映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

夏ドラマはこの作品がすべて

2024-11-03 06:18:00 | 旧作映画、TVドラマ
夏から秋に放送されたドラマの中で、今年を代表する作品が生まれた事は忘れないようメモしておこう

海のはじまり
三流作家やプロデューサーなら、安直に夏ドラマだから連想しやすい海の単語を題名に付けて、ひと夏の恋の紆余曲折がダラダラ繰り返される薄っぺらな物語で場を繋ぐんだろうな
やっぱり、生方美久は本物だったことをこのドラマは示してくれた。いつかは前職の医療に携わった経験を活かした物語を紡いでくれると思っていたが、こんなにも早くそして想像を超える厳しい目線で観せてくれるとは・・・

確かに、夏君は一方的な別れ話をしてくる水季をもう少し深く詮索するべきだったし、水季が自分勝手に海を産むことを決めて結果周囲の人々の生き方まで左右させてしまったことは事実で、このドラマを素直に受け入れられない人がいることも理解出来る
それでも、人が生きていくのってそういう事の連続なんじゃないかな
その先に海ちゃんの笑顔があるなら許されると思った

古川琴音、大竹しのぶ、利重剛、有村架純の存在感に改めて唸り、池松壮亮を本当の意味で知った気がする
そして海ちゃんを演じた泉谷星奈ちゃんがいたからこのドラマは成り立っていた


2024夏ドラマのはじまり

2024-07-21 15:12:00 | 旧作映画、TVドラマ

オリンピックの夏だからか、どの作品もスタートが早くて、もうすでに3話目を観せてくれたドラマもある中
やっぱり大本命は生方美久脚本だろう
毎年夏ドラマに傑作は無いと思っていたが、この暑い夏はちょっと違うかもしれない


「海のはじまり」
丁寧に丁寧に、染み渡るような余韻をもって喪失感が優しく心を震わせる
生方美久の脚本はセリフやナレーションなんかで誤魔化さない本物のドラマを観せてくれる
前作がいささか主張が過ぎてしつこい後味だけが残る失敗作だったし、なんと言ってもあの月9枠。大昔は傑作を多数生み出していたフジテレビの看板枠だったのに、今や駄作を観るならこの枠で決まりみたいな酷さが続いているので嫌な想像しか湧かない
1話から3話まで二回観直して、これはひょっとして「silent 」を超えるような傑作になるのではないかという予感がする。生方美久の前職が助産師だったことを考えると上辺だけの感動ありがとう物語になろう筈もなく、重いかもしれないけどチープな感想で除外するのは余りにも短絡的だろう(まあ、その程度の人はこのドラマを観なくて良いし、ピントのずれた感想述べられても作品が穢れるだけなので早々に離脱して欲しい)
目黒蓮のために書き下ろされたとしか思えないナイーブな佇まい。天衣無縫のようで深い洞察を感じさせる古川琴音の瞳。抑えた演技が孤独感を際立たせてくれる有村架純を観れたのは有難い。わかっていたけど、大竹しのぶの凄さに打ちのめされる、あの目線呑み込む言葉尻の哀愁。そして、泉谷星奈ちゃんの健気さ
もしかしたらとんでもない名作ドラマにわたくし達はめぐり逢うのかもしれない






「マウンテンドクター」
初回で脱落しようかと思ったけど、2話目に持ち直したかも
大森南朋や檀れいに変な演技させているのは狙いなんだろうか?
岡崎紗絵に僅かな期待をしながらもう少し様子見してみる

