スペインのカタルーニャ地方がどんな所か知らないけど、そこで桃を収穫して生活しているひとつの家族のことはよく知ってる
冬の朝
無花果の木を大切にしているおじいちゃん
孫に物語を語ってくれるおばあちゃん
お母さんは大家族の要として、息子も旦那もピシャりと平手打ちする強さがある
息子は学業より畑仕事で褒めて欲しい
上のお姉ちゃんはダンスが好きな年頃
末の女の子は双子の従兄弟が大好き
お父さんは夏の収穫が終わった後、地主に毟り取られる桃畑で毎日腰痛に苦しみながら働いている
お父さんの妹夫婦たちも含めれば13人もの家族がそれぞれの繋がりでこの土地で生きている。面々と続いていた土と水と空と桃の木がある生活は、経済の無慈悲な力の前では余りにも儚く夏の終わりに消えようとしている
わたくしの散歩コースでも、空きあらばと太陽光パネルが乱立して久しい
渓流の山肌に黒光するパネルを見た時は、その醜悪さに辟易したものだ
狭い国土の日本でさえこんな状況だから、持続可能エネルギーに敏感な欧州辺りではもっと推奨されているのかも
重機が唸りを上げながら隣接する桃畑が破壊されてゆく中、大家族は家の周りに実った黄色の大きな桃を収穫し瓶詰めしてゆく
それでも、子供たちの笑い合う声は重機の雑音など無かった様に、もうすぐパネルに埋もれ消えてゆく桃畑に響くのだった
昔、映画に魅せられた中高生だった頃、ネオリアリスモ作品に傾倒していた。(延々と続く桃畑での収穫シーンはリアリズム)岩波ホールが全盛期の頃観た「木靴の樹」を思い出したりもした
時代は変わっても同じ様な苦悩は存在する
何が幸せかは断言できないけど、家族が揃って食卓を囲めることがそのひとつであることだけは間違いない
それにしても、スペインの桃は不味そうだった。日本の美しく滑らかで甘い桃を食べさせてあげたい
冬の朝
ビル街に朝日が眩しい