺めると、目を細めて微笑んでくれた。この人が毎日のようにタダで映画を見せてくれ、コーラやアンパンをくれたからこそ、お袋の虐待に遭っても、そこまでいじけずに済んだのかもしれないな。子供では意味の分からない映画まで見せられたけど、当時幼かった俺の目にはスクリーン上で動く昭和の良き時代の名俳優の姿を脳へ記憶させていたのだ。

 例えば『野生の証明』の高倉健。彼は背中にグッタリとしたデビューしたての薬師丸ひろ子を背負うシーンを意味も分からず、ジーっとスクリーンを眺めていた。薬師丸ひろ子が言った「お父さん、怖いよ。誰かがお父さんを殺しに来るよ」という台詞を頭の片隅で今でも記憶している。

 台詞で一番覚えているのが、『人間の証明』の松田優作だ。「母さん…、僕のあの帽子…、どうしたでしょうね。谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。母さん…、あれは好きな帽子でしたよ」。そんな台詞を幼稚園だった俺は、幼稚園の先生にいつも真似して言っていたと言う。この当時、自分の事をまだ僕と呼んでいた頃だ……。

 親父が昔よく一緒に遊んでいたという沢田研二が出演した『魔界転生』。天草四郎時貞役の沢田研二が言う「エロエムエッサイム、我は求め訴えたり……」の台詞を聞き、小学生だった俺は、怖くてスクリーンから思わず目を離したものだ。伊賀の霧丸役の真田広之とのキスシーンにはゾッとしながら顔を覆い、柳生十兵衛役の千葉真一とのラストシーンで首を切られ、自分の首を持ったまま「アハハハ」と甲高い声で笑う沢田研二の顔がとても怖かったのは、未だ脳裏にこびりついている。昔「何故今は一緒に遊ばないの?」と聞くと、親父は「金が掛かり過ぎる」と言っていたのを思い出す。

 アニメでは断トツに『銀河鉄道999』が大好きだった。毎日何回もこの映画を見て、ゴダイゴが唄う歌を聴いて鳥肌が立つほど痺れ、すべてのキャラクターの台詞を当時暗記したものだ。金髪の謎の美女メーテルと鉄郎の空飛ぶ列車へ乗った宇宙への旅は、幼かった俺に希望と夢を与えてくれた。

 角川アニメ第一弾『幻魔対戦』。内容云々でなく、この映画で使われたキースエマーソンの『地球を護る者』。この曲を聴きたくて、何度も見た映画だった。CD化されていないこの曲を先輩の最上さんにお願いしてレコードからデータを吸い出してもらい、総合格闘技時代の俺の入場テーマ曲として使用するぐらい大好きな曲である。

 真田広之主演の『吼えろ、鉄拳』や『里美八犬伝』、『龍の忍者』などは、本当に興奮しながら何度も映画館へ足を運んだ。

 ジャッキーチェンの『ドランクモンキー酔拳』や『スネークモンキー蛇拳』で心を奪われた俺たち三兄弟は、家でいつもカンフーごっこをして、真似できるトレーニングがあれば、必死に真似てみた。こういう風になりたいと憧れだったジャッキーチェン。今でも大好きな映画俳優である。

 そして松本清張原作の『鬼畜』……。

 緒方拳主役のこの映画は、家から徒歩一分もしない場所がロケ地だった。俺たちと同じ三兄弟の子供たちが殺され、捨てられ、崖から落とされるシーンは可哀相で見ていられなかった。俺の執筆した『ブランコで首を吊った男』にも出てくるブランコの逸話。今ではもうなくなってしまったそのブランコが、その映画の中には出てくる。一番強烈な印象があり、脳裏に残っている映画だった。

 俺が『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』とタイトルをつけたのも、この『鬼畜』を意識しての事である。いつの日か、誰かに「あなたの作品は、松本清張をもう超えた」と言ってほしい願望があった。