「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」
NHKらしい攻めのドラマ。こういう作品をサラッと作ってしまうから受信料払っちゃうんだよなぁ
今年になって急に、私が発見しました的に紹介される河合優実が主人公。地上波より先にBSか何かで放送されたみたいで、その時は彼女がブレイクする前だったから特に目立った評判は聞いていない
大方、大衆が目を向ける頃になって過去の作品も見直され、こうして地上波に登場できたのだからありがたいことには変わらない。映画「愛なのに」を観たあとの感想に河合優実の名前を覚えておこうと書き記したのは2年半前だったか、あの頃の女子高生となんら変わりはしないけどこんなにも期待される女優になろうとは思いもしなかった
ドラマは題名通り、思いっきり家族を描いている
父親は既に亡くなり(そんなんだったら死んでしまえ。と捨て台詞を吐いたあと実際死んでしまったというエピソード付き)弟はダウン症を抱えている。家計を担っていた母親が病に倒れ下半身不随で車椅子生活を余儀なくされ、派手好きで多少アウトローな祖母との4人生活が始まる
最近社会問題になっているヤングケアラーの厳しさを描くのかと思えばそんな事はなく、慎ましいが決して悲観的な向き方ではない乾いたポジティブさがある。学校の友達(マルチってあだ名の由来も面白い)との絡みも風変わりな味で楽しみだ

「新宿野戦病院」
クドカンの悪いことが集まっちゃったかな
一人一人の登場人物は魅力的で面白いのに、集団劇になると煩いだけで胃もたれしてしまう
歌舞伎町にある怪しげな病院を舞台に、米軍医上がりの女医が命を助けるためだけに奮闘するお話だけでも充分面白いのだけど、クドカンは過剰に詰め込み過ぎて崩壊させてしまっている。最近の快進撃で誰も彼の間違いを指摘できないのか

「降り積もれ孤独な死よ」
これまた視聴する動機はあいみょんの楽曲が使われるからだけで、ドラマそのものの興味はほとんどない
いまどき陳腐な警察組織を見せられてもなあ。あんな学芸会みたいな刑事ごっこはウンザリだ
リアルにするのか思い切り端折るのかセンスだな

「光る君へ」
停滞気味
ここを乗り切るのは少々厳しいかも。選挙やオリンピックで中断せざるを得ないNHKのジレンマもある
早いとこ内裏で才覚を披露して、政争に絡むようになれば面白くなろうに

「虎に翼」
こちらも停滞気味
裁判官として一人前になるために新潟へ赴任するけど、親子の絆なのか仕事のスキルアップなのかがぼやけているので退屈に感じてしまう。やっぱり早いとこ家裁に戻り、軋轢と闘いながら奮闘してほしい
それにしても、岡田将生との絡みはどうなるのだろう。なんか不思議なキャラ設定で掴めない




アニメ2024上半期

2024-07-08 09:53:00 | 旧作映画、TVドラマ
プライムビデオで観ることのできるアニメの中で、縁あって観続けられた作品を振り返ってみた

僕の心のヤバイやつ2


1期から大好きなアニメだったけど、この2期で世界観は完成された
中学生の初々しい恋の物語が還暦過ぎたおじさんの心を揺さぶるのって凄いこと
中二病の男の子が好きになった女の子のために勇気を出して自分を変えてゆく、その原動力になったヒロインもやっぱり男の子に認めてもらいたくて一生懸命成長しようとする清々しさに、心震えながら応援した
ヨルシカの楽曲もしっくりして、初恋の味を思い出させてくれた
原作はまだ続いているのかもしれないが、アニメはここでハッピーエンディングでいいのじゃないかしら



葬送のフリーレン


質・量とも圧倒的な作品で、今年このアニメを超えるのは難しいのじゃなかろうか
単純なバトルものなら食指は動かないし、転生ものや伝記ものもそれほど好きじゃないから、この作品を2クール楽しめたのはストーリーもキャラクターも魅力的だったということ
主人公のフリーレンの抱える過去への贖罪めいたわだかまりが深みを与え、一緒に旅するフェルンやシュタルクの生き様も薄っぺらいものではないから、大河ドラマのような重厚感がある
根底にある擦れ違わずにはいられない生と死の哲学的ジレンマを匂わせながら進む物語は日本人の死生観を含んでいる。この感覚が海外の人々にも享受できるのだろうか
今後の展開はじっくり時間をかけてもいいから、今まで以上の質を保ちながら丁寧な制作を望む



