沙羅の花からは
貝を
連想する。
真っ白い花びらは
ふちにプリーツが入っていて
すごくかわいいスカートみたいなのに
じみーに
「貝」
を連想する自分を
不思議に思っていたけれど
枝に咲く姿よりも
花ごと
美しいまま散り落ちている情景が
強く印象に残ってしまうから
かもしれない
散り落ちてなお
息づくような
沙羅の花
夏椿
芝生や
庭石に散っているたくさんの花を
写真におさめようとして、
あじさいの花に
そっと受けとめられている
ひと花に
心を奪われて
朝 花ひらき
夜には
大地に落ちる
たった一日だけの
無常の花
たった一日だけの
無常の花
枝で咲いている姿は
真っ白い花が
緑に映えて
初夏の
爽やかな風情
でも明け方
まだ仄暗い庭の一隅に
夥しいまでの白い花が落ちている情景は
この世ではないような
静けさに満ち
美しいままの
沙羅の花は
ほのかに光るように
うす闇に浮かびあがって
打ち寄せられた貝のようであり
無数の魂のようでもあり
妖しいまでに
美しくて
これをすべて拾い集め
片づけるときには
暑さも相まってうんざりもするのだけれど
夜明けの
このときばかりは
そんなことも忘れて
異世界に迷い込んだように
立ち尽くしてしまうのです。
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