
雑誌ELLEの編集長であったジャン=ドミニク・ボビー(実在の人物)の原作を映画化。公私ともに人生の春を謳歌していた男が一転して奈落の底へ。意識はハッキリしているものの全身麻痺している身体のうち、可動な部位はなんと左眼だけという奇病=ロック・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)に突如としてかかってしまうのだ。映画はまったく身動きのとれないボビーの闘病生活を、時には皮肉な笑いたっぷりに、時には家族や父親の愛をからめ哀愁たっぷりに描いている。
当初はジョニー・デップで製作が進んでいた本作品の主人公を、マチュー・アマルリックが怪演している。ボビー役はベットや車椅子に縛りつけられたまま身動きがとれないために左眼だけで演技しなくてはならない。必然目のギョロっとした俳優がセレクトされたのだろう。徹底してボビーの目線で描かれる映像は、人物がフレームからはずれたり、焦点が定まらなかったりで、観客は不快感を覚えるのだが、同時にボビーの苦痛を共感できる仕組にもなっている。人間はこんな風にして弱っていくのかと、ふと感慨に浸ってしまう巧みな演出が印象的だ。
アルファベットを並べた文字盤を読み上げてもらいウィンクで指示を出すやり方で一冊の本(原作)を書き上げたボビー。その根性も見上げたものだが、それを手伝った美人療法士の皆さんたちにも頭が下がる。コミュニケーション能力を奪われるというのはかくも辛いことなのかが、しみじみとスクリーンから伝わってくるのだ。しかしそのおかげで、崩壊する氷河が再生するごとく、健康な時は気づくことさえなかった周囲の人間たちとの絆を再構築することに成功したのだろう。
※TSUTAYAの新作コーナーで本作品の横に『海を飛ぶ夢』や『みなさん、さようなら』、『トーク・トゥ・ハー』などが置かれていたが、何か違うなぁという感じがした。(別に寝たきりシリーズでまとめて置かなくても・・・)
監督 ジュリアン・シュペール(2007年)
〔オススメ度


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当初はジョニー・デップで製作が進んでいた本作品の主人公を、マチュー・アマルリックが怪演している。ボビー役はベットや車椅子に縛りつけられたまま身動きがとれないために左眼だけで演技しなくてはならない。必然目のギョロっとした俳優がセレクトされたのだろう。徹底してボビーの目線で描かれる映像は、人物がフレームからはずれたり、焦点が定まらなかったりで、観客は不快感を覚えるのだが、同時にボビーの苦痛を共感できる仕組にもなっている。人間はこんな風にして弱っていくのかと、ふと感慨に浸ってしまう巧みな演出が印象的だ。
アルファベットを並べた文字盤を読み上げてもらいウィンクで指示を出すやり方で一冊の本(原作)を書き上げたボビー。その根性も見上げたものだが、それを手伝った美人療法士の皆さんたちにも頭が下がる。コミュニケーション能力を奪われるというのはかくも辛いことなのかが、しみじみとスクリーンから伝わってくるのだ。しかしそのおかげで、崩壊する氷河が再生するごとく、健康な時は気づくことさえなかった周囲の人間たちとの絆を再構築することに成功したのだろう。
※TSUTAYAの新作コーナーで本作品の横に『海を飛ぶ夢』や『みなさん、さようなら』、『トーク・トゥ・ハー』などが置かれていたが、何か違うなぁという感じがした。(別に寝たきりシリーズでまとめて置かなくても・・・)
監督 ジュリアン・シュペール(2007年)
〔オススメ度