ガールズバンドクライ



ガールズバンドのお話は今までも結構あって、近いところだと「ぼっち・ざ・ろっく」あたりが思い出される。のほほんとバンド活動を描いた「けいおん」のような名作もあってか、この系譜は面々と引き継がれているようだ
ただし、題名にクライと付いていることからも、上記作品のような素人バンドの友情と青春の思い出つくり的なお話ではない。主人公は高校時代の挫折から逃げ出し東京で隠れるように暮らしている。心にトゲを沢山とんがらせて生きている姿はキツイ。紆余曲折あって他の4人のメンバーとメジャーになることを目標に退路を絶った選択をする
正統派ロックな生き方をしている女の子たちがてっぺんを目指す結構硬派なアニメだった




怪獣8号


ジャパニーズアニメーションの十八番とも言えそうな題材で、特別な驚きはなかったけれど安心して楽しむことができた
正体不明の怪獣が不定期に現れて人類を脅かす。その脅威から身を守るために組織された防衛隊のチーム内のお話がメインで、こう書いてみるとエヴァーのプロットそのものである事がわかる。30年前に作られたアニメの偉大さに改めて愕然としてしまう
目新しいのは主人公が怪獣に身体を乗っ取られて変身する事で起こる顛末だろうか。これからシリーズ化されて色々な謎も解明されてゆくのだろうから、しばらくはこの物語に付き合うとしよう
防衛隊の面々もキャラクターが活きていて、これからの活躍が楽しみだ



響け!ユーフォニアム3


劇場版映画も含めて長大なシリーズの完結
京都アニメーションの意地を見せつけられたような美しい描写の数々が印象に残る、音楽を通じて青春時代の煌めきや苦しさを活写した稀有な作品として評価されるだろう
テレビアニメ3期では主要登場人物に加え、九州の強豪校から転校してきた女子が物語の核として関わってくる。原作では京都予選は久美子がソリを吹くが、関西予選ではその座を転校生に奪われチームに波紋が広がるも、本選では久美子と麗奈のソリで金賞を勝ち取る事になる。当然、原作通りだと思っていたら、アニメでは本選もオーディションで久美子が負けて転校生がソリストになる
原作を曲げてでもそのようにしたのは、主人公久美子と親友麗奈の音楽に対する意識の違いを明確にするためだったように思う。それでも2人はきっとこの先も音楽を通じなくたって親友でいられることを暗示しているように思えた
京アニの勲章がまた一つ増えた



その他楽しんで観ることができたのは

道産子ギャルはなまらめんこい
ゆびさきと恋々
オーイ!とんぼ
夜のクラゲは泳げない

2024春ドラマ 考察

2024-06-30 05:28:00 | 旧作映画、TVドラマ
やっぱりと言うか、2話で脱落した「ブルーモーメント」以外は完走できた
詳細は後述するが、テレビ史上に残るほどの名シーンにも出会えたので大方満足
今後もより一層作品毎の格差が生まれるのか
テレビ局と言うより行き着く先は才能ある個人の質量ということだろう


「からかい上手の高木さん」
高木さん役の月島琉衣ちゃんのエクボにやられた感がある
映画版につなげるため、原作にはない別れを描いたのは仕方ないか
原作やアニメでは高校生から結婚して子供ができるまでが描かれていないので、その空白を埋めるための実写映画化でもあるし、原作がないからこそオリジナルで膨らませることも可能だったわけだ
永野芽郁ちゃんの大人になった高木さんが想像していた通りの女性だったから、原作・アニメファンにも批判されていないと思う。ドラマも映画のための前振りではあったけど、その役目は充分果たせていた

