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黒揚羽夫人の最善手_第二十二、二十三、二十四手目

2024-02-16 17:18:19 | texto
二十二手目、鉢内から出る(考慮時間一時間)
背を縮めて上半身を振る威嚇が裏目に出た後手の終齢幼虫は、これまでにない身の危険を感じるあまり茫然自失の様相で落ちた土の上でジッとしている。
しばらくすると先手側のヒトの子が部屋を出ていったようで気配も消えた。
落とされてから何もされてないかもしれないが、このままこの若木に留まって居てはいけない気がしてくる。
もっと意訳すれば、威嚇と関係なく、朝部屋を出て、もどって来たら、落とすつもりだったのかもしれないといった反芻的な思考などした結果、鉢の内壁を登り『鉢内から出る』決断をした。そのまま、外壁をゆっくり降りる。明るいときより見えにくい透明の板の向こうをときどき見ながらゆっくり降り(てい)ると・・・
評価値:後手14~16%

二十三手目、見つからず(考慮時間二、三時間)
しばらくといえる時間も経過したことだし先手側のヒトの子の予想の幅としては、
性懲りもなく河内晩柑の葉を食べているかもで、そうだったら、最後の晩餐を中断させるべく再度落としてやることになる、
か若しくは若木の下方や落ちたままの鉢の中に身を潜めているか、のイメージだったが・・・
夜、静かな部屋に入り、見に行くと数㎝の芋虫の姿はなく、ドアから洩れる隣の部屋の灯りのベクトルは限定的で陰影の占める箇所も多かったから部屋の灯りもつけて探すが若木にも鉢の中にもみつからない(、予想の幅を越える選択だった)。
若木の鉢植えの外へ出て、あらゆる隙間や凹凸に潜り込んでいたら見つけようがないし、該当する場所について下手に触っても何かの拍子で隙間や凹凸を構成する物体・物質により潰しかねない。採光より、より明るくなる朝を待った方が良さそうである。
・・・何気に飢え死にしないかなど気になってくる先手側のヒトの子であった。
評価値:後手10~30%で振れるグラフ

二十四手目、鉢の外壁に戻る(考慮時間二、三時間)
後手の終齢幼虫が鉢の外壁を休み休み降りている途中で足音がして、灯りがついてヒトの子が若木や鉢の辺りを見ている気配がした。
窓向きの外面だったので降りていることに気づいていない風。さっきのタイミングで鉢の外へ脱出を決めた判断は正解だったと取り敢えず思う終齢(幼虫)。
先手側に隅々まで探す気はないようで、しばらくすると再び暗くなって、静かになる。さっきのしばらくより二、三倍の時間が経ったがいつも通りの深夜で翌朝まで来ない感じ。落とされた直後の恐怖も薄らいだのか、食事の葉の生えた若木であっても離れるべき焦燥感としての恐怖心からか、再びゆっくり壁を降りる。
程なく床というものに触れ、日中とは見え方が違う透明の板の向こうを目指す。しかし、夜空が見える板の向こうには行けず、透明な板を登る向きになり、向こうへ行けない。反転することにしたから下にもどった。どこに行けばいいのだろうか。閉鎖空間は暗く、さっき降りて来た植木鉢の他の場所(壁面、)に戻ってしまい、少しだけ『鉢の外壁へ戻る』。それは程よく(落ち着く)傾斜。
評価値:後手5~35%で振れるグラフ


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