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こうやってグラスに飲み物を移してから飲む。
たとえばそういうことなのかなぁと、ふと思う。
不思議なもので、そうやって飲むと、いつもより美味しく感じた。
成分的に何かが向上しているわけはなく、
むしろ氷は水道水から作っているから、劣化しているかもしれない。
気分。
そう、きっとこれは気分の問題。
目に見えないもの。形にしづらいもの。
そういうものが、でも僕らの生活を彩っているのだろう。
以前付き合っていた女性が、初めて作ってくれた料理。
出汁の入っていないみそ汁だった。
煮干しも、かつお節も、出汁の素も、たまたま切れていたんだよな。
何とも頼りげのない味だったけれど、とても美味しかった。
高カロリー、高栄養素の点滴を打ち続けていても、
口でものを食べられなくなると、人はたちどころに弱ってしまう。
そんな話を聞いたことがある。
食べるって行為には、どうやらそんなに単純なものではないらしい。
歌を唄う。
髪を切る。
気に入った服を着る。
お化粧をする。
ひげを剃る。
それをしなくても、人は生きていけるのかもしれない。
でも、それのない人生を僕らは目指しているわけじゃない。
安いグラスでも、水道水を凍らせた氷でも、
そこに注ぐ飲み物が安いサイダーであっても、
グラスの中の液体には、
ちょっぴり冷えたサイダー以外の何かが溶けている。
ささやかなご馳走で、誰かと乾杯したい気分。
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