砂地にすむ昆虫の採集が、男の目的だったのである。
むろん、砂地の虫は、形も小さく、地味である。だが、一人前の採集マニアともなれば、蝶やトンボなどに、目をくれたりするものでない。彼等マニア連中がねらっているのは、自分の標本箱を派手にかざることでもなければ、分類学的関心でもなく、またむろん漢方薬の原料さがしでもない。昆虫採集には、もっと素朴で、直接的なよろこびがあるのだ。新種の発見というやつである。
むろん、砂地の虫は、形も小さく、地味である。だが、一人前の採集マニアともなれば、蝶やトンボなどに、目をくれたりするものでない。彼等マニア連中がねらっているのは、自分の標本箱を派手にかざることでもなければ、分類学的関心でもなく、またむろん漢方薬の原料さがしでもない。昆虫採集には、もっと素朴で、直接的なよろこびがあるのだ。新種の発見というやつである。
ある日、家の近くの河原で鞘翅目ハンミョウ属の、ニワハンミョウに似た、小っぽけな薄桃色の虫を見つけたのだ。むろんニワハンミョウに、色や模様の変わりものが多いことは、周知の事実である。しかし、前足の形ということになれば、話はまた別だ。(中略)そいつの前足ときたら、まるで分厚い鞘をかぶせたように、もっこりとしていて、黄味がかかっていた。(中略)彼の見間違いでなければ、これは大変な発見になるはずのものだった。ただ、残念なことに、取り逃がしてしまったのである。(中略)
こうして彼は、その黄色い前足をもったニワハンミョウに、すっかりとりこにされてしまったのである。
こうして彼は、その黄色い前足をもったニワハンミョウに、すっかりとりこにされてしまったのである。
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