今年は1月5日が寒の入りで19日までが小寒、20日から
来月2日の節分までが大寒で、この寒の内の水や卵は特に
滋養に富むとか栄養豊富であるとされ「寒の水」「寒卵」
という季語になっている。
またこの時期にお灸をすえると特に効き目があるとされ、
「寒灸(または寒やいと)」も季語である。
風の子や裸で逃げる寒灸(かんやいと) 小林一茶
わが齢支へし脚に寒灸 白石天留翁
寒灸(かんきゅう)や痩身に火を点じたり 村山古郷
これまで私はお灸をすえたことはなく、一茶の句にある
ように子どもの頃もたいした病気はしなかったし、とても
いい子(笑)だったのでお灸をすえられた事もない。
しかし高齢の母親が長年膝痛(変形性膝関節症)で、多い
ときは1か月に2回も整形外科で溜まった水を取らねばなら
ないような状況が続いていた。
そこで何とかならないかと思って少し調べたら『ひざ痛は
「お灸」で消える!』(粕谷大智著)という本を見つけ、
自宅で市販の台座灸を使用する方法が推奨されていたので
2年くらい前に母親に勧めてみたわけである。
最初、若い時にたいして知識もない人からお灸をすえられて
拒絶感を根強く持っていた母親は、なかなか言うことを聞い
てくれなかったが、熱さが控えめな「ソフト灸竹生島」から
始めてもらったところ、すぐに慣れて「レギュラー灸伊吹」
にすんなり移行出来たのはよかったと思った。
お灸をすえるツボは私が本を見て4か所ほど教えたが、自分
ですえている内に結局「血海」と「膝内側点」だけになった
みたいで、血海は大ざっぱに言うと膝のお皿の上端から
数センチ上のところへ行き、そこからまた数センチ脚の内側
へ行ったところにある。膝内側点は膝のお皿の中央から脚の
内側へ15cmほど下がったところである。(正しく知りたい人は
本を見て下さい)
それで母親はお灸の他にも叔母から聞いた知識らしい、座った
ままでの足踏みとかも根気強くやっていたようであるが、去年
の夏ごろに、ちょっと詳しく膝のことを聞いてみたら、もう今
は痛みがほとんどないと言っていた。外を歩く時に杖がいらない
とか家の中でスタスタ歩けるとかはないが、整形外科にはその
時点で半年以上も行っていなかったらしい。以前は月に何度も
注射で痛い思いをしていた事から考えると、お灸を始める前と
では雲泥の差ではないかと思った。
現在母親は毎朝、両足の2か所のツボへのお灸が日課になって
しまっている。膝が温まる瞬間は、ほっこりと心地よく快感が
あるのはお灸の温熱効果によって冷えが取れ、痛みで固まった
膝関節が緩むのを感じるためらしい。
このような温かさは気持ちよさになり、脳に伝わってドーパミン
やセロトニンなどの神経伝達物質を放出する。ドーパミンは別名
「快感ホルモン」とも呼ばれ喜びや快感をもたらす働きがある。
またセロトニンの別名は「幸福ホルモン」で、精神状態を安定
させ幸福感をもたらしてくれる、という事だそうである。
なるほど、1年で一番寒いこの時期にはお灸の温かさが寒さで
強ばった心身にとっては、ことさら効果を感じるわけで昔から
季語のひとつにちゃんとなっているのも、そういう事だったの
かと、今更ながら気付かされたのであった。