「こんなに大きくなるとはなあ……」

 坂井さんこそ、そんなに老け込んじゃって…。口には出せなかった。

「俺、チョモランマ大場社長のところの大和本プロレスに当時行ったんで、その時トレーニングして体を大きくしたんですよ」

「そうか、そうか……」

「今、坂井さん、どうお過ごしなんですか?」

「俺かあ…、もう年だし、隠居だ…。あとは静かに死ぬのを待つだけだ」

 そう言いながら坂井さんは遠くを眺め、少し寂しそうな表情をした。

「……」

 とてもせつなく悲しい気持ちになる。もうあの映画館はない。坂井さんは自分の死期を悟ったかのように、人生の目的をなくしているのではないか……。

 こんな俺に何ができる? どうしたら喜ばせる事ができるのだ。

「坂井さん……。俺、今、小説を書いているんですよ。小さい頃から目の前にある映画館で映画を見て、育ちました。坂井さんに可愛がられながら…。そんな俺の小説がですよ…。もし、いつか賞を獲って、そしてその作品が映画化したら、どう思いますか?」

 坂井さんの表情が明るくなるのを感じた。

「龍ちゃんが小説をか~…。映画化? 何だよ…、そんな事をされたんじゃ、まだまだ死ねねえなあ……」

「いつなんて約束はできませんが、頑張っていつの日か…。だから楽しみにしていて下さい、坂井さん……」

 幼少時代からの思いを胸に秘め、そしてこれまでの人生を支えてくれた人に対し、深々と心を込めて頭を下げた。

 二千六年六月十一日。まだ『新宿クレッシェンド』が賞を獲る、二年ちょっと前の出来事である……。

 二千八年八月三十一日。念願の処女作で賞を獲れた。

 そして整体は辞めるが、総合格闘技の試合にも出場する事が決まる。行く先の未来はとても明るく見えた。

 しかし、試合にも負け、嘲笑罵倒され、俺の心はかなり深い位置まで暗く沈み、何もできなくなった。不倫とは言え一人の女に救われ、癒され、社会へ復帰するようになる。

 でも、目的意識が定まらないまま時間だけが悪戯に過ぎた。

 二千八年九月三十日……。

「まだまだ死ねねえなあ……」

 そう言ってくれた坂井さんは、病気で苦しみながらこの世を去ってしまう。

 間に合わなかった……。

 そんな強烈なショックを受けると同時に、自分の愚かさを呪った。本当に俺は大馬鹿だ。自分が落ち込んでフラフラしている間に、亡くなってしまうなんて……。

 俺はおじちゃんと一緒に坂井さんの自宅へ向かう。

 安らかな坂井さんの死に顔。おじいちゃんは、そばで正座して坂井さんの頬を叩く。

「おい、どうしたんだよ? 起きなよ。おい」

 まるで寝ている坂井さんを起こすような感じで呼び掛けている。おじいちゃんと坂井さんは、同じ商店街の会長、副会長コンビで過去、伊東四郎司会の『ザ・チャンス』に出場した事もあった。古くからの付き合いなのだ。平常心を装っているだけで、本当は心の底から悲しいのだろう。

 俺は遺体を目前にして、人目はばからず号泣した。いくら泣いたって遅い。もう、坂井さんは笑ってくれる事さえできないのだから……。

 もっとほかにやる事があったじゃねえかよ。

 何故、賞を獲った時、すぐに報告へ行かなかった?

 落ち込むよりも、傷つく事よりも、いじけているよりも、何よりも先に、報告をしなきゃ駄目じゃねえかよ……。

 ヘラクレス大地師匠を亡くした時、それから行動したって遅いんだと、痛いほど身に沁みて、あれほど自覚していたはずなのに……。

 残された家族に対し、何かできないだろうか? せめて罪滅ぼしの為に……。

「俺…、以前坂井さんに約束した事があります…。幼い頃からいつも可愛がってもらい、映画館のスクリーンを眺めながら、坂井さんがご馳走してくれたコーラやアンパンを食べながら大きくなりました。いつも二階の最前列の特等席で…。映画館がなくなって、二年前ぐらいに道端で偶然会った時、小説を書いているので、いつか賞を獲ってそれが映画化されたらどうでしょうか? そう言うと、坂井さんは目を細めて喜んでくれました…。今年の一月に賞を獲った作品は、全国の本屋さんに並ぶようになりました。坂井さんへ渡そうと思いながら、時間だけが過ぎてしまい、結局渡せたのが今日になってしまい、すみませんでした……」

