いろいろな公共団体から推薦をもらえそうなポリティカル・コレクトな内容ではあるが、この映画の中にはかつての名作に対するほほえましいオマージュがたくさん含まれている。『タイタニック』や『風と共にさりぬ』、『街の灯』『美女と野獣』などはそれと意識しなくともベタに登場してくるからすぐわかる。ろうあ劇団員集めに苦労するくだりは『七人の侍』。ペンギンとブタナリの愛のメールのやりとりは『ユー・ガッタ・メール』。公演における欠員代替シーンは『恋におちたシェクスピア』。元の作品との距離感がなんとも心地よく、とぼけたユーモアに自然と笑みが浮かんでくる作品だ。
そんな笑いの要素だけではなく、この作品はろう者と聴者の間に横たわるシリアスな溝にも言及しているまじめな映画でもあるのだ。家庭の主婦とろう劇団のヒロインを兼務する水越朝子役を実際のろう者である忍足亜希子が熱演している。朝子が劇団の練習中、娘の愛ちゃん(この子の演技がまたウマイ)が母の代わりに食事を作っている最中に指を怪我してしまう。この事件がきっかけで夫隆一(田中実)と朝子が大喧嘩するのだが、「聴者のあなたにろう者の私の気持ちなんてわからない」と声にならないウメキ声をあげる忍足の迫真の演技には、思わずドキッとさせられる重たいものが感じられる。
また、娘の愛ちゃんが得意の手話を駆使してろう者と聴者の通訳として大活躍しているシークエンスも見逃せない。母に聞かれてはマズイところは肉声のみで話し、劇団員の内輪もめも意訳(違訳?)で見事に解決。せりふを覚えていない役者には手話によるカンペでSOS。知っている人にか通じないとうまるで外国語のような手話の特性を生かしたうまい演出が光っていた。
監督 大澤 豊(1999年)
米内山明宏
〔オススメ度 〕
そんな笑いの要素だけではなく、この作品はろう者と聴者の間に横たわるシリアスな溝にも言及しているまじめな映画でもあるのだ。家庭の主婦とろう劇団のヒロインを兼務する水越朝子役を実際のろう者である忍足亜希子が熱演している。朝子が劇団の練習中、娘の愛ちゃん(この子の演技がまたウマイ)が母の代わりに食事を作っている最中に指を怪我してしまう。この事件がきっかけで夫隆一(田中実)と朝子が大喧嘩するのだが、「聴者のあなたにろう者の私の気持ちなんてわからない」と声にならないウメキ声をあげる忍足の迫真の演技には、思わずドキッとさせられる重たいものが感じられる。
また、娘の愛ちゃんが得意の手話を駆使してろう者と聴者の通訳として大活躍しているシークエンスも見逃せない。母に聞かれてはマズイところは肉声のみで話し、劇団員の内輪もめも意訳(違訳?)で見事に解決。せりふを覚えていない役者には手話によるカンペでSOS。知っている人にか通じないとうまるで外国語のような手話の特性を生かしたうまい演出が光っていた。
監督 大澤 豊(1999年)
米内山明宏
〔オススメ度 〕