
デビッド・ボウイの息子さんが、低予算で撮りあげたSFインディーズ・ムービー。『惑星ソラリス』や『2001年宇宙の旅』などの名作にオマージュをささげたようなシーンが多々みとめられ、監督自身相当のSFマニアである可能性が強い。うがった見方をすれば、非常に哲学的な前述2作について、凡人でも納得できるSF的なオチをつけたのが本作品といえるのかもしれない。
新資源掘削のため地球から派遣されてきた男サム・ベイルに扮したサム・ロックウェルによるほぼ一人舞台の映画だ。機器の故障で地球とのリアルタイム通信も途絶えており、話相手といえばニコちゃんマークがチーピーな印象のシステム管理ロボット、ガーヴィー(声:ケヴィン・スペイシー)だけ。
『2001年・・・』を見たことのある人なら、即このガーヴィーとHAL2000を重ねることだろう。しかし、人工知能を備えているという共通点を持ちながら、この2体性格はまるで正反対。人間に敵対しようとするHAL2000に対し、本作に登場するガーヴィーは人に優しいバリアフリー・ロボットとして描かれているところが面白い。
掘削会社との契約期間3年が終わろうとしている頃、地球に置いてきた美人妻の幻覚に悩まされるサムは、まさに『惑星ソラリス』のクリスそのまま。掘削中の事故に巻き込まれ基地内で意識を取り戻したサムが再び事故現場に戻ってみると、そこに弱りきって息もたえだえの自分とそっくりの人間を発見する・・・・・・
実は2人とも○○○○だったというオチ自体は映画中盤であかされてしまい、むしろその後に続くサッム・ロックウェルによる一人二役の芝居が見所となっている。生まれたばかりのように若々しいサムが、体のあちこちにガタがきて老いさらばえていくもう一人のサムに、次第に同情していくくだりが非常に丁寧に描かれているのだ。未来の自分とほんの一瞬しか対面しない『2001年・・・』のボーマン船長に比べるとかなり対照的である。
そういうわけで、このSF古典2作品をチェックしてから本作を見に行くとさらに深い味わいを得られると思うが、完成度という点では比較にはならないほど差があるだけに、鑑賞後がっかりさせられても当方では一切の責任を負いません。
月に囚われた男
監督 ダンカン・ジョーンズ(2010年)
〔オススメ度

〕
新資源掘削のため地球から派遣されてきた男サム・ベイルに扮したサム・ロックウェルによるほぼ一人舞台の映画だ。機器の故障で地球とのリアルタイム通信も途絶えており、話相手といえばニコちゃんマークがチーピーな印象のシステム管理ロボット、ガーヴィー(声:ケヴィン・スペイシー)だけ。
『2001年・・・』を見たことのある人なら、即このガーヴィーとHAL2000を重ねることだろう。しかし、人工知能を備えているという共通点を持ちながら、この2体性格はまるで正反対。人間に敵対しようとするHAL2000に対し、本作に登場するガーヴィーは人に優しいバリアフリー・ロボットとして描かれているところが面白い。
掘削会社との契約期間3年が終わろうとしている頃、地球に置いてきた美人妻の幻覚に悩まされるサムは、まさに『惑星ソラリス』のクリスそのまま。掘削中の事故に巻き込まれ基地内で意識を取り戻したサムが再び事故現場に戻ってみると、そこに弱りきって息もたえだえの自分とそっくりの人間を発見する・・・・・・
実は2人とも○○○○だったというオチ自体は映画中盤であかされてしまい、むしろその後に続くサッム・ロックウェルによる一人二役の芝居が見所となっている。生まれたばかりのように若々しいサムが、体のあちこちにガタがきて老いさらばえていくもう一人のサムに、次第に同情していくくだりが非常に丁寧に描かれているのだ。未来の自分とほんの一瞬しか対面しない『2001年・・・』のボーマン船長に比べるとかなり対照的である。
そういうわけで、このSF古典2作品をチェックしてから本作を見に行くとさらに深い味わいを得られると思うが、完成度という点では比較にはならないほど差があるだけに、鑑賞後がっかりさせられても当方では一切の責任を負いません。
月に囚われた男
監督 ダンカン・ジョーンズ(2010年)
〔オススメ度