「季節のない街」
クドカンらしい集団劇。震災後の仮設住宅を舞台にしたところも挑戦的な企画だった
一話30分の連作ドラマを観ているようで、全体を通してみれば理不尽な自然災害と忘れ去られてゆく少数弱者の悲哀と逞しさを実感させる物語だった。エピソード毎の面白さや出来の優劣はあるにせよ、ここまで人物像を際立たせて描き切る才能は大したものだ。役者もクドカン脚本演出だから豪華だった
主題は住民一人ひとりの生き様と復活にあるのだろうから、世間の無関心さや行政の杓子定規な支援などを深掘りすることはなかった。笑いや悲しみの中にその痛みも描かれていれば傑作ドラマになったかも知れない

「花咲舞が黙ってない」
痛快さは前作の方が高かったかも知れない
それでもあの大きな瞳で正論を吐かれていたら、思わずゴメンナサイをしてしまいそうだ
今田美桜の良いところが全面に押し出されていて、嫌味のない勧善懲悪娯楽作品になった
日テレもこの程度のライトなお仕事ドラマをコンスタントに提供していれば十分なのにと思う

「9ボーダー」
終わってみても感じるのは、せっかく10歳づつ違う三人姉妹の話なのに恋愛以外に関心ごとはないのだろうかと
大方その辺りを狙っておけばそこそこの視聴率も取れるだろうし、安全牌を振り込んでおけば怪我だけはしないだろう
今日日さあ、十代の三女は恋に生活の何割かが割かれるのかもしれないが、アラフォーもアラサーもそれほど呑気に生きて行けるほど日本は太平天国ではなかろう
仕事もそうだろうけど、家族や友人などの面倒臭い人間関係、将来に対する定まり切らない不安を抱えて毎日を生きているはずだ。テレビドラマでじっくり描けなんて思わないけど、もう少し生活臭のするドラマが観たい
木南晴夏と川口春奈に挟まれて、序盤は硬さの目立っていた畑芽育がグンと成長したことは忘れないように

「アンメット」
きっかけは主題歌にあいみょんの新曲「会いに行くのに」が使われているから観ただけで、全く期待していなかった
杉咲花と若葉竜也の組み合わせは映画でも観ているので馴染みはあったけど、フジテレビだし(制作は関テレだった)手垢のついた医療ものだしなぁと・・・
よくあるパターンは一話毎にスポットが当たる患者さんがいて、主人公中心とした医療スタッフが悪戦苦闘して乗り切りお涙感動ドラマに仕立てる作りになるのだけど、このドラマはどちらかと言えば事故で記憶する脳の機能を失った主人公の女性医師(ミヤビ)を再生できるまでを追っている
何故記憶する事ができなくなったのか、相方の男性医師(三瓶)との過去から続く関係とはどのようなものなのか。そんなミステリ要素も含みながら物語は続く
終盤になる程ミヤビと三瓶に焦点が絞られて行って、さながらドキュメンタリーを観ているような錯覚を起こす演出やカメラアングルがとられる。顕著な例は第9話のラスト、2人の10分に及ぶ長回しの会話シーン。手持ちカメラが細かく揺れ、普通のテレビドラマでは考えられないアングルでの描写が続く
40年前の傑作映画「遠雷」での長回しシーンを思い出させる。よくぞプライムタイムに放送するドラマでこの勇気あるシーンを作り上げたと、演者の2人演出撮影照明録音のスタッフを褒めたい
杉咲花と若葉竜也に関してはパーフェクトな演技。最終話、眠る三瓶先生を涙でグズグズの顔をしながらスケッチするミヤビを演じた杉咲花は圧巻だったし、施設に入所する重度障害の兄について語る三瓶を演じた若葉竜也は映画では観たことない役柄を演じていた。今年この2人を超える演者は現れないだろう
演出のYuki Saitoのことはこれから注目しておこう

