I~これが私~

風の吹くまま,気の向くまま,ありのままの自分で。

ハッピー・メリークリスマス!7

2010-12-24 22:42:58 | 小説『ミゼットな楽園』
ハッピー・メリークリスマス!

7.絆の玉

「このガラス玉はね。私とソフィアの絆なの。」
ゆっくりと話し始めた校長先生は、まるで時間を感じ取っているようだった。
「ソフィアはここに来て、1年だけ過ごしたのよ。薔薇の力で書いた扉が、ここに繋がったんですって。」
そして、天使の羽を手作りして変装していた。
その言葉を聞くと、イスフィールはちょっとだけ笑った。
自分よりもお転婆な少女だったなんて。
「でも、ある日バレちゃったの。」
はじかれたように、イスフィールは顔を上げた。
天使の学校に、例外で人間がいるなんて、誰も納得しないだろう。
今は悪魔がいるけれど、人間は恐ろしいと思われている。
その恐ろしさは、どうやっても表現しきれないと語る者もいるそうだ。
「そしたらソフィアはね、あと少しだけいさせてくださいって頼んだのよ。勝手にいたことは謝るけどって。」
そう言って、校長先生は玉を見つめた。
それで、ちょうど1年たったの、と付け足した。
「その後、ソフィアは楽園に帰された。どんなに頼んでも認めてもらえなかったのよ。そして最後の日、それを作ったの。2人の思い出を重ねて、2人が通じるようにって。絆の玉を作ったの。それが…私のこれと、あなたが持ってる玉よ。…ちょっと貸してくれる?」
イスフィールは言われるままに玉を渡した。
校長先生は自分のそれと合わせる。
コツン、と音がして、光がほとばしった。
眩しくて、その場にいた9人は目をそむけた。
『ソフィア!いいの?そんなすぐに出て行っちゃって。』
『別に。もとは私のせいだし。ディースが心配することないわよ。』
『じゃあ…忘れないでよ!あと、昨日渡した玉、大切にしてね!二度と作れないんだから。』
『分かってるわよ。じゃーね!』
光が消えた。
イスフィール達は目を開ける。
「今のって…」
「私とソフィアの最後の日よ。」
校長先生は微笑して言った。
「校長先生って、さっきのディースさん?」
フラットがチカチカする目をこすりながら聞いた。
校長先生は頷いた。とても優しく。
「ねえ。イスフィールって言ったわよね。」
校長先生は昔のような声で、ソフィアに言うように言った。
「この学校、探検してみる?」
パーティーが始まるまで―――あと、30分。
刻限は6時30分だ。
イスフィールは大きく頷いた。


written by ふーちん


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