行けども行けども、白樺の林と牧場と畑しか見えない。
この雄大な大地と透き通った空の狭間で、時速60kmで走っている私の時間は止まり、風景の一部にでもなったような感覚に陥る。不思議な感覚は北海道…否、デッカイドーでしか味わえないのであろう。
そう私はデッカイドーになったのだ。
前日に新千歳空港に到着した時には雨がぱらつき、普段の行いの悪さで旅行(出張だが)が台無しになったと嘆いた。
だが、そんな事はすぐに忘れられた。ポロサツのルービーとジンギスが、上目遣いで俺を呼んでいたのさ(キザなつもり)。大阪で出会えるはずもない、デッカイドーの味に舌鼓を打ち、その日は眠りに落ちた。
旅行のつもりで来たのだが、仕事をする羽目になった(うそ)。『小樽の海に出ろ』と指令が下ったのだ。デッカイドーでは海中の森が砂漠化する"磯焼け"のせいで、そこで生息するウニ、アワビの栄養不足、魚の成育環境の喪失が懸念されている。何の因果か、この地域での原因はウニ・アワビである。まさに負のスパイラルだ。
この海に、森を再生するためのブロックが沈めてある。その効果調査を行ったのだ。潜水士に調査してもらっている間、私は船頭と水産の明日について熱く語り合いあった。現状を取り纏めるだけの者に、磯焼けがどれだけ急務な課題か判らせる必要がありそうだ。
アンカーに付いてきたこの藻はなんだ!? ケウルシグサという死んだら硝酸を出し、他の藻を枯らしてしまう厄介な藻だ。この海域全体に魚の産卵、住処になるような藻は生息していなかった。
しかも、たった3年の間、あまりに早い喪失に無力さを感じた。
ただ今回の結果で開発すべき物の残像が掴めた。何度失敗しても、近い内に森を創ると心に誓った。
決起の意味を込めて、祝津にある
青塚食堂に向かった。
ニシン祭りの定食を頂いた。さらに潜水士さんからヤリイカの刺身とホッケのすり身揚げを頂くが絶品だ。国産のニシンは道北の種苗放流によって、漁獲量が上がってきていると聞いた。人の力で環境が回復していることに力が沸いてくる。
話は変わるが、小樽の寿司屋が有名なのはご存知だろうか。
デッカイドーで頂ける魚は大概おいしいが、他の漁港よりも漁獲が劣るのになぜ有名なのだろうと地元談。
観光業者の戦略か、将○の寿司の影響か定かではないが、流行に流されやすい日本人の性だろう。
ちっさな疑問を抱えるあたり、まだまだデッカイドーに融合(溶融ではない)できていないと実感した。
つづく