 俺は泣きながら坂井さんの奥さんへ、『新宿クレッシェンド』を手渡した。坂井さんが亡くなってからこんな事をしても、本当に遅い。自分の馬鹿さ加減が嫌になった。

「龍ちゃん…、主人の為にそこまで悲しんでくれて、本当に…、本当にありがとう…。うちの人も、天国で喜んでくれているよ。本当にありがとうね……」

「映画館で俺が小さい頃上映した松本清張の『鬼畜』…。ロケーションも川越で、すぐ家から一分ぐらいの場所、つまりすぐその場所で、緒方拳がいましたよね…。未だに目に焼きついているんですよ、あの時の撮影風景が。まだ小学一年生か二年生の頃だったのに。俺、『鬼畜道』という作品を書いて、松本清張賞を獲りたいです。そして、いつになるか分かりませんが…、もう家の目の前の映画館は、なくなちゃったけど…、でも、いつか自分の作品を映画化できるように…、俺……、頑張ります……。坂井さん、天国で喜んでくれるでしょうか?」

『鬼畜道』という作品自体は、二千六年四月六日から二千七年十二月十二日の期間、原稿用紙三百五十七枚で完成させていた。主人公の神威龍一の幼少期から高校卒業し、お袋の元へ初めて向かい、離婚させるまでの話だった。

 でも、これじゃ何かが足りない。そう感じた俺は、もう少しこの作品は煮詰めなきゃいけないと感じていた。

「ありがとう…、本当にありがとう……」

 奥さんももらい泣きしながら、優しく俺の頭を撫でてくれた。その想い、勝手に背負わせていただきます。心で固く誓う。少しでも自分の背中をこうやって重くしたかった。

 そう格好をつけたかっただけかもしれない。泣きながら「ありがとう」と言ってくれた坂井さんの奥さん。今日は喪に服す意味もあり、部屋で作品を書こうと思った。

 その前に俺は何故、作品を書くのか?

 何故、小説を書き始めたのか?

 それによって俺はどうしたいのか?

 この『鬼畜道』を書く事によって、どうしたいのか?

 新しく一からの再チャレンジ。ならば色々な意味合いを考えてから書こう。俺は馬鹿だから、いつも後先考えずに行動してしまう傾向がある。

 考え事をしている最中、弟の関係で知り合いになった東大の教授の大ちゃんから電話があった。本を出したぐらいの時期から俺に興味を持ったようで、たまに会話をするようになっていた。

 俺は今日坂井さんという昔からお世話になった人が亡くなり、間に合わなかったという話をした。

「それは悔しいというか、歯痒さが残りますよね。では、龍一さん、何かどうでもいいような馬鹿なエピソードってないですか? 小説に関わる事で」

「小説に関する事でねえ……」

 大ちゃんに、初めて小説を書き終わった頃を馬鹿話してみる。

『新宿クレッシェンド』完成させた俺は、集英社へ電話をした。

「この度小説というものを書いてみましてね。よかったらおたくの漫画の原作にどうかなと思いまして。うーん、絵柄でいうと誰の漫画がイメージに近いかな~」

 当然集英社の対応は、「あ、あのー忙しいので…、ガチャン……」と切られてしまう。

 よく考えれば当たり前の話だけど、当事の俺は「おい、何をいきなりガチャ切りしてんだよっ! 俺は自慢じゃねえが、小学校五年の時から自分の小遣いでジャンプ買ってきたんだぞ? 人の話の途中でいきなり切りやがってよ。一体おまえらのその態度は何だ! もうジャンプなんか絶対に買わないからな!」と悪態をつき、こちらから今度は電話を切ってやった。

 そこまで話すと、東大教授の大ちゃんは腹を抱えて笑いながらも「いや~、龍一さんはすごいですね」と言った。皮肉で言われたものだと感じたが、彼はそうではないと言う。

「僕がすごいと指したのは、突拍子もなしにいきなり集英社へ電話をしてしまうそのパワーを言ったんですよ。ただ、それが正しいかどうかはどうでもよくて、それをその件では自分自身の為にそのパワーを使ったという点です。そのエネルギーをもっと別の方向で使ったら面白い事になると思いますよ」

