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ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

叫びとささやき

2007年12月10日 | 誰も逆らえない巨匠篇
リヴ・ウルマンをパートナーに迎えてからのベルイマン作品をどうも好きになれない。寓話的な映像の中に普遍的な奥深さをたたえていた初期の頃の作品に比べ、『仮面/ペルソナ』あたりから難解路線に大きく方向転換してしまっている。本心むき出しの身近な人間同士の醜いなじり合いを、<魂の相克>と言ってしまえば聞えはいいが、ある意味週刊誌レベルの下世話なネタを難解な表現によって高尚に見せている言っては語弊があるだろうか。

ベルイマンにとってはじめてのカラーとなった本作品において、巨匠は“赤”を重用して見せた。危篤のアグネス(ハリエッタ・アンデルセン)が病にふせる屋敷の壁色や、アグネスの腫れ上がったまぶたや姉カーリン(イングリット・チューリン)が自ら傷つけた性器から噴出す血の色、そして4人の女のクローズアップからのトランジットにいたるまで“赤”が使われている。巨匠ベルイマンはこの“赤”で「女の本心を描きたかった」と語っていたそうだ。母親の愛情の不均衡を起点とした、三姉妹と女中の嫉妬、憎悪、心の葛藤などがこの“赤”によって表現されているのだろうか。

愛する妹マリア(リヴ・ウルマン)には優しくささやきかけ、姉たちにはまるで叫ぶように厳しく接した母親(リブ・ウルマン一人二役)。誰かを愛すれば、他の誰かが必ず傷つく。死に際(死後)、姉と妹の両方に見捨てられたアグネスは聖母のような女中アンナに救いを求めた。叫びもささやきも沈黙に帰した世界でアグネスは心の平安を取り戻すことができたのだろうか。

監督 イングマール・ベルイマン(1973年)
〔オススメ度 

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