なんだか急に秋めいてきましたね。
日差しは強いですが、空気が乾燥してひんやりし、なんだか避暑地に来たような気分です。
体が楽ですねぇ。
待ち望んだ季節の到来なのに、どこか気分が晴れません。
わがために くる秋にしも あらなくに 虫のねきけば まづぞかなしき
古今和歌集に所収の詠み人しらずの和歌です。
自分のために秋が来るわけでもないのに、虫の声を聞くと、真っ先に悲しくなる、というほどの意かと思います。
読書の秋、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋と、秋は様々な活動に適した過ごしやすい季節です。
にも関わらず、秋の気配を感じただけで、なんとなく、悲しくなるというのは不思議ですね。
メランコリーの秋、というものが、確かに在るようです。
おほかたの 秋くるからに 我身こそ かなしきものと 思ひしりぬれ
ひととおり秋が来るとすぐ、わが身をば、哀しい者と思い知った、というほどの意で、女性の目線で詠まれた和歌と思われます。
なんとなく、男女のことが原因のように感じられて、純粋な悲しみとは違うようです。
こちらも古今和歌集の詠み人知らずです。
秋の夜の あくるもしらず なくむしは わがごとものや かなしかるらむ
古今和歌集、敏行朝臣の歌です。
秋の夜の明けるも知らず鳴く虫は、わが如く、もの哀しいのだろうか、と、こちらも秋をメランコリックに詠んでいます。
「源氏物語絵巻 鈴虫の一」です。女三宮の庭に源氏が鈴虫を放した場面です。時期は十五夜。ちょうど秋の初めから半ば頃です。
私は秋というと、限りなく落ちて行った平成17年を思い出します。
初めてうつ病で病気休暇を取り、独り家にあって、限りなく、奈落の底に落ちていくような思いを味わいました。
もう7年になりますか。
自殺への誘惑に耐えながらその年の秋、冬を命長らえ、さらに馬齢を重ねて、今、薬の力を借りながら平安な気持ちで日々を過ごしています。
今思えば、秋のメランコリーなんて、健康で金銭的の余裕のある人の贅沢なんだなぁと実感します。
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高田 祐彦 | |
角川学芸出版 |
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