すそ洗い 

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ナニをしているのかよくワカラナイ

エリック・フィッシュル

2011年05月03日 | アート・絵画

フィッシュル 描かれる裸のアメリカ

An Interview with ERIC FISCHL by Donald Kuspit(インタビュアー:ドナルド・カスピット 訳:木下哲夫)
文彩社刊  1989.2.20

なぜにこのよーなありがたい貴重なインタビュー本が廃刊になってしまうのか?それが日本の文化の限界なのか?と思ってしまいます

Eric Fischl























美術家の言葉エリック・フィッシュル

「リアリズムの絵だけれど、欺くリアリズムだね。まぁ基本的には何かをただ再現しているように見えるわけだからね。でも、行為の文脈となる物の選択にはものすごくこだわるんだ。たぶん、何か形而上的な意味が引き出されるようにね」 

 「世界を解釈するということはぼくにとって大切なことなんだ。うまくいえないけれど、君がいったダブル・バインドの考えについてはそのとおりなんだ。つまり明らかに矛盾する状況をぼくの絵は提示している。見る人がそうした質問を自問するようなある種の出来事が絵のなかで再演される。そういう状況が作られることをぼくは望んでいるんだ。どう人は反応するか、その状況を人はどう感じるか、そして人はそれについてなにかを決定することを求められる…」 

 「だからぼくの絵を見て人びとがまごつく理由のいくらかは、見るということに直面するからなんだ。それをどう扱ったらよいかがわからない。見るべきではないものを見ている。そして見ていること、他人の空間を侵犯しているという考えを彼らなりに処理しなければならなくなる」 



 「でもそれとは別に、見る人にとって興味のあるイメージに仕上げてゆくことにも関心を払う。つまりエキサイティングなものにする必要があるんだ。そこで形式上のことが問題になってくる。ある仕方でアレンジしなければならないし、筆触の質のこともあるよね。まぁ、物質性かな。そうしたことが人間的な経験になるわけだ。その意味では人間が作品の背後にあるね」 



「思春期の少年のマスターベーションは、ある意味で独立の技術でなかったとしたら、いったい何なのか。少年は両親から独立しつつあるところなんだ。自分自身に目覚めはじめる。僕にとって、あの絵はただ単に性行為をとらえただけではなくて、変遷期の一瞬についてのメタファーなんだ」 


 「…ぼくは同一の場所に限定した。物があって人物があって、それぞれがそれぞれの枠のなか、時間のなかで存在している。だから見る行為が時間を巻き込む。映画と似ているんだね。つまり、部屋を横切ってパンして、テレビにズーム・イン、それから戻ってまたなにかを映す。だから時間とフォーカスに関係したことなんだ。物なり人物なりを、それぞれが同じ強さをもった関係を結ぶようにした。それらはその場面の意味に心理的な働きかけをする」 


「たぶん僕はスタイルとしてマネ風だけれど、ドガのほうにもっと関心があるんだ。ドガは窃視症的なところがある。彼はマネよりもはるかに心理学や性と深く関わっている。僕はマネのような人物には逆らって仕事をしているんだ。なぜならマネは絵からすべてを取り去ってしまったけれど、僕はそれを絵に戻そうとしているからなんだ。だからは僕は意味を伝えようとするリアリストの伝統の範囲内で仕事をするんだ。マネはすごくシニカルだったと思うな。僕はドーミエの教訓主義の伝統のなかで仕事をするんだ」 ※3

「僕が絵を始めた理由はダーティな絵を描くことだった。考えるに、当時問題になっていたことの一つは、極限状態を超えてまで浸透した芸術上の意味と、絵画自体の退屈さを、どう扱うかということだったと思う。僕の世代の大勢のアーティスト、たとえばロンゴ、サーレ、シャーマン、ゴールドスタインなんかは、芸術を生き返らせるような作品を作っていた。力のイメージを喚起するようなイメージを持った作品。

 作品に力を与えるような大きなもの。なぜならば芸術が何であるのか分らなくなっていたから。だから僕はポルノグラフィックな絵をやって絵に力を与え、だれかを憤慨させようと思った。ところが描いているうちに違ったものになってしまった。ポルノグラフィックにはみえなかったんだ。その絵は子どもの生活にある自然な出来事を僕が観察している、というふうに見えた。それじゃダメなんだとは思えなかった。気づまりに思ったことが一つだけあって、それは僕が観察しているということ、僕がその立場に置かれているということだった。行為自体は不快に感じなかったんだ。タブーを犯したといったところかな」 



Eric Fischl: Beach Paintings
クリエーター情報なし
Rizzoli


Eric Fischl: 1970-2007
クリエーター情報なし
Monacelli

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