◎ 長年使っているとパソコンの動作は遅くなってくる。
最大の要因はCPUの陳腐化だ(図1)。購入した当初は十分な性能でも、年月を重ねてOSやアプリが大幅に進化すると、処理性能が足りなくなってしまう。この問題を解決するには、CPUを新しい世代のものに交換するしかない。これができるのも自作パソコンの魅力だ。
図1、パソコンは年月がたつとOSやアプリの進化に付いていけなくなる。CPUの性能が足りない場合の解決策はCPU交換しかない。これは自作の特権だ。
次世代に交換可能なRyzen コストパフォーマンスも抜群。
CPUの交換が可能な条件は、同じメーカーでそのソケット(接続端子)が同じであること。AMDとインテルが現在採用しているCPUソケットと、次世代CPUとの交換の可否を図2、図3に示した。
図2、AMDの現行CPU「Ryzen 7000」に対応するソケット「Socket AM5」は次世代の「Ryzen 8000」でも使用されるため、数年後の交換も可能だ。
図3、インテルの現行CPUが採用するCPUソケットは「LGA1700」。次世代CPUではソケットが「LGA1851」に変更されるため、現行のLGA1700対応マザーボードでは次世代CPUに交換できない。
AMDの現行CPUである「Ryzen 7000」の対応ソケットは「Socket AM5」。AMDはこのソケットを長期的に使用すると表明しており、次世代の「Ryzen 8000」でも使われる。そのため、現行のRyzen 7000は、数年後に次世代製品と交換できる。
一方、インテルの場合は、現行CPU(第12/13/14世代Core)の対応ソケットである「LGA1700」が次世代CPUでは採用されない。そのため、現行のインテルCPUはマザーボードも一緒に交換しない限り、次世代CPUに交換できない。
CPUの選択では価格と性能も重要だ。同クラスの製品で比較した場合、価格はAMDのRyzen 7000のほうが明らかに安い(図4)。性能ではインテルの第13世代がやや勝るが、価格ほどの差はない。
図4、CPU単体の価格は、同クラスで比較するとAMDのほうが安い(上)。ビジネス系アプリでの性能を測る「PCMark 10 Extended」の結果(下)を見ると、同クラスならインテルとAMDの性能差は価格差ほど大きくない。末長く使うことを考えるとコスパが良く、現行と次世代のCPUでソケットの互換性があるAMDは魅力的だ。
Ryzen 7000を軸にマザーボードを選ぶ。
総合的に見て現状、末長く使うことを考えるなら、AMDのRyzen 7000シリーズが魅力的だ。
CPUも含めたパーツの選び方は図5の通り。まずどのようなパソコンを作りたいかを決め、大まかな予算も決める。今回はRyzen 7000を使うと決めたので、そのシリーズから目的に合ったものを選ぶ。シリーズは図6の通りで、一般的な用途であればRyzen 5が妥当だ。
図5、CPUをRyzen 7000シリーズに決めた場合のパーツ選びの手順をまとめた。用途と予算に応じてRyzen 7000シリーズのどのCPUにするかを決め、対応するマザーボードを選択することになる。メモリーなどの選択については「Ryzen 5 7600X」を例に次回で解説する。実際にはPCケースが備えるSATAドライブベイの数や必要な電力などさまざまな要素が相互に関係するので、①~⑨を同時に検討する。
Θ どのRyzen 7000にするか用途で決める
図6、Ryzen 7000には、ウルトラハイエンドの「Ryzen 9」、ハイエンドの「Ryzen 7」、ミドルレンジの「Ryzen 5」の3つのシリーズが用意されている。一般的なビジネス用途であればRyzen 5が妥当だ。
マザーボード(主回路基板)は、Ryzen 7000対応のチップセット(周辺機器制御チップ)を搭載した製品を選択する。市場には機能が異なる4種類のチップセットにそれぞれ対応したマザーボードがある(図7)。チップセットによってPCIe 5.0への対応やUSBの対応規格および端子数などが異なるので、ここはよく吟味する。
Θ Ryzen 7000対応のチップセットを搭載したマザーボードを選ぶ。
図7、Ryzen 7000シリーズに対応したマザーボード(正確には同CPU対応のチップセットを搭載したマザーボード)には、チップセットの種類が異なる製品がいくつかある。末尾に「E」が付くものはPCIe 5.0 x16スロットをサポートする。「B650」はPCIe 5.0 x4 M.2端子がオプションで、非対応のマザーボード製品も多いので要注意。
パソコンの大きさは基本的にマザーボードのフォームファクター(規格)で決まる(図8)。家庭で使うなら大きさも重要なので、よく検討しよう。
Θ マザーボードの規格でパソコンの大きさが決まる。
図8、現在主流のマザーボードのフォームファクター(規格)は主に「ATX」「microATX」「Mini-ITX」の3種類。これでPCケース、すなわちパソコンの大きさが決まる。なお、PCケースにはサイズの上位互換性があり、ATXケースではmicroATXおよびMini-ITXのマザーボード、microATXケースではMini-ITXのマザーボードも利用可能だ。