第一話「ビギナーズラック」
*
1ヶ月も満たない短期間の間に逆風が立て続けに吹いた。まずは勤め先である派遣先からの契約修了の宣告だ。
9月の派遣元の面接では下期の10月から年度末の3月の契約も更新されるはずだった。そればかりか、
ここ1年の頑張りが評価されているから、このままがんばれば、正規社員への転進もあり得るよといわれた。
派遣元である派遣会社にとってもよい話らしいので、4月から移ることも想定に入れた契約条件の変更も
何の疑いもなく受け入れた。だから10月に入っても一生懸命、働いていた。
ところがだ、”11月からはこなくていいよ”、10月の半ばに派遣先から連絡があったと派遣元から連絡された。
各派遣元でに対して約40%のコスト削減が派遣先より言い渡されたようだ。4割以上の人の引き上げが
派遣元の利益減少を抑える方法だったのだろう。勤め先を変え易いように契約条件を修正したのがアダとなったらしい。
それでも時間は過ぎるし、生活をしなくてはいけない。衣食住の住は11月一杯で引き払うよう言われている。
衣は新しいものを買うのはしばらく延期。食は自炊率をいっきに高める必要がある。
それだけではない。年金や健康保険などなどなど、問題は山積み。完全にイライラしていた。
彼女と別れることになった直接の原因が職を失ったせいではないことに今なら分かる。急な失職で拗ねて、怒り、
挙句の果て彼女にあたったことが全てだ。イライラしても何も変わらないのに、優しく接してもらって救われている
にもかかわらず、言葉では強がり、、。完全ないいわけだが、言葉にすると気持ちも一致してくることがある。
励ましの言葉に反射的に”感謝”の気持ちは生じた。ただ、言葉が裏腹でさびしそうな彼女の表情に
ひどい言葉が出るや否や、気持ちまで占拠された、、。本当にあきれるくらい情けない、いいわけだ。
正直、絶望的な羅列にきりはない。
とにかく、仕事を失い、彼女に去られ、それでも程なく生活を続けなくてはいけないことに気付く。
学問的に正しいかどうか知らないが、一つヒトの特殊性に気づいた(と思い込んだ)。
「自殺しようなんていう生き物は人間くらいだ」みたいな話を耳にした記憶があるが、
それはちょっと違う気がするというお話。
例えば、疲れちゃって、ちょっと気を抜いた瞬間に天敵に食べられる、それが自然界、野生じゃないかって。
ここ一ヶ月に起きたこと不幸の連鎖をあじあう前にも、つまらないことで
言葉の上だけかもしれないが死にたくなったことはある。
失恋や試験に失敗、勘違い、情けない嘘をついたとき、だまされたとき、、、。
つまらないことだけでも次から次に思い出されるのだから、
疲れたり、あきたり、面倒くさくなって、やる気がなくなってしまったことなんて
もっと、はるかに、甚大に多い。その瞬間に自然界だったら天敵に捕食されてしまう。
ただ、僕は現在社会に生きている人間生物だから、だったから
少しくらい疲れて手を止めたって、坂道の途中で歩くのをやめたって命を奪われない。
ちょっと位怠け心を欲しても死なないのがヒトの特殊性、!?、ん、アリの中で
一定の割合で働かない個体がいるっと言うのも同様か。となると、人の特殊性ではなく、
社会性・大集団生活の特殊性かもしれない。
いずれにしろで幾つかの例外を除いて自然では「疲れたから、ここでちょっと休憩!」的な行動をとったら
即座に死。自殺の発想の前段階で淘汰されていると。
なかなかビギナーズラックの話になりませんね。
何はともあれ、今まで考えないようなことを考える時間があったのも事実で
それがビギナーズラックにつながったのも事実。
**
2008年9月15日、リーマンブラザーズは連邦倒産法第11章(日本の民事再生法に相当)の適用を
連邦裁判所に申請を発表。事実上の破綻である。
負債総額は6,130億ドル(当時の日本円で約64兆5000億円)と米国史上最大の倒産。
2008年10月28日、日経平均が同日の最安値において7000円を切る(6994.90円)。
どうして、株をはじめるに至ったかはいつか話せなくてはいけないだろうが、いつかの機会である。
リーマンブラザーズ破綻のニュースは職を失うかつ株をはじめる切っ掛けでもあった。
遡れば、太平洋の向こうにある大陸でおかしな金利で家を手に入れるローンの仕組みが
ここ数年の仕事をくれいたのかもしれないから、文字通りの源である。
正社員の皆様に迫られた確定拠出も関係がある気もするがよくわかないし、派遣の自分たちには
関われない流れだ。
とにかく、10月の半ばから株をはじめることにした。
証券会社に行って、口座を設け、お金を預ける。
