夏川草介著『神様のカルテ』シリーズあらすじとネタバレ感想(^・^)
「みんな医者を便利な道具か何かと勘違いしてるのよ。昼も夜も働かせて、土曜日も日曜日も呼び出して、散々頼っておきながら、ミスを犯したと知った途端、あっさり掌を返して、やっつけようとする。こんなことしていたら、真面目に働く医者から順に、壊れていっちゃうわ」
(『神様のカルテ3』406、407ページより)
現役の医師である夏川草介さんのデビュー作で第10回小学館文庫小説賞受賞。
2011年、2014年に櫻井翔さん主演で映画化され、2021年2月には福士蒼汰さん主演でテレビドラマ化。
「みんな医者を便利な道具か何かと勘違いしてるのよ。昼も夜も働かせて、土曜日も日曜日も呼び出して、散々頼っておきながら、ミスを犯したと知った途端、あっさり掌を返して、やっつけようとする。こんなことしていたら、真面目に働く医者から順に、壊れていっちゃうわ」
(『神様のカルテ3』406、407ページより)
現役の医師である夏川草介さんのデビュー作で第10回小学館文庫小説賞受賞。
2011年、2014年に櫻井翔さん主演で映画化され、2021年2月には福士蒼汰さん主演でテレビドラマ化。
『神様のカルテ』1巻~3巻
著者:夏川草介
発行:株式会社小学館
(小学館文庫)
発行:株式会社小学館
(小学館文庫)
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『神様のカルテ』1巻~3巻あらすじ・ネタバレ感想
☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…
『神様のカルテ』あらすじ・感想
●あらすじ
【24時間365日対応】を掲げる信州の本庄病院に勤務する29歳の内科医・栗原一止は、学生時代から変わり者で有名であった。
夏目漱石の『草枕』を愛読し、口調は明治の文豪調ときている。
だが、例えぶっ続けに40時間働こうとも医療の現場から逃げ出すことはない。
そんな一止には、母校の信濃大学の医局から誘いの声がかかっていた。
大学病院へ行けば最先端の医療を学ぶことができる。
上司の古狐先生が気を利かせて大学病院を見学出来るよう手はずを整えてくれたり、腐れ縁の同級生で外科医の砂山次郎も大学で学ぶことを否定しない。
だが、一止が担当している本庄病院の入院患者は大学病院では診てもらえない人達だ。
医者であるなら最新の医療に興味がないわけではないが、死を前にした患者の為に働く医者でありたい、と一止は苦悩する。
【24時間365日対応】を掲げる信州の本庄病院に勤務する29歳の内科医・栗原一止は、学生時代から変わり者で有名であった。
夏目漱石の『草枕』を愛読し、口調は明治の文豪調ときている。
だが、例えぶっ続けに40時間働こうとも医療の現場から逃げ出すことはない。
そんな一止には、母校の信濃大学の医局から誘いの声がかかっていた。
大学病院へ行けば最先端の医療を学ぶことができる。
上司の古狐先生が気を利かせて大学病院を見学出来るよう手はずを整えてくれたり、腐れ縁の同級生で外科医の砂山次郎も大学で学ぶことを否定しない。
だが、一止が担当している本庄病院の入院患者は大学病院では診てもらえない人達だ。
医者であるなら最新の医療に興味がないわけではないが、死を前にした患者の為に働く医者でありたい、と一止は苦悩する。
●感想
医療を扱っている以上、“死”は必ずついてまわるものだが『神様のカルテ』は鬱々とした暗さがない。
『精霊の守り人』シリーズのファンタジー作家・上橋菜穂子さんは解説の1行目でこう表現している。
心地よい物語だなぁ……。(248ページ)
まさにその通りで、見事にピッタリとはまる一文だ。
主人公の栗原一止が夏目漱石を敬愛している為、キャラクターとしての口調も漱石風だが文章全体が完結でキレが良い文で構成されている。
一止がやたらとあだ名をつけることもあり医療版の『坊ちゃん』のイメージだ。
その為、過疎や高齢化が進む地域医療の薄暗さやどんよりと暗く沈んだ空気をあまり感じずに読み進めることができる。
ぐじぐじと悲観やら悲壮感を並べず、スパスパとキレの良い言葉がかえって涙を誘う。
高齢の癌患者・安曇さんは夫に先立たれ子供もおらず独りぼっちである。
それでも常に他者への気遣いを忘れない。
看護師達からは癒やされる存在として好かれている。
そんな安曇さんから手紙を受け取った一止は医者らしかぬことかもしれないが、嗚咽と慟哭を止めることができなかった。
