むかし昔、神津島の「日向」のあたりに、ネコマタが住んでいました。
ネコマタは口が赤く裂け、尾っぽが二つある大きな山猫です。
多幸の港に魚が沢山あがるとネコマタがその臭いをかいで必ずやって来ます。
ある時、ネコマタに逢った漁師がいました。
人をかみ殺すほどの勢いで追い掛けてくるので、漁師は捕った魚を、
一匹づつ道に投げては走り、投げては走りして逃げましたが、とうとう一匹の
魚もなくなりました。
こうして秩父山の地蔵様の前まで逃げてくると、地蔵様の目が光り、
ネコマタは怖がってそれ以上は追いかけては来ませんでした。
多幸の砂浜にネコマタの足跡がついているのを見た人は、夕方にならないうちに
峠を越えなければなりませんでした。ネコマタは魚を好んで食べたり、ばけたり、
とりついたりするので多幸の魚がとれた時は気をつけろといわれていました。
この昔話は、多幸キャンプ場の立て看板に記載されています