別れた彼女とできるだけ早く一緒に暮らすため、貯めはじめたお金が元手だ。
パソコンは持っていないが携帯電話からでも売買ができる。
忌まわしく感じるお金と過ごすには最適な方法に思われた。
あと十日もあの職場で働かねばならぬ。
昼休みに携帯から株取引のできるサイトにパスワードを入力、覗いてみる。
何を見ればよいか分からないので日経平均をみた。
12時半をまわっていたので午後の取引は始まっている。
ページの更新をすると平均の株価は変わった。何もしていないのに
ちょっと相場師気取りの自分がいた。馬鹿だ。だけど、気分がいい。
仕事が終わったら、買う銘柄を決めよう!。そう、口座を開いただけで
何の株も買っていない。
今では(ちょっと前かららしいが)、証券会社の商品や株もかなり小額な単位で買えるコースなど
あるらしいが、昔から言われている?株取引をやると決めている。
正式な名称、定義は曖昧だが、とにかく、買おうと思っている企業の株を
企業が指定している単位で遣り取りするのだ。
自分が何をどれだけ持っているか、把握しながら進めたい。
その日の仕事は定時に毛が生えた程度に終わったので図書館に行って、新聞をみる。
東京証券取引所の一部(東証一部)に上場している銘柄から買うつもりだ。
今、株価が下がっているとはいえ、滅多なことで潰れないと思ったことや、
売買の量が多いだろうから”売りたい、買いたい”それぞれの時に
売り買いしやすいと考えたから。
全体的、どの企業も株価が下がっている、という話だ。
1月、8月の新聞と見比べる。ほとんどの銘柄の値が下がっている。
東証一部の企業ならいつかはしらないがいつか、
リーマンショックで下がり始める前の値段には戻るだろう。
先ずはあとはいつ、何を買うかだ。
ただ、東証一部といってもこんなにたくさんの企業があるとは、、。
知らない会社もたくさんある。とりあえず、知っている会社にしよう。
新聞を斜め読みする感じでたまたま目に留まった企業名が5つほど記憶に留め、
携帯の登録した株サイトにアクセス。5つの会社の株価の推移をみるためである。
それぞれを見る前に日経平均の過去最高を知りたくなった。
(つづく)
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1ヶ月も満たない短期間の間に逆風が立て続けに吹いた。まずは勤め先である派遣先からの契約修了の宣告だ。
9月の派遣元の面接では下期の10月から年度末の3月の契約も更新されるはずだった。そればかりか、
ここ1年の頑張りが評価されているから、このままがんばれば、正規社員への転進もあり得るよといわれた。
派遣元である派遣会社にとってもよい話らしいので、4月から移ることも想定に入れた契約条件の変更も
何の疑いもなく受け入れた。だから10月に入っても一生懸命、働いていた。
ところがだ、”11月からはこなくていいよ”、10月の半ばに派遣先から連絡があったと派遣元から連絡された。
各派遣元でに対して約40%のコスト削減が派遣先より言い渡されたようだ。4割以上の人の引き上げが
派遣元の利益減少を抑える方法だったのだろう。勤め先を変え易いように契約条件を修正したのがアダとなったらしい。
それでも時間は過ぎるし、生活をしなくてはいけない。衣食住の住は11月一杯で引き払うよう言われている。
衣は新しいものを買うのはしばらく延期。食は自炊率をいっきに高める必要がある。
それだけではない。年金や健康保険などなどなど、問題は山積み。完全にイライラしていた。
彼女と別れることになった直接の原因が職を失ったせいではないことに今なら分かる。急な失職で拗ねて、怒り、
挙句の果て彼女にあたったことが全てだ。イライラしても何も変わらないのに、優しく接してもらって救われている
にもかかわらず、言葉では強がり、、。完全ないいわけだが、言葉にすると気持ちも一致してくることがある。
励ましの言葉に反射的に”感謝”の気持ちは生じた。ただ、言葉が裏腹でさびしそうな彼女の表情に
ひどい言葉が出るや否や、気持ちまで占拠された、、。本当にあきれるくらい情けない、いいわけだ。
正直、絶望的な羅列にきりはない。
とにかく、仕事を失い、彼女に去られ、それでも程なく生活を続けなくてはいけないことに気付く。
学問的に正しいかどうか知らないが、一つヒトの特殊性に気づいた(と思い込んだ)。
「自殺しようなんていう生き物は人間くらいだ」みたいな話を耳にした記憶があるが、
それはちょっと違う気がするというお話。
例えば、疲れちゃって、ちょっと気を抜いた瞬間に天敵に食べられる、それが自然界、野生じゃないかって。
