先日、このブログでご紹介した銀座平野屋の「小っちゃい!」もの。
ブログをご覧頂いているお客様から是非記事の続きをとのご要望が多かったのに驚きました。
写真の整理も済みましたので、今日はその続きです。
瓢箪が6つ。「無病息災」です。いずれの瓢箪も2cmで、手のひらにちょこんとのるサイズです。
材質は象牙、堆朱、白檀。
そして紫檀、黒檀、鉄刀木(たがやさん。仏壇や三味線の駒に使用される為、非常に重く硬い木)で作られた瓢箪。
これらの木は非常に硬い為、細工も難しいのです。
こんなに小さな作品が生まれるには確かな技術がなければ表現不可能です。
この瓢箪の根付や、先のブログで紹介した小さな作品を作った人物。
それは小野沢昌山(おのざわしょうざん)という、繊細工芸の最後の職人です。
彼は銀座平野屋に出入りの根付師で、作品を納めていました。
(「さいたまグラフ」より)
写真にもありますが、小野沢昌山の仕事場の写真には多くの道具が写っています。
彫刻刀だけでも4、50本以上あるでしょうか。
硬い象牙を切るカナノコが数十本、細竹とひもを組み合わせたろくろ(小さな穴を開けるための道具)。
使い込まれた道具は昌山自らが作ったものも多かったのです。
「朝日新聞埼玉版(昭和57年10月16日)
平野屋で今も語られている昌山のこんなエピソードをがあります。
道具作りに欠かせない鉄は、砂鉄を集めてフイゴを吹いてつくって作るのですが、
昌山は馬蹄形磁石を自分の腰に紐でくくりつけ、海岸を歩いて自ら採取し、
鍛治仕事をして彫刻刀を作成したと昌山自ら話してくれました。
また材料の堆朱をもらいに会津に行った時のこと。
山道を歩いていたら夜になってしまった。提灯の火を灯して暗い中をとぼとぼと歩いていたら、
なんとバケモノみたいなものが出てきて、慌てて逃げ出したこともあると。
ユニークな人柄を感る話だと思いませんか
最高のものを作り上げるには、まず最高の道具と素材から求めたということなのでしょう。
彼の並々ならぬ熱意を感じられるエピソードだと思います。
(破魔矢。堆朱・象牙。約2cm。)
(「寿」堆朱・象牙。約2cm)
(「赤べこ」約2cm。首が動きます)
素晴らしい極小の世界を表現した小野沢昌山とはどんな人物だったのか。
その紹介はまた日をあらためて。。。
【参考文献】
「さいたまグラフ(昭和58年4月発行) 小さな美もとめてー埼玉に生きる」根付師 小野沢昌山」
「朝日新聞埼玉版(昭和57年10月16日)
「現代の匠 中村雄昂 角川選書169」