「虎に翼」
やっぱり戦争が絡むとお話が辛気臭くなる
避けて通れないのはわかるけど、兄も夫も戦死してしまったのは辛い。戦争とは直接的な因果関係はないけど、お父さんまで亡くなってしまった。この家族はこの三人の軽妙なキャラクターが魅力だったので、一層どんよりした雰囲気が続く
弁護士を目指していた女性たちも散り散りになり、陽気な序盤と掛け離れてきた
家庭裁判所発足からようやく本題に戻るのかと思うが、伊藤沙莉のキャラを十分活かして明るく元気な後半を期待する

「光る君へ」
なかなか内裏での活躍にならなくて最近少しウンザリしている
登場人物が多いのと、朝廷での権力争いや帝の寵愛を受けるべく画策する争いごとまで絡んでくるので、そこにも目配りしておかないとこの話は面白くならない
結婚して福井に住むのじゃなくて、結婚することで都に戻るのだった
これから後半戦、いよいよ内裏に上がることになりそうだ

2024春ドラマの展望

2024-04-25 06:36:00 | 旧作映画、TVドラマ

秋冬に比べると、春夏のドラマはチープなつくりのものが多いように感じる
寒い時期にはコタツでテレビという昭和感覚が今でも残っていて、作り手も力の入り方が違うのだろうか
但し、この春から放送されたドラマは序盤だけでみればそんなに悪くはない作品がチラホラ
NHKの看板番組は高水準の安定飛行だし
前クールのような傑作は期待薄だけど、連休明けくらいまで観て続けて観るかを決めようかな


「光る君へ」
清少納言が内裏に就職して、いよいよ紫式部も・・・と、話は進んできたが
確か、結婚して福井の方に住むんじゃなかったっけ?うろ覚えだけど
そうなるとまた楽しみにしていた内裏代理戦争のお話しが先にのびる
藤原氏の内輪揉めの筋書きも予習しておかないといけないな
ところどころに百人一首で歌われた有名な短歌とその登場人物が現れるのも楽しみ

「虎に翼」
伊藤沙莉がヒロインじゃ気乗りしないなぁと観始めて三週目。序盤は最近の朝ドラの中でも最上位の面白さだ
実はヒロインが幼少期に苦労する話からスタートするのにチョット抵抗があり、感情移入して泣けちゃったりするのだけれど朝の15分はやっぱり元気をもらいたい
このドラマは最初から裕福な家庭で育った明るい性格の女子学生からの登場。数年後に戦火に焼かれる日本の暗部までの間はこのノリで行ってほしいものだ。その立ち上がりに伊藤沙莉のキャラクターはとても合っていて、安心して楽しめる。脇に桜井ユキや平岩紙を配置しているのも安定感を醸し出しているけど、注目しているのは親友で義理の姉役をやってる森田望智。これまでも朝ドラに登場しているけど地味な役者で、映画とかで個性的な役を上手くこなす人だと思っていた。素顔の覚え辛い容姿を生かし、カメレオン女優として今後注目してほしい逸材

「からかい上手な高木さん」
永野芽郁ちゃん主演の映画が先行しての企画なんだろうけど、漫画アニメで鉄板の地位を築いたコンテンツの実写テレビドラマ。主人公の高木さんも西片も初々しい女の子と男の子だから、多少稚拙な演技でも大目に見てやれる
中学生の頃にあんなに可愛い女の子が隣の席に座って、登下校も一緒だなんてそれだけでファンタジーじゃない⁈海も山も近くにある小豆島を舞台にしているから、人が少ない分だけ一層二人の世界観満載だ
アニメの様に特別な仲良しまで描けはしないだろうから、ほんのり匂う初恋の清々しさくらいは期待したい