そんな一止のもとで治療を受けられたことは安曇さんにとって大きな安心につながっていただろうと思う。
今は、子供を産んだとしても一人っ子が多く必ずしも同じ土地で住むと限らない。
伴侶に先立たれれば独りぼっちの老人として生きねばならない。
『神様のカルテ』で書かれていることは信州の田舎に限ったことではない。
日本の9割はこのような現状なのだ。
医者が少ない、病院が少ない、治療ができる医者を求めて何10㎞と救急車を飛ばすうちに患者が力尽きる……。
一止が、大狸、古狐とあだ名をつけた先生達はそのようなことが少しでも減らせるように何十年も闘ってきた医者だった。
お医者さんにすぐに診察してもらえることは当たり前じゃない。
それができない人達がいる。
医者がいないという理由で死ぬ人がいる。
2020年1月からの武漢騒動で、田舎の話は遠い所すぎて自分には無関係と思っていた都市部の人にも、こういったことが身近な問題になったと思う。
医療を扱っている以上、“死”は必ずついてまわるものだが『神様のカルテ』は鬱々とした暗さがない。
『精霊の守り人』シリーズのファンタジー作家・上橋菜穂子さんは解説の1行目でこう表現している。
心地よい物語だなぁ……。(248ページ)
まさにその通りで、見事にピッタリとはまる一文だ。
主人公の栗原一止が夏目漱石を敬愛している為、キャラクターとしての口調も漱石風だが文章全体が完結でキレが良い文で構成されている。
一止がやたらとあだ名をつけることもあり医療版の『坊ちゃん』のイメージだ。
その為、過疎や高齢化が進む地域医療の薄暗さやどんよりと暗く沈んだ空気をあまり感じずに読み進めることができる。
ぐじぐじと悲観やら悲壮感を並べず、スパスパとキレの良い言葉がかえって涙を誘う。
高齢の癌患者・安曇さんは夫に先立たれ子供もおらず独りぼっちである。
それでも常に他者への気遣いを忘れない。
看護師達からは癒やされる存在として好かれている。
そんな安曇さんから手紙を受け取った一止は医者らしかぬことかもしれないが、嗚咽と慟哭を止めることができなかった。
そんな一止のもとで治療を受けられたことは安曇さんにとって大きな安心につながっていただろうと思う。
今は、子供を産んだとしても一人っ子が多く必ずしも同じ土地で住むと限らない。
伴侶に先立たれれば独りぼっちの老人として生きねばならない。
『神様のカルテ』で書かれていることは信州の田舎に限ったことではない。
日本の9割はこのような現状なのだ。
医者が少ない、病院が少ない、治療ができる医者を求めて何10㎞と救急車を飛ばすうちに患者が力尽きる……。
一止が、大狸、古狐とあだ名をつけた先生達はそのようなことが少しでも減らせるように何十年も闘ってきた医者だった。
お医者さんにすぐに診察してもらえることは当たり前じゃない。
それができない人達がいる。
医者がいないという理由で死ぬ人がいる。
2020年1月からの武漢騒動で、田舎の話は遠い所すぎて自分には無関係と思っていた都市部の人にも、こういったことが身近な問題になったと思う。
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『神様のカルテ2』あらすじ・感想
●あらすじ
【24時間365日対応】を掲げる信州の本庄病院で相変わらず不眠不休の診療を続けている若き内科医・栗原一止に朗報が舞込む。
大狸先生が4月から勤務する新任の医師を連れ医局に入ってきたところ、その医師は一止の親友・進藤辰也であった。
心強さに喜ぶ一止だったが、かつて“医学部の良心”と言われた辰也はなんと病院内で悪評の宝庫となる。
親友のあまりの変わりように失望する一止は、ある日のこと、コーヒーが入ったカップを持つ右手を前方に差しだし辰也の頭上でくるりと回転させた。
その頃、古狐先生こと内藤鴨一副部長が院内で昏倒する。
先生は何十年間も常に院内で寝泊まりしているような医師であった。
入院させたところ、病は恐ろしく進行している状態で……。
【24時間365日対応】を掲げる信州の本庄病院で相変わらず不眠不休の診療を続けている若き内科医・栗原一止に朗報が舞込む。
大狸先生が4月から勤務する新任の医師を連れ医局に入ってきたところ、その医師は一止の親友・進藤辰也であった。
心強さに喜ぶ一止だったが、かつて“医学部の良心”と言われた辰也はなんと病院内で悪評の宝庫となる。
親友のあまりの変わりように失望する一止は、ある日のこと、コーヒーが入ったカップを持つ右手を前方に差しだし辰也の頭上でくるりと回転させた。
その頃、古狐先生こと内藤鴨一副部長が院内で昏倒する。
