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→♂♀←_no.24_2014:ペンギンが教えてくれた物理のはなし

2014-10-03 18:11:37 | 今月のお薦め_XX.20XX
ペンギンが教えてくれた物理のはなし 渡辺佑基 河出ブックス

 TVとかでバイオロギングから分かったことを見聞きする機会が増えたことも相まって何となく。書棚に手を伸ばしながら観察した生データだけでインパクトがある真実が得られるイメージが先行していた分野・手法でしたので、何を解析したのだろうなど思ってましたが、読み始めると自分の持っていた印象が逆の考え方に陥っていた結果であることに気づかされます。素晴らしい生データがあれば解析したくなるし、次のというか更なる課題が自然発生しますから。
 読む前は少なからず悪意があったわけですから、脳波・心拍数など読中のバイオロギングを測定していたら、劇的な変化を観察できたのではないかと思うほど、好感を持って読みながら読み終えたって感じです。

 そうそう、TVでマグロやカジキの最高速度についてバイオロギングによる従来とは異なる結果を小耳程度に聞いて(なんかのバラエティでタレントさんが合間を挟むように言っていた)、背景込みの真相を知りたいと思っていたので、それも知ることができて良かったです。

 生き物の物理といえば、とても印象的だったゾウの時間ネズミの時間の内容を自ずと思い起こす結果・解析があったりして、学問と呼ばれる類の筋道立った姿にも心動かされた次第。※シリーズものやスピンアウトなど大河的フィクション如く、楽しむことができる。

以下、多少メモ的、思いつくままコメントを綴りますが、当たり前ながら本書や関連する文献を直に手に取っていただくことを→♂♀←!。

・ハイイロミズナギドリは偏西風、貿易風などを利用し、夏を追った長さ約65,000㎞の巨大8の字の経路を7ヶ月で飛行。

・南極周極流の潮目にいる好物のイカを求めて、約30,000㎞の世界一周を46日で行うハイガシラアホウドリの個体もいる。

・留学生の如く、一生のある時期にクロマグロは日本の海から8,000㎞離れたカルフォルニア州沿岸へ数ヶ月かけて太平洋を横断し、数年後、日本近海戻ってくる。

・ホホジロザメは中には南アフリカ沖からオーストラリアを100日間で泳ぎ、しばらくして戻る往復20,000kmやカリフォルニア沖から西へ4000km離れたハワイまで1ヶ月で移動し、こちらもしばらくした戻る回遊を実践する個体がいる。

・ザトウクジラは速度的に半球内を季節に合わせて南北に移動するようで9月頃ブラジル沖を発つグループは数ヶ月に渡って南下し6,000km以上離れた南極海に到達する。そして、夏の終わりにはブラジルに戻る。

・ラングホブデ袋浦ルッカリーのアデリーペンギンは半球内の南北移動タイプの典型で海流に沿った大きな時計回りの円で移動している。

・上記のクロマグロに代表されるマグロ類は水中で抵抗を減らす魚雷のような流線形とツルリとした体表面に推進効率を増すための三日月形尾びれに細くくびれた尾柄、さらに背びれや胸びれは体表面の溝に収納させる。で、魚は概ね平均速度2~3km/hに対して、体重250kgのクロマグロの平均速度は7km/hを叩き出し、上記のような移動を成し遂げている。魚類の大移動といえば、ネズミザメ目のホホジロザメも上で書いた通りで、こちらの平均速度は8km/h。マグロ類とネズミザメ目も基本、変温動物の魚類において高い体温を保つという共通項を持っており、速さの秘密である。ペンギン/アザラシ/クジラも平均速度は8km/hで水中における経済速度といえそう。3/4乗則を考慮するとエンペラーペンギン(20kg)の速さは飛び抜けた存在といえるかもしれない。