「季節のない街」
黒澤明映画の中でも「どですかでん」は苦手な作品で、あの作品以降の黒澤明は小難しくなってしまったと思っている。宮藤官九郎は逆に「どですかでん」が一番好きな映画だそうだ
ナニ(震災)のせいで仮設住宅に住む人々が主人公であるところは、クドカンが何時も時代背景に置いている震災経験ど真ん中設定で頭が下がる思いだ。特に第2話の出来は群を抜いて素晴らしく、人情劇を作らせると今や彼の右に出るものはいないと痛感する。今年の冬から春にかけて放送された話題作「不適切にもほどがある」でも震災悲劇に触れながら親子の情愛をうまく描いていたが、このドラマは「あまちゃん」と同じかそれ以上に真正面から震災に向き合っている
これまたクドカン作品の常だけど、上手くて味のある役者が揃えられていて楽しみだ

「花咲舞が黙ってない」
期待してなかった割に初回は面白く観れた
10年前の杏主演のドラマも観ているのでどうしても比べてしまうけど、決して負けてるようには思えなかった。主人公の花咲舞の融通が効かない真っ直ぐさは杏の方が体現できているだろうが、実はわたくし遊びのない正義感がとても苦手で杏の花咲舞は嫌な女としか思えなかった
それに比べると今田美桜の花咲舞は背の高さ分なのか大きな瞳の狸顔のせいなのか、どことなく愛嬌があって人間としての魅力があるように思ったのだ。権力にも正々堂々ものが言える器の大きさが誰でも欲しいと思う。そんな時代ではないのかもしれないけど、40年間サラリーマンやってて少しは聞き耳持とうとする世の中になってきているとは思うが、やっぱり令和6年でも花咲舞はドラマの中でしか生きられないみたいだ
定番のお仕事勧善懲悪ドラマとして奇をてらわず外連味のない正攻法でやりきってほしい

「9ボーダー」
39歳29歳19歳の三姉妹の日常を切り取るドラマ。設定は興味深い
この設定で脂の乗り切っていた頃の山田太一や鎌田敏夫に脚本書かせていたらどうだったろう。もっと贅沢言えば、向田邦子の脚本で観てみたかった。彼らなら令和のこの世代をどのように捉えて普遍性を持たせただろうか
10歳づつ歳が離れているのに、誰もが考えていることは仕事と色恋のことだけなのか?そんな筈ないだろう
凡庸な作り手に委ねられたドラマは結局この程度なのかとまた失望する
木南晴夏も川口春奈も一番売り時の時期だからもう少しマシなドラマにしてあげないと

「アンメット」
まだ二話しか観ていないけど、今シーズン一番面白いドラマになるかも
医療系ドラマはしっかり作りさえすれば高確率で面白いものになるけれど、薄っぺらな感動押し付けをやってしまうと見る目を持った視聴者には酷評されてしまうので諸刃の刃であるかも
優秀な脳外科医が事故で記憶機能を失ってまで医師であろうとする姿に違和感はあるが、出し尽くされた今の世の中ではそのくらいのインパクトがなければドラマにならないということなんだろう
去年観た傑作映画「市子」のカップルだった杉咲花と若葉竜也がこのドラマでも共演しているのも興味深い。特に若葉竜也の天才脳外科医役はどハマりしていて、映画界での彼のステータスは確立していたものの、とうとうテレビでも一般ウケしてしまいそうだ。かつての堺雅人や高橋一生のようになってしまうかも
AIMとしては、「裸の心」以来の民放テレビ主題歌である「会いに行くのに」が上手くハマっているのも嬉しい

「ブルーモーメント」
同じフジテレビ系列であっても関テレで制作した「アンメット」は筋の通った質の高いドラマなのに、フジテレビが作るとこれほどまでにつまらなくしてしまうとは。物語の作り方を勘違いし過ぎているとしか思えない
気象学で自然災害に立ち向かうというコンセプトは最近の日本を取り巻く環境からも絶妙な視点だと思う。それなのにこんなに酷いドラマにしちゃうと、早々にリタイアしてしまいそうだ。なんだかチャチイ設定と嘘くさすぎる非科学的な背景が無惨だ。気の抜けたコードブルーを見せられてもなぁ・・・出口夏希ちゃんをしばらく鑑賞しようか