ここ一ヶ月に起きたこと不幸の連鎖をあじあう前にも、つまらないことで
言葉の上だけかもしれないが死にたくなったことはある。
失恋や試験に失敗、勘違い、情けない嘘をついたとき、だまされたとき、、、。
つまらないことだけでも次から次に思い出されるのだから、
疲れたり、あきたり、面倒くさくなって、やる気がなくなってしまったことなんて
もっと、はるかに、甚大に多い。その瞬間に自然界だったら天敵に捕食されてしまう。
ただ、僕は現在社会に生きている人間生物だから、だったから
少しくらい疲れて手を止めたって、坂道の途中で歩くのをやめたって命を奪われない。
ちょっと位怠け心を欲しても死なないのがヒトの特殊性、!?、ん、アリの中で
一定の割合で働かない個体がいるっと言うのも同様か。となると、人の特殊性ではなく、
社会性・大集団生活の特殊性かもしれない。
いずれにしろで幾つかの例外を除いて自然では「疲れたから、ここでちょっと休憩!」的な行動をとったら
即座に死。自殺の発想の前段階で淘汰されていると。
なかなかビギナーズラックの話になりませんね。
何はともあれ、今まで考えないようなことを考える時間があったのも事実で
それがビギナーズラックにつながったのも事実。
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2008年9月15日、リーマンブラザーズは連邦倒産法第11章(日本の民事再生法に相当)の適用を
連邦裁判所に申請を発表。事実上の破綻である。
負債総額は6,130億ドル(当時の日本円で約64兆5000億円)と米国史上最大の倒産。
2008年10月28日、日経平均が同日の最安値において7000円を切る(6994.90円)。
どうして、株をはじめるに至ったかはいつか話せなくてはいけないだろうが、いつかの機会である。
リーマンブラザーズ破綻のニュースは職を失うかつ株をはじめる切っ掛けでもあった。
遡れば、太平洋の向こうにある大陸でおかしな金利で家を手に入れるローンの仕組みが
ここ数年の仕事をくれいたのかもしれないから、文字通りの源である。
正社員の皆様に迫られた確定拠出も関係がある気もするがよくわかないし、派遣の自分たちには
関われない流れだ。
とにかく、10月の半ばから株をはじめることにした。
証券会社に行って、口座を設け、お金を預ける。
別れた彼女とできるだけ早く一緒に暮らすため、貯めはじめたお金が元手だ。
パソコンは持っていないが携帯電話からでも売買ができる。
忌まわしく感じるお金と過ごすには最適な方法に思われた。
あと十日もあの職場で働かねばならぬ。
昼休みに携帯から株取引のできるサイトにパスワードを入力、覗いてみる。
何を見ればよいか分からないので日経平均をみた。
12時半をまわっていたので午後の取引は始まっている。
ページの更新をすると平均の株価は変わった。何もしていないのに
ちょっと相場師気取りの自分がいた。馬鹿だ。だけど、気分がいい。
仕事が終わったら、買う銘柄を決めよう!。そう、口座を開いただけで
何の株も買っていない。
今では(ちょっと前かららしいが)、証券会社の商品や株もかなり小額な単位で買えるコースなど
あるらしいが、昔から言われている?株取引をやると決めている。
正式な名称、定義は曖昧だが、とにかく、買おうと思っている企業の株を
企業が指定している単位で遣り取りするのだ。
自分が何をどれだけ持っているか、把握しながら進めたい。
その日の仕事は定時に毛が生えた程度に終わったので図書館に行って、新聞をみる。
東京証券取引所の一部(東証一部)に上場している銘柄から買うつもりだ。
今、株価が下がっているとはいえ、滅多なことで潰れないと思ったことや、
売買の量が多いだろうから”売りたい、買いたい”それぞれの時に
売り買いしやすいと考えたから。
全体的、どの企業も株価が下がっている、という話だ。
1月、8月の新聞と見比べる。ほとんどの銘柄の値が下がっている。
東証一部の企業ならいつかはしらないがいつか、
リーマンショックで下がり始める前の値段には戻るだろう。
先ずはあとはいつ、何を買うかだ。
ただ、東証一部といってもこんなにたくさんの企業があるとは、、。
知らない会社もたくさんある。とりあえず、知っている会社にしよう。
新聞を斜め読みする感じでたまたま目に留まった企業名が5つほど記憶に留め、
携帯の登録した株サイトにアクセス。5つの会社の株価の推移をみるためである。
それぞれを見る前に日経平均の過去最高を知りたくなった。
(つづく)
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