・平均速度ではなく、泳ぎの最高速度について。水槽の魚の場合、精一杯の泳ぎは巡航速度の3~4倍、飼育されているイルカなども指標になると思うけど、最大パフォーマンスの計測は難しい。また、個体差というか、オリンピックなど競技から我々は各種類の金メダル級の記録を知りたいとなれば最大パフォーマンスを知る難易度が上がると言うか確定度は低くなりそうなところ(チータとか陸上に生きる生き物の最大パフォーマンスや個体差について知りたいとも常々思っている)。いずれにしろ、60年代になるのでしょうか、当時のリールから出て行く糸のスピードのアイデアは良いと思う。実測できる対象における糸のスピードによる測定をすれば、もう少し詰めた、なかなかな数値が出そうな手法(だけに、著者の感想&指摘は尤もです)。

・マンボウに関する情報から対称で異なる機能を持つ乗り物にマンボウに纏わる表現、引用をしたいと思った。例えば、スペースオペラで対称な形で推進する乗り物から全く異なる機能をそれぞれの対称物から放たれて、登場人物がその乗り物に一言「マンボウかよ」ってな具合。結局、撃墜・大破などで不時着したときも分厚い緩衝材のおかげで助かって、「マンボウかよ」。海で浮いたときも「マンボウかよ」が成立する。

・潜った深さについて、ウェッデルアザラシは741m、ゾウアザラシは1,735m、マッコウクジラは2,035mの記録があるが外洋で40~50分の潜水を綿々繰り返すアカボウクジラ科が如何なる記録を叩き出すか。

アザラシは血(筋)肉に質・量ともに超分散的に酸素を蓄え、生体機能の要となる部位の血流は維持したまま、手足の末端部などの血流は閉じて心拍数を抑え(潜水徐脈)、ヒトなら意識を失うレベルの量でも通常モードで泳ぐほどに酸素を使っている。潜水病にならないのにはちゃんとした理由があることに感動。一部、根性的な気もするが、実際、陸上のみで生活する輩・我々がマージンを多くしているのが真相であろう。似たような現象は数多あるだろうけど、採掘技術の進歩による石油埋蔵量への影響を、なんか思い出しました。

・幅のある翼を持つグンカンドリは機能する面積に文字通り幅を持たせ三日三晩着地することなく空に生き、大きな肺・血管を張り巡らされた筋肉・多めのヘモグロビンの進化に加えて冷たい空気を選びヒマラヤを越えを実践するインドガン、ハイオクな花の密を効率的使う高性能なエンジンとシャシーさながらな心臓と胸筋と骨格が生み出す驚異の羽ばたきと独特な姿勢により長い時間のホバリングをするハチドリにバイオロギングを試す日は何時!?、長けたGPS技術による立体的飛行経路の観測結果が明かにしたワタリアホウドリのダイナミックソアリング※、アマツバメが教えてくれた 前縁渦というか、昆虫や鳥の飛翔は肉眼で認識できる未解明事項です。
※ワタリアホウドリの速度の変化周期は10-20 秒で高速部分が対地速度で25m/s、低速部分が5m/sの記録ありで最適予測値 (海面近くでの最高速度が秒速 28m、頂点での最低速度が秒速 10m、Sachs 2005)よりやや遅いそうだが周期は予測値(ほぼ 10 秒)にちかかったそうな。周期で20秒程度もあったことが遅めで観測された原因でも納得できそう。また、クロアシアホウドリにおいて、一定方向に移動し、100m スケールでジグザグな飛翔で急に方向転換したあとに低速部分で3 - 7m/sがあり、高速部分で12 - 25m/sがあらわれた。その周期は10 - 15 秒という記録あり。

最後にデーモン、ズルーカ、マーシャ、お疲れ様でした。 マキータ、good job!。それを言うならボート遊びをしていた観光客もか。それから、プロペラが前後にぐらぐらしないように前から押さえつけているナットをベストに緩めたケルゲレンヒメウも。何より・・・、云わずもがなです、でしょうか。

以上、多少メモ的、思いつくままコメントを綴りましたが、当前ながら本書や関連する文献を直に手に取っていただくことが→♂♀←!!。

文庫も出てます↓


日本バイオロギング協会_新しい発見 最近かな

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