I~これが私~

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ハッピー・メリークリスマス!8

2010-12-25 23:47:42 | 小説『ミゼットな楽園』
ハッピー・メリークリスマス!

8.私達の絆

「あの玉なら、母様が大切にしてたのも分かるなぁ…。」
校長先生に許可をもらったフラット達9人。
楽園の人も合わせると、結構な人数になる。
その9人で学園内を散歩していた時に、イスフィールがつぶやいた。
「母様も私と同じように薔薇だったから。たった1人の友達との絆は、何かと比べられないくらい嬉しかったんだ。」
誰かに向かって話してる訳じゃない。
でも、1つ1つの言葉がゆっくりと胸にしみこんだ。
「だったらさ。イスフィールも絆がほしいの?遠くにいても、ずっと友達でいられるって約束。」
ふいにフラットは聞いていた。
ソフィアと同じ使命を持っているなら、同じような物が嬉しいんじゃないかと。
「…嬉しいわ。」
イスフィールは赤く染まった空を見上げながら答える。
その様子を見て、フラット達は顔を見合わせた。
せっかく出会ったのだし、私達にも作れるんじゃないだろうか。
その考えは、すぐに確信へと変わった。
「なら、作ってみようよ!」
「え?」
フラット達が声をそろえて言うと、驚いたようにイスフィールが振り返った。
群青色の瞳が見開かれている。
「楽園の薔薇とラブールの悪魔でも、出来るんじゃない?」
「…出来るの?」
おそるおそるといった感じでイスフィールが確認した。
「やってみないと分からないって!さぁー手を合わせて~!」
知識ありまくりのレストは、作り方を知っているそうだ。
手を合わせて気持ちを1つに。
ちょっとだけに思い出を重ねて。
なんか楽しくなって、顔を見合わせて笑った。
お互いに初めて見る笑顔で。より一層、絆が深くなったと分かった。
その瞬間。

『いったぁ~。今日は不幸だ…。』
『俺、2人の下敷きなんだけど。』
『はふーっ。ここどこ?』
『ザ、ザイル・レミーラ!』
『え…!?人間っ!!』

聞き覚えのある声がどこからか聞こえた。
「これ、最初ん時の…!」
「私達が最初にあった時の記憶…」
柔らかな光が9人を包んだ。
それから、今まで話したことが聞こえて。
やがて、カチン、と鍵をかけるかのような音がして、光が消えた。
手を合わせていたところには、藍色の玉が2つ、ちょこんと仲良く置いてあった。
「これ…。」
「出来たんだ…。私達にも。」
「私達の絆の玉なんだ、これが。」
イスフィールとフラットで、1つずつ手に取った。
動くたびに日光が反射して、キラキラ光る。
イスフィールがそれを大事そうにしまった時。
パーティー始まりの合図が響き渡った。


written by ふーちん


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