映画と渓流釣り

夢売るふたり

 前作「ディア・ドクター」でその力量をイヤと言うほど知りましたから、新作の出来に期待しない人はいなかったと思います。わたくしも今年一番期待していた作品です。
西川美和でなければ、とてつもない女流監督登場と騒いでしまったかもしれません。
西川美和だから、この程度で納得は出来ませんと思うのは罪なことですか?

 松奥さんの底知れない暗さに寄り添えばいいのか、阿部旦那のやりきれない空虚さを推し量ってあげれる事が大切なのか、分からなくなってしまったのが作劇上失敗でした。どちらも押しつぶされるほどの質量を感じますから、これが二つ一緒に課せられると重すぎて堪りませんでした。騙される女達の重さもそれに加わると一層辛く感じますから、後味が良い悪いとか言うのと違い、二時間では消化しきれない胃もたれに似た感覚が残ってしまいました。

 とは言え、こんなにも重厚なフルコースをたっぷり味合わせてくれる監督は貴重です。
それぞれのオンナがくっきりと輪郭が炙り出てくるのに、松たか子だけが闇に溶けてゆくような演出はやろうと思ってもそう簡単にはいかないでしょう。ラストシーンで松たか子が正面からにらみつけたカメラのこちら側に居るわたくし達は、薄ら寒さを背中に感じながら、それでもそこに愛があるのだろうかと自問するしかありません。
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