「へえ、そういう見方もあるんだなあ」

「そう、小説を書くという事は、作品を作るという事。それには当然エネルギーもいります。龍一さんが毎日のように書いているブログの記事だってそうなんです。文字を書いているんですからね」

「確かにね」

「でもですね、人が書くという事は、生まれながらにして備わっていないものなんですね」

「……」

「分かり易く説明すると、誰かに教えられて、あとからついてきたものなんですよ。生まれたばかりの赤ちゃんは、寝る事しかできない。周りにご飯を食べさせてもらい、口を使う事を覚える。その後、人間に元々備わっている好奇心などが、生きていく上で様々な概念を植えつけて現在の自分ってものがいるんですね」

「そりゃそうだよね」

「では、そういった自然と身についたものを一つ一つ客観的に引っぺがしていく作業を自分で意識してみる。そうした事で生まれるというか、気付く事があるんですね」

「うん、そうかもしれないな……」

 十歳も年下なのに、何故か彼の話す事に頷いてしまう自分がいた。ただ野郎同士会話をしているだけなのに、俺は妙に納得して、しかも気持ち良くすら感じているのだ。

 本を出し、試合に負けたあとの最悪な期間、俺は一人の人妻と不倫関係になり自分を癒しつつあった。しかし、嘲笑され罵倒された時のイライラはいつまでも消えないでいる。

 この頃大ちゃんは、一つのアドバイスを言ってきた。

「例えば今年の五月頃まで龍一さんは、常にどこかイライラしていましたよね? 怒りというものは非常にエネルギーを使うもので、思い通りにいかないから余計イライラを考え、余計それで怒るという悪循環なんです」

「だからって何が言いたいんだ?」

「龍一さんは、僕と決定的に違う部分があって、それは書く事ができるという点なんです。だったらただ怒らず、何故自分が怒っているのか? それを文字にしてみたらどうでしょうか」

「そんなの作品になる訳ないだろ?」

「別に作品にするとか、人へ読ませるのが目的じゃないんですよね」

「ん、どういう事?」

「つまり、自分の怒りというものさえ、龍一さんは書く事によって自覚できると思うんですよね。これは僕じゃ、とてもできない事なんです」

 なるほどなと思った俺は、誰に見せるものでもない作品、いや、もやは作品とは言えないものを書いてみる事にした。こうする以外、他に方法など何もないような気がした。

 これは自分の醜い思いを綴ったもの。憎悪、葛藤、恨み。すべてのマイナス的な感情を文字へ代え、ひたすら書き続ける日々。

 ここだけは俺だけの世界。何を書こうと自由な空間なのだ。

 今まで書き溜めた文章をざっと読んでみる。

 醜い…。あまりにも卑劣な文字の羅列。しかしこれは俺自身が抱えたストレスであり、表に出さない怒りなのだ。

 何度『殺す』という文字を書いただろうか。もし、俺が何か罪を犯し、このパソコンを調べられたら精神異常者だと一発で判断されてしまうんじゃないか。そのぐらいえげつない内容が書かれている。

 この行為は時として、自己の感情を抑える方法としてはかなり適切である。これをしていなければ俺は、何人も人を殺していたかもしれない。書く事で自分の怒りの原点が何によって引き起こされるものなのか? 俺はそれに対し、どう怒っているのか? どうしたいのか? すべて正直に書き綴るのだ。

 何故、自分がこんなにもイライラしているのかを知る為に……。

 書いたものに対し、俺は『パンドラの箱』という名をつけた。

 そもそも『パンドラの箱』とは何か? 以前興味があり、ギリシャ神話を読んだ事があった。

 人間を作り、ゼウスの教えを破ってまで火を天界から盗み、人類に与えたといわれるプロメテウス。そんな兄の忠告を守れない愚弟エピメテウス。そして、その奥さんとなったパンドラ……。

 パンドラの箱には様々な説があり、まず箱でなく壷だったという意見もある。

 全知全能の神ゼウスは、プロメテウスに人間を粘土で作れと命令。プロメテウスは、せっせと人間を作る。できた人間の形にゼウスは命を吹き込み、「知恵を与えてもいいが火だけは与えるな」と再度命令した。

