ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

2024年06月05日 | なつかシネマ篇

本作の原作小説『夜明けのヴァンパイア』にパクリ疑惑があるのをご存知だろうか。萩尾“レジェンド”望都による少女漫画『ポーの一族』の人物設定や世界観にクリソツなのである。刊行時期がほぼ同一なため、どちらがどちらをパクったのかハッキリと白黒つけられないのだが、当時の日米情報格差から類推しても萩尾がパクったとはまず考えにくい。実母の心理的束縛からの解放を漫画の深層に埋め込んだと言われる『ポーの一族』に対する萩尾の思い入れは相当のものがあるらしく、それは漫画が“第9芸術”と呼ばれているフランスにも届いているらしい。

エドガー・アラン・ポーによるゴシック・ホラー小説にかなりの影響を受けている原作漫画の主人公エドガーとアランの同性愛や、エドガーの妹メリーベルとアランの幼児性愛的描写も、少女漫画界において当時としてはかなり斬新な試みであり、そんな人物相関や世界観もそっくりそのまま原作小説やその映画化作品に受け継がれていたりするのは、とても不思議な気にさせられるのである。原作小説家アン・ライスは、トム・クルーズとブラピのキャスティングには難色を示したそうなのだが、どうしてどうして、ブラピはともかくトム・クルーズがかなり役にはまっているのだ。

人間を殺すことに躊躇いを感じるヴァンパイア=ルイを演じているせいなのか、ブラピのなりきり感は今一つ。に対して相当体重を落として撮影に望んだと思われるトムが演じる、自信家のくせに寂しがりやのヴァンパイア=エドガーいなレスタトは、何の違和感も感じさせないほど一つに溶け合っているのだ。そしてもう一人、実母をペストで失い困りはてていたところを吸血鬼にされた少女メリーベルいなクローディア役のキルステン・ダンストが素晴らしい。後の躍進を予感させる小悪魔ぶりを遺憾なく発揮しているのである。

『ポーの一族』には萩尾の分身とおぼしきアーサーなる画家が登場するのだが、本作の中に原作者アン・ライスの分身を探すとするならば、やはりルイをインタビューするダニエル(クリスチャン・スレーター)がそれだろう。これは、アン・ライス御本人も気づいてないと思われるのだが、原作が“また聞き”小説であることを暗に暴露してしまっている自虐演出のように思われるのである。ルイに見逃してもらったダニエルだが、最後はレスタトにガブリとやられてしまう。「安心しろ、(ばらすのかばらさないかの)選択権はお前にある」結局原作者アン・ライスは沈黙を保ったまま2021年に亡くなってしまう....

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
監督 ニール・ジョーダン(1994年)
オススメ度[]


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