虚像と現実
フェリーニの奥さんは美空ひばりをイタリア人にしたような容姿顔立ちのジュリエッタ・マッシーナ。美人じゃないけど小柄で愛嬌のある日本人好みな女優さんだ。彼女の名前は知らなくとも、あの名作「道」のジェルソミーナだと言えば頷ける人もいるのではなかろうか。これが巨匠フェリーニが死ぬまで連れ添った女性像の現実。
フェリーニ作品に数多登場する女性像は全く正反対。「甘い生活」のシルヴィア(アニタ・エクバーグ)や「8 1/2」のサラギーナに代表されるようなグラマラスでセクシーな女性。「女の都」なる作品ではそんな女性がわんさか登場してくる。これは映画監督フェリーニが描いた虚像。
最近なんだかみんな分かりやすいモノばかりになってしまって、奥行きがないように感じてしまう。現実と虚像のギッチンバッタンを楽しめない人が増えているのか、それとも作り手が取っ付きの良いモノだけを提供しているのか。この前読んだ若竹千佐子著「おらおらでひとりいぐも」のように苦痛になるくらいの不可解さも必要なのだろう。
世間では芸人の浮気ごときでテレビ三面記事は大騒ぎ。不良アイドルの大手事務所退所なんかがニュースになる。芸人もアイドルも人としての資質を問題にしてどうする?彼等は虚像なんだと何故割り切らないのか。現実の常識の中では生きていけない悲しい生き物だと白けた目で擁護してあげよう。
ただ、日々を淡々と生きる我らが現実なのかは、実を言うとわたくしも分からないでいる。