 何故なら人間に火を与える事によって神に近づくのをゼウスが恐れたから……。

 獣のような毛皮のない人間は寒さに震えながら生活。それを見ていられなかったプロメテウスは、ゼウスの怒りを買うのを承知で人間に火を与える事にした。

 当然ゼウスの怒りを買い、酷い虐待に遭うプロメテウス。

 そしてゼウスは人類に災いをもたらす為、『女性』というものを神々に作れと命じた。ヘパイストスが泥からパンドラの形を作る。アフロディテは美を与え、アテナは知恵をアポロンからは音楽と治療の才能を最後にヘルメスが好奇心と嘘を教えた。

 こうしてパンドラという人類初の女性ができあがる。パンドラとは『すべてを与えられた』という意味のようだ。

『絶対に開けてはならない箱』をパンドラに持たせ、プロメテウスの愚弟エピメテウスの元へ行かせた。

 以前、兄から「絶対にゼウスからの贈り物は受け取るな」と忠告を受けていたのにも関わらず、愚弟エピメテウスはパンドラを気に入り、結婚までしてしまう。

 兄プロメテウスの名前はプロ(先に)メテウス(考える人)の意味を持つ。逆に弟エピメテウスはエピ(後で)メテウス(考える人)と後悔の意味を持つ。

「自身の能力を他の兄弟に奪われた」と年中愚痴るぐらいのエピメテウスだから、仕方なかったのかもしれない。

 のちにパンドラからそそのかされエピメテウスは、『開けてはならない箱』を彼女と一緒に開けてしまう。

 その箱からは災いが放たれ、最後の残ったものは希望だと言うが、未来をすべて分かってしまう予兆だという説もある。

 これがギリシャ神話の『パンドラの箱』だ。

 俺が何故これにそんな名をつけたのか? 『開けてはならない箱』というものがあるならば、それを作る起因になった事も必ずあるはず。つまり、災いになるような負のものが詰まった『パンドラの箱』を作るには、この自分の怒りやストレスの原因となった醜い感情をすべて封じ込めればいい。自然とそう感じた自分がいたのだ。

 そうした事の結論から言えば、怒りの裏側にはコメディ要素が同居しているという事実に気付く。

 書く事によって整理された怒り。何故怒っていたのか? 誰に対しどんな事で怒っていたのかを自覚する事ができたのである。怒りという事実を消し、淡々と事実だけを人に話すとする。被害を受けた本人には怒りの感情しかないが、第三者から見れば、非常に滑稽で面白い内容になるケースもあるという事実に気がついたのだった。これは『他人の不幸は蜜の味』という言葉に非常に近い。分かり易く説明すれば、人の悲劇など他人から見れば、ただのギャグや笑いの対象でしかないのだ。

 イライラが収まり冷静になった俺が最初の作品は『ゴリ伝説』というコメディだった。

 抱いた女が望んだ『パパンとママン』の第三章『先輩』が何故原稿用紙三十二枚という短さなのに、五月九日から五月末まで掛かったのかと言うと、この『ゴリ伝説』をその間に書いていたからだったのである。五月十九日から二十六日の八日間で、俺は『ゴリ伝説』を四百八十九枚という長さを書き上げ完成させたのだ。

 これも怒りを文字にという、大ちゃんの助言があってこその賜物だ。俺は、年下の彼の言葉に導かれ、己のドス黒いものを浄化していた。こうなると年上とか年下といった概念自体どうでもいい事のように思う自分がいた。

 お世話になった坂井さんが亡くなった日の大ちゃんとの会話。

 もう一度整理してみる。

 何故、俺は小説を書き、賞を獲ると、坂井さんの奥さんへ言ったのだ?

 もちろんまた賞を獲りたいという気持ちがあるからこそ、賞へ応募するのだ。

 では何故、賞を獲りたいのか?

 一回じゃ認めてくれなかった自分をより多くの人間から認めてもらいたいからだ。

 ちょっとおかしいぞ? 別に認められるという方法なら、賞以外にも方法はあるはずだ。絶対に賞が必要ってほどでもない。

 おそらく賞とかそうする以前の問題なのだ。シンプルに考えればいい。

 何故、俺は小説を書き出したのか?

