オルドのカプセル
オルドが生まれてから地球が
太陽の周りを10周する前に
脳に出来た腫瘍がオルドの可能性を
すべて奪ってしまった。
『000006571822』
もう目覚めることのないオルドの手から
おかあさんがソッとはずした
ペドメーター(歩数計)のカウントが
進まぬようロックされた時の表示回数。
太平洋上を航行する船の上で
オルドのおとうさんとおかあさんは
おとうさんの年収と同じくらい高価で
頑丈なカプセルの中に
ロックを解除したペドメーターを入れ、
しっかり蓋を閉める。
カプセルを預かった船員さんは
ご両親に一瞥し、小舟から
カプセルを海へ送り出した。
カプセル内の容積・嵩(かさ)は
ペドメーターに対して断然、大きい。
空気がいっぱいのカプセルは
浮力も手伝って波間を漂う。
カプセルの中でペドメーターは
再び、数字を重ねる。
『000000000001』
入院後、しばらくして
新しく買ってもらったペドメーターは
振動により発電した電気を
蓄積できる電池を備える。
歩くことが充電に直結する
ペドメーターをオルドは気に入った。
『000005839947』
腕を振るだけでも発電する、
たった、2,3回の振動で1日分が充電、
フル充電から何もしなくても
約2カ月は正常に動作する、
1日中ベッドの上の体になっても
カウンターの増加を実感できる。
『000006571823』
ペドメーターを揺らすのは波、
数字が増え続ける限り、この世から
気持ちがなくならない気がして、
オルドはカプセルを使って
ペドメーターを海に送るお願いをした。
海が穏やかな日も、荒れる日も。
海流に乗って、渦にのまれ。
岸につき、再び海洋に。
繰り返し、繰り返し。
オルドが生まれてから、
地球は太陽を何周しただろうか。
幸いオルドのカプセルは都度、
海を渡り歩くことが叶った。
その惑星を訪れた知的生命体は
オルドのカプセルをみつけ、中を見た。
ペドメーターと手紙が入っていた。
『569026674391』だが
画面を横スクロールをさせ、
『985569026674391』が分かる。
このペドメータ、画面表示は12桁だが、
横スクロールで何桁でもメモリー可能。
手紙には、
『カプセルを拾ってくれた方へ、
どうか、カプセルは元のまま
海へ戻してください。
オルドの父・母より』
知的生命体が手紙であることに気付き、
書かれている内容を解読したか否か
不明であるが、
きちんと蓋をしたカプセルを
元に場所に戻し、惑星を離れた。
『328566356973』、
誰も横スクロールはしない、
大規模な地殻変動がカプセルを
宇宙空間へ送り出す。
カプセル内の容積・嵩(かさ)は
ペドメーターに対して断然、大きい。
無重力の中でペドメーターは
カプセルの内壁との衝突を繰り返し、
カウントを刻むことを辞めない。
過去のtexto
031、
030、029、028、027、026、025、024、023、022、021、
020、019、018、017、016、015、014、013、012、011
010、009、008、007、006、005、004、003、002、001
オルドが生まれてから地球が
太陽の周りを10周する前に
脳に出来た腫瘍がオルドの可能性を
すべて奪ってしまった。
『000006571822』
もう目覚めることのないオルドの手から
おかあさんがソッとはずした
ペドメーター(歩数計)のカウントが
進まぬようロックされた時の表示回数。
太平洋上を航行する船の上で
オルドのおとうさんとおかあさんは
おとうさんの年収と同じくらい高価で
頑丈なカプセルの中に
ロックを解除したペドメーターを入れ、
しっかり蓋を閉める。
カプセルを預かった船員さんは
ご両親に一瞥し、小舟から
カプセルを海へ送り出した。
カプセル内の容積・嵩(かさ)は
ペドメーターに対して断然、大きい。
空気がいっぱいのカプセルは
浮力も手伝って波間を漂う。
カプセルの中でペドメーターは
再び、数字を重ねる。
『000000000001』
入院後、しばらくして
新しく買ってもらったペドメーターは
振動により発電した電気を
蓄積できる電池を備える。
歩くことが充電に直結する
ペドメーターをオルドは気に入った。
『000005839947』
腕を振るだけでも発電する、
たった、2,3回の振動で1日分が充電、
フル充電から何もしなくても
約2カ月は正常に動作する、
1日中ベッドの上の体になっても
カウンターの増加を実感できる。
『000006571823』
ペドメーターを揺らすのは波、
数字が増え続ける限り、この世から
気持ちがなくならない気がして、
オルドはカプセルを使って
ペドメーターを海に送るお願いをした。
海が穏やかな日も、荒れる日も。
海流に乗って、渦にのまれ。
岸につき、再び海洋に。
繰り返し、繰り返し。
オルドが生まれてから、
地球は太陽を何周しただろうか。
幸いオルドのカプセルは都度、
海を渡り歩くことが叶った。
その惑星を訪れた知的生命体は
オルドのカプセルをみつけ、中を見た。
ペドメーターと手紙が入っていた。
『569026674391』だが
画面を横スクロールをさせ、
『985569026674391』が分かる。
このペドメータ、画面表示は12桁だが、
横スクロールで何桁でもメモリー可能。
手紙には、
『カプセルを拾ってくれた方へ、
どうか、カプセルは元のまま
海へ戻してください。
オルドの父・母より』
知的生命体が手紙であることに気付き、
書かれている内容を解読したか否か
不明であるが、
きちんと蓋をしたカプセルを
元に場所に戻し、惑星を離れた。
『328566356973』、
誰も横スクロールはしない、
大規模な地殻変動がカプセルを
宇宙空間へ送り出す。
カプセル内の容積・嵩(かさ)は
ペドメーターに対して断然、大きい。
無重力の中でペドメーターは
カプセルの内壁との衝突を繰り返し、
カウントを刻むことを辞めない。
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