今日の舞台 『COMPOSER~響き続ける旋律の調べ』(2005)
作・演出:森崎博之・TEAM-NACS
出演:TEAM-NACS(森崎博之、安田顕、佐藤重幸、大泉洋、音尾琢真)
ベートーベンの息子と知り合った若きシューベルトの前に現れたのは、未完成のレクイエムへの未練を残したモーツアルトの霊。自分の作曲を否定されたシューベルトに、モーツアルトは「絶望の音楽を」とささやく。
一方音楽家として成功を収めているベートーベンにも誰にもいえない苦悩があった。
…とかくと、なにやら壮大な音楽真面目舞台のような感じがしますが、ほぼ完全創作ですし、音楽に対して興味が無くても人間ドラマとして楽しめるかと思います。勿論笑いもちゃんと入ってますし★
厳しい父の様にはなるまいとしながらも、長男として、あるいは息子(本当は弟の遺児)を大切の思うあまり進むべき道を強要してしまう不器用なベートーベン。母をナポレオン軍に殺され、父の反対の中で音楽への自信と焦燥感にゆれるシューベルト。自分の生まれながらの病気と、自分がベートーベンによって母と引き離されたことを知ってしまう息子。日本大好きな優しいピアノの先生・サリエリ。そしてレイクエムの完成前に妻によって毒殺され、自分のあと「絶望の音楽」を継ぐものを探してさまようモーツアルトの霊。
彼の声が聞こえるのは音楽家としての「絶対聴力」をもつ選ばれたものだけ…。しかし彼のささやきが彼らを絶望の方向へと追い詰め、やがてはベートーベンの聴力をも奪う。
しかし彼らが絶望の果てに作り上げたものは…。
今回の舞台は、脚本からして凄く好きです~。
確かに「Looser]の方がしっかり笑えるし、スマートな気はしますが、今回のは全体がよくまとまってるし、前ふりも効いてるし、心掴まれました。森さん…脚本のほうは引き出し一つじゃないよ!!(笑・脚本/演出の森崎さんは、大泉さんだかに「森の演技はでっかい引き出しが一つ」といわれていた)
大泉さんは、やっぱ不器用にクールな役上手いなぁ…。不器用なベートーベンは秀逸でした。父を思い出す苦悩の表情とか、息子に「一緒にいたい」といえない自嘲気味な切ない表情とか、歓喜の歌を作った後の、あの悟ったようなおだやかな感じとか。良かった。
あと、希望に満ちた表情の途中で「もじゃもじゃー」と叫ばれ、ゆっくり静かにテンションを落としてゆくのが笑えました。表情で本当色々滲み出るのが凄い。
今回は役数が少ない所為か、人物一人ひとりが良かったです。
特にシューベルト(佐藤さん)も半ば狂気じみたときの声の感じと真剣な目がリアルに迫力ありました。不安と必死さとそこから出てしまう過信と紙一重な精神。そういうのが脚本でも演技でも凄く上手く出てました。そしてメガネと衣装が凄く似合ってて格好良かった…!!(笑)それに最後のほうで滲み出る、安定したシューベルトの様子も良かったです。
モーツアルトの安田さん、やっぱこの人のメリハリの付け方はすばらしいと思います。同じ台詞でも抑揚一つでこんなに違うんだなって言うのが。しかもあほな台詞を真剣に演じる姿が素敵。声や話し方の使い分けと選択は主に勘なんでしょうけど、良いんですよねぇ…!ちょっとでもテレとか合ったら一気にしらけるだろう役どころを…流石です…。
個人的には、おちついちゃったシューベルトに「もー、また出てきたんですか~?やめてくださいよ~」といわれて「毎月ゼロのつく日はモーツアルトデーだ」と真顔で答えるところや、「一人旅は大変だろう」とサリエリに言われたシューベルトの「…一人じゃないですから」に、「えっ…?」ってときめいて、徐々に女座りになっていく姿が凄く好きでした(笑)「絶望の音楽」が「ネクラの曲」になってるし(笑)
あと、声といえば息子役の音尾さん…。良い声してますね…。こちらは声で役を演じ分けられるのがすばらしいです。そして森さん…。一貫して乱暴とも思えるあのくぐもった力任せな感じがかえって味になっててました(笑)
腹を立てたモーツアルトが、ベートーベンに叫んだ「もじゃもじゃー!もじゃもじゃー!」という声でベートーベンは「運命」を作曲するんですが(笑)演奏会でメンバーが声を合わせるとき、良い声揃いのチームナックスの中で、森さんの「もじゃもじゃー」は、確かに一種楽器のようでした…(笑)
ラストも、多少切ないながら良かったです。
DVDもでてますので、機会があったらぜひどうぞ★