ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

わがために くる秋にしも あらなくに

2011年09月07日 | 文学

 なんだか急に秋めいてきましたね。
 日差しは強いですが、空気が乾燥してひんやりし、なんだか避暑地に来たような気分です。
 体が楽ですねぇ。
 待ち望んだ季節の到来なのに、どこか気分が晴れません。
 

  わがために くる秋にしも あらなくに 虫のねきけば まづぞかなしき

 古今和歌集
に所収の詠み人しらずの和歌です。

 自分のために秋が来るわけでもないのに、虫の声を聞くと、真っ先に悲しくなる、というほどの意かと思います。

 読書の秋、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋と、秋は様々な活動に適した過ごしやすい季節です。
 にも関わらず、秋の気配を感じただけで、なんとなく、悲しくなるというのは不思議ですね。
 メランコリーの秋、というものが、確かに在るようです。

  おほかたの 秋くるからに 我身こそ かなしきものと 思ひしりぬれ

 ひととおり秋が来るとすぐ、わが身をば、哀しい者と思い知った、というほどの意で、女性の目線で詠まれた和歌と思われます。
 なんとなく、男女のことが原因のように感じられて、純粋な悲しみとは違うようです。

   こちらも古今和歌集詠み人知らずです。

  
秋の夜の あくるもしらず なくむしは わがごとものや かなしかるらむ

  古今和歌集敏行朝臣の歌です。
  
 秋の夜の明けるも知らず鳴く虫は、わが如く、もの哀しいのだろうか
、と、こちらも秋をメランコリックに詠んでいます。


 「源氏物語絵巻 鈴虫の一」です。女三宮の庭に源氏が鈴虫を放した場面です。時期は十五夜。ちょうど秋の初めから半ば頃です。

 私は秋というと、限りなく落ちて行った平成17年を思い出します。
 初めてうつ病で病気休暇を取り、独り家にあって、限りなく、奈落の底に落ちていくような思いを味わいました。

 もう7年になりますか。

 自殺への誘惑に耐えながらその年の秋、冬を命長らえ、さらに馬齢を重ねて、今、薬の力を借りながら平安な気持ちで日々を過ごしています。

 今思えば、秋のメランコリーなんて、健康で金銭的の余裕のある人の贅沢なんだなぁと実感します。

新版 古今和歌集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
高田 祐彦
角川学芸出版

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