先生は何十年間も常に院内で寝泊まりしているような医師であった。
入院させたところ、病は恐ろしく進行している状態で……。
●感想
辰也にコーヒーをぶっかけた《病棟コーヒー事件》について次郎に聞かれた一止の言いように吹いた(((*≧艸≦)ププッ
どうも勘違いが多いようだから言っておくが、私が誤ってコーヒーをこぼしたら、偶然その下に辰也がいただけだ
お人好しの次郎はあっさり信用してしまう。
辰也もコーヒーをぶっかけられても激怒したりしないんだね。
後に一止も辰也に缶コーヒーをぶっかけられるが、お互いの友情と信頼あってのことでなかなか熱いのだ。
“この町に、誰もがいつでも診てもらえる病院を”
それが大狸先生と古狐先生の約束だった。
お話の中で妻の存在がとても大きい。
どんなに立派な志があっても、支えてくれる存在がなければ折れてしまうことはあるだろう。
一止にとっては世界一うまいコーヒーを入れてくれる細君・ハル、古狐先生を支えてきた愛妻・千代。
ハルと千代はとても気が合う。
大学時代には三角関係と噂された一止、辰也、そして後輩の如月千夏。
千夏は辰也と結婚し、2人は日本中から難病が紹介されてくるような東京の第一線の病院で働いて夏菜が生まれる。
千夏は1年の育休の後に現場復帰するが、医療の現場では1年前の知識は過去のもの。
過酷な労働環境の中、大きなプレッシャーを背負って現場に立っていた。
復帰してから主治医を続けていた白血病の子どもの化学治療中に体調を崩し、一日だけ仕事を休んだ……。
患者のために命がけで働くのが医者の務めじゃないか(187ページ)
翌日、病み上がりで出勤した千夏に子どもの両親はたった1日の休みを許さず罵倒した。
以来、千夏は自分の子どものこともほっておいて家に帰らなくなり、辰也が子育てに時間を割くようになる。
すると今度は辰也が病院から、育児の片手間に医者が務まるのかと責められるようになり、辰也は子どもを育てる為に田舎に帰ることにした。
実は私の中学の同級生も医者で手術中にぶっ倒れた。
命に別状はなかったが、彼女は現場復帰できなかった。
脳の関係でちょっと……。
まあ、日常会話、日常生活に大きな支障があるわけではなかったが、医者という仕事を続けることは到底無理だった。
数ヶ月後、彼女は亡くなり、様々な憶測が飛んだ。
辰也の血を吐くような言葉の繋がりを受けとめる一止。
「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ」
そのつぶやきが重い。
辰也にコーヒーをぶっかけた《病棟コーヒー事件》について次郎に聞かれた一止の言いように吹いた(((*≧艸≦)ププッ
どうも勘違いが多いようだから言っておくが、私が誤ってコーヒーをこぼしたら、偶然その下に辰也がいただけだ
お人好しの次郎はあっさり信用してしまう。
辰也もコーヒーをぶっかけられても激怒したりしないんだね。
後に一止も辰也に缶コーヒーをぶっかけられるが、お互いの友情と信頼あってのことでなかなか熱いのだ。
“この町に、誰もがいつでも診てもらえる病院を”
それが大狸先生と古狐先生の約束だった。
お話の中で妻の存在がとても大きい。
どんなに立派な志があっても、支えてくれる存在がなければ折れてしまうことはあるだろう。
一止にとっては世界一うまいコーヒーを入れてくれる細君・ハル、古狐先生を支えてきた愛妻・千代。
ハルと千代はとても気が合う。
大学時代には三角関係と噂された一止、辰也、そして後輩の如月千夏。
千夏は辰也と結婚し、2人は日本中から難病が紹介されてくるような東京の第一線の病院で働いて夏菜が生まれる。
千夏は1年の育休の後に現場復帰するが、医療の現場では1年前の知識は過去のもの。
過酷な労働環境の中、大きなプレッシャーを背負って現場に立っていた。
復帰してから主治医を続けていた白血病の子どもの化学治療中に体調を崩し、一日だけ仕事を休んだ……。
患者のために命がけで働くのが医者の務めじゃないか(187ページ)
翌日、病み上がりで出勤した千夏に子どもの両親はたった1日の休みを許さず罵倒した。
以来、千夏は自分の子どものこともほっておいて家に帰らなくなり、辰也が子育てに時間を割くようになる。
すると今度は辰也が病院から、育児の片手間に医者が務まるのかと責められるようになり、辰也は子どもを育てる為に田舎に帰ることにした。
実は私の中学の同級生も医者で手術中にぶっ倒れた。
命に別状はなかったが、彼女は現場復帰できなかった。
脳の関係でちょっと……。
