半年ほど前に映画『隠し剣 鬼の爪』(永瀬正敏、松たか子、監督
山田洋次)を観て面白かったが、思わず連想してしまったのは大昔の
緒形拳や藤田まこと、三田村邦彦などが出演していた「仕事人」シリ
ーズで、この時代劇では仕置きする側だった緒形拳が映画の役柄では
藩の家老になっていて仕置きされる側になっていたのが、少々笑えた。
中国において明から清への移行期に、当時台湾を統治していたオランダ
東インド会社と戦ってこれを追放した鄭成功もそのメンバーだったと
される洪門(ホンメン、紅幇<ホンパン>とも呼ばれる)はその源流を
三国志の時代に持つ組織で、他に大きな影響力がある組織としては
青幇(チンパン)も存在している。
そして異民族政権である清に対抗して明の再興を旗印に、本格的に
洪門を一本化し強大にした鄭成功は、洪門の中興の祖と言われている
らしい。
出版社の小学館で手塚治虫や横山光輝、水木しげるなどの漫画の編集
担当をした現在作家の志波秀宇(しばひでたか)さんによると、洪門
の構成員は世界中に少なくとも1000万人、青幇は数万人いてアジアでは
台湾、香港・マカオを拠点として裏世界で交通・通信・密輸を仕切って
いるという事である。
そして中国共産党にも洪門のメンバーがいて、人民解放軍の建軍の父と
される朱徳やトウ小平もそうであり、朱徳は洪門の中の哥老会に属して
いたそうである。哥老会とは主に密売(麻薬も)の組織で、またわずか
なお金とたくさんの義があれば暗殺も行うという事らしい。
また12世紀の水滸伝の時代に洪門が再結成されたという話もある
そうで、8年前のクアラルンプール国際空港で暗殺された金正男さん
は、水滸伝の入れ墨をしていたと言われていてそうするのは一般的に
洪門であるとのこと。洪門メンバーではなかったかもしれないが、北の
お金の出し入れや密貿易を掌握していたとされ、洪門の力を借りていた
可能性は非常に高いという事らしい。
それで組織では絶対に破ってはいけない「利益は折半」という鉄則が
あり、それを破ると死刑になるそうで志波さんによると正男さんは
組織に暗殺された可能性も十分あり得ると言っている。
本当にそうなのかは知るすべもないが、世界中に1000万人もいると
いうのだから日本国内にもメンバーはいるはずで、テレビや新聞には
決して出ない闇から闇に葬られている事柄も多々あるのではと想像し
てしまい、表面には見えない事実は時代劇や映画より数段過酷なので
はと考えてしまったわけである。