おはようございます。
九・b
師は問われた―「スブーティよ、どう思うか。《もう一度だけ生まれ変わって覚るもの》が、<わたしは、もう一度だけ生まれ変わって覚るものという成果に達しているのだ>というような考えをおこすだろうか。」
スブーティは答えた―「師よ、そういうことはありません。もう一度だけ生まれ変わって覚るものが、<わたしは、もう一度だけ生まれ変わって覚るものという成果に達しているのだ>というような考えをおこすはずがありません。それはなぜかというと、もう一度だけ生まれ変わって覚るものになったといつても、なにもそういうものがあるわけではないからです。それだからこそ、《もう一度だけ生まれ変わって覚るもの》と言われるのです。」
(中村元 紀野一義 訳 岩波文庫)
※ もう一度だけ生まれ変わって覚るもの ー 斯陀含(しだごん)、一来、サカタガミ。この世にもう一度だけ生まれかわって覚り、それ以後はこの世に生をうけることがない。原始仏教では、有身見(うしんけん)・戒禁取見(かいごんじゅけん)・疑の三結を断ち、貪瞋痴(とんじんち)の三毒が薄くなった者をいう。