まあ、日常会話、日常生活に大きな支障があるわけではなかったが、医者という仕事を続けることは到底無理だった。
数ヶ月後、彼女は亡くなり、様々な憶測が飛んだ。
辰也の血を吐くような言葉の繋がりを受けとめる一止。
「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ」
そのつぶやきが重い。
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『神様のカルテ3』あらすじ・感想
●あらすじ
【24時間365日対応】を掲げる信州の本庄病院から古狐先生こと内藤鴨一が去り、大狸先生はかつての教え子・小幡先生をスカウトしてくる。
明朗快活で知識も豊富だったが、小幡先生は患者を区別しているようで……。
看護師から事情を聞き、一止も真意を確かめようとするが、小幡先生には「偽善者タイプの医者」とののしられてしまう。
そんな中、一止が誤診をしたことが発覚。
小幡の言葉がのしかかり、一止は本庄病院から離れるべきだと考え始め……。
【24時間365日対応】を掲げる信州の本庄病院から古狐先生こと内藤鴨一が去り、大狸先生はかつての教え子・小幡先生をスカウトしてくる。
明朗快活で知識も豊富だったが、小幡先生は患者を区別しているようで……。
看護師から事情を聞き、一止も真意を確かめようとするが、小幡先生には「偽善者タイプの医者」とののしられてしまう。
そんな中、一止が誤診をしたことが発覚。
小幡の言葉がのしかかり、一止は本庄病院から離れるべきだと考え始め……。
●感想
小幡先生は、本庄病院のような寝る暇も無く患者が訪れる病院にいても、研究、論文に時間を費やす。
彼女は、医者に必要なのは最新の知識であり、無知は罪だと考えている。
だからどんなに忙しくても勉強熱心なのだが、一方でアル中患者やコンビニ受診の患者にはとても厳しい判断を下す。
言っても聞かないから最低限の治療をする。
一止は言っても聞かないアル中患者でも、最低限ではなく寄り添う治療をする。
2人の意見が合うわけがない。
一止は82歳の島内老人を膵癌と判断する。
島内老人の孫は、祖父に痛い思いをさせたくないし苦しませたくないとはじめは反対していたが、大学病院へ戻ることになった次郎がその手術を担当することになる。
長時間に渡る大手術は成功したかに思えたが、手術の病理結果から“癌”は認められなかった。
つまり、誤診である。
ステロイド治療で改善する患者の腹を切って手術してしまった……。
これを島内老人の孫・賢二が許せるはずがない。
この大問題を丸く収めたのは当の島内老人であったが、誤診は誤診だ。
一止は、小幡先生を批判していたが、新しい知識を入れることに余念がなかった小幡先生と自分との大きな差を痛感する。
小幡先生は、本庄病院のような寝る暇も無く患者が訪れる病院にいても、研究、論文に時間を費やす。
彼女は、医者に必要なのは最新の知識であり、無知は罪だと考えている。
だからどんなに忙しくても勉強熱心なのだが、一方でアル中患者やコンビニ受診の患者にはとても厳しい判断を下す。
言っても聞かないから最低限の治療をする。
一止は言っても聞かないアル中患者でも、最低限ではなく寄り添う治療をする。
2人の意見が合うわけがない。
一止は82歳の島内老人を膵癌と判断する。
島内老人の孫は、祖父に痛い思いをさせたくないし苦しませたくないとはじめは反対していたが、大学病院へ戻ることになった次郎がその手術を担当することになる。
長時間に渡る大手術は成功したかに思えたが、手術の病理結果から“癌”は認められなかった。
つまり、誤診である。
ステロイド治療で改善する患者の腹を切って手術してしまった……。
これを島内老人の孫・賢二が許せるはずがない。
この大問題を丸く収めたのは当の島内老人であったが、誤診は誤診だ。
一止は、小幡先生を批判していたが、新しい知識を入れることに余念がなかった小幡先生と自分との大きな差を痛感する。
患者に寄り添う為に『神様のカルテ』では、大学病院へ行くことを断った一止だが、自分の力不足を認めもっと広い知識を得る為に踏み出す決心をする。
気持ちだけでは無理なこともある。
☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…
ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)
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