今になってあの時の決断は間違いだったのかもしれないって思うのよと友人がため息をついた。
彼女は韓国で日本人である夫と恋に落ちて結婚した。
しばらく韓国で暮らしていたので長女は韓国語が話せる。
でも日本生まれの次女にはあえて韓国語を教えなかった。
「だけどね、先日テレビのドキュメントをみたのよ」と言う。
インタビューに答えていたのは日本生まれの中国の女性だったの。
お母さんが高齢になってアルツハイマーを発症してね。
介護をしているのだけどある日を境に中国語しか話さなくなったの。
ねえ、私が惚けて韓国語しか話さなくなったらもう次女とは会話ができないのよ。
惚けたけない努力はするわよ。
だけど不安なの。
あの子に韓国語を教えなかったことは間違ってたのかしら。
私には答えられなかった。
惚けの問題は私にだって無縁ではない。
母の介護もした。
苛立ちもしたし周りとの軋轢もあった。
でも確かに言葉の問題はなかった。
惚ければきっと若かりし日の言語に立ち返る確率は高そうだ。
ボケないで生きようね、ファイトだ、私たちと慰めるしかなにもできない。