 インターネットや言葉を通じて俺は今まで、書く事で自己の浄化に繋がると言っていた。だがそれさえも違う。その前に多くの人間に俺って人間を認めてもらいたかったのだ。その方法としてプロレスへの挑戦や総合格闘技での戦い、そしてピアノの演奏、やがて小説の執筆と、認めてもらう為の方法として、これまでやってきたという事実に気付く。

 何だか少し楽になってきたぞ?

 じゃあ何故今、このタイミングで『鬼畜道』を出したのか?

 そんなの考える必要もない。亡くなってしまったけど、俺はお世話になった坂井さんを喜ばせたかったのだ、この作品で……。

 家の近所で撮影した『鬼畜』の現場を意味も分からず眺めていた俺。そのあとその映画を家の目の前の映画館で見た連鎖。そんな俺が大人になってから小説を書き始め、松本清張賞へ出すという行為。

 ちょっと調べてみよう。何々、松本清張賞の応募枚数は、原稿用紙三百枚から六百枚か。ヤバいなあ。もっと長くなりそうだし。

 まあそれで賞を獲る獲らないは二の次だ。もう、賞を獲るという行為さえ、どうでも良くなってきたなあ。

 そんな事よりも俺は深い悲しみに包まれた坂井さんの家族の為に、この作品を書きたくてウズウズしているのだ。

 一度は完成させたはずの『鬼畜道』。あのままじゃいけない。もう一度魂を入れて書き直さなきゃいけないって自覚していたからこそ、自然と奥さんの前でああ言ったのである。

 集英社へ突発的に電話してしまうエネルギー。

 七年近くのブランクものともせず、二十九歳で総合格闘技に挑戦したエネルギー。

 三十歳を過ぎてからピアノを弾きだしたエネルギー。

 思い返せば、どれもこれも同じような種類ものばかり。今まで自己顕示欲の為に、それらのエネルギーを使ってきたのだ。

 それはちょっと違う事に気がついた。

 自己顕示欲などあまり意識しなくていい。評価なんて他人が決めるものだから。ならそんな欲なんて必要ないじゃないか。みんなに認めてもらおうなんてさ。

 でも、俺は馬鹿だから、こういった心境になった事をまたすぐ忘れてしまうかもしれないな。できれば多種多様の角度から物事を見られるようにして、常に冷静沈着に動けるようになりたかった。

 気付けば十歳も年下の大ちゃんに対し、俺は一種の羨ましささえ感じている。

 じゃあ、どうする? いちいち考えるなよ、そんなもん。答えは簡単だろ。

『鬼畜道』のタイトルを癪だけど、『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』と変えようじゃないか。新しくなったこの作品を書く事で喜んでくれる人がいるからこそ、俺は書く。以前群馬の先生から言われた台詞を思い出した。

「数年後、あたなは『天使の羽を持つ子』というタイトルで作品を書くでしょう」

 ちぇ、結局群馬の先生の言った通りになっちまったなあ……。

 俺が小説を書くという行為に対し、一人でもワクワクしてくれる人がいるなんて幸せなもんだ。できれば一人でも多くの人を笑顔にしてやりたい。

 しょせん人間なんてちっぽけな存在で、一人じゃ生きれないんだ。なら一期一会というけど、俺はまず身近な人たちを笑顔でいさせたい。

 まず、どうやって書いたらいいだろうな。ゆっくり考えるか。人生先は長い……。

 俺は二日間会社を休み、坂井さんのお通夜、葬式と出席した。結局、何の恩返しもできなかったんだな。坂井さんの遺影を見ると、やるせない気持ちになりながら、ご焼香を済ます。

「ん……っ!」

 その時、何か頭の中で稲妻が走ったような気がした……。

 そうか…、この小説はこうやって書かなきゃ駄目なんだ……。

 何故『鬼畜道』に『天使の羽を持つ子』というタイトルをつけたのか。それが分かった。

 これでもう俺の作品を読み、近所のおばさんが「可哀相で読んでられない」なんて言わせない。雷神と風神の会話が頭の中に浮かんできたぞ……。

 数時間も掛けて、俺は『鬼畜道~天使の羽を持つ子~』の冒頭シーンを何故ああ書いたのかという経緯